2014年04月02日

空の風 草の海  「蒼の乱」

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俳優祭が3月27日に、という情報をキャッチした時、「ひらめきその日は『蒼の乱』初日!俳優祭+新感線のマチソワなんて素敵じゃない」と張り切ってVAC先行申し込んだのはよいけれど、発券したら26列。後ろから3列目じゃん!とかなり凹む。
会場に入ると後ろ2列はPA席になっていて実質最後列。
が、オーブの客席はかなり勾配がついている上にどセンターだったので見通しがよく、堀尾さんの大がかりな装置も、原田保さんの相変わらず綺麗な照明も、役者さんたちの出入り含めて、最初だからこうやって舞台全体が俯瞰できてかえってよかったかも。
新感線の舞台って、一度は引きで観たいってところ、あるよねー。

劇団☆新感線 2014年春興行 いのうえ歌舞伎 「蒼の乱」
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
美術: 堀尾幸男   照明: 原田保  衣裳: 小峰リリー 
音楽: 岡崎司   作詞: 森雪之丞、いのうえひでのり
出演: 天海祐希  松山ケンイチ  早乙女太一  梶原善  森奈みはる  橋本じゅん  
高田聖子  粟根まこと  平幹二朗 ほか

2014年3月27日(木) 6:00pm  東急シアターオーブ 1階26列センター


ストーリー: 平安時代の平将門の乱に材を採った戦乱物語。
都で贅沢三昧に暮らす貴族たちに対して重税にあえぐ地方の民衆と豪族。都に出ていた将門小次郎(松山ケンイチ)は左大臣の屋敷で助けた渡来の女・蒼真(天海祐希)と桔梗(高田聖子)を伴って故郷の坂東に帰ります。
小次郎は天下無双の侍で、「将門新皇」として朝廷に反旗を翻しますが、バカがつくほど純真で、蝦夷の大王・常世王(平幹二朗)や朝廷に仕える公家・弾正淑人(梶原善)など、敵味方入り乱れえて利用されてしまうことに・・。自分を見失い失踪してしまった小次郎に代わり、妻である蒼真が「将門御前」と名乗って反乱軍を率いて立ちます・・・。


上演時間3時間50分と聞いた時には「えっ目」と思いましたが、長さは全く感じませんでした。
前半は純真で野放図な将門小次郎が中心、中盤以降はその妻である将門御前こと蒼真が全面に出てくる構成。物語が大きく動く二幕がやはり見応えありますが、スケール感もスピードも緩急もある作品で、シアターオーブという大バコに負けていないという印象です。

少し昔の新感線を思わせるシンプルな構成。
映像はほとんど使われず、照明と装置や布や回り舞台で工夫され、笑いもあるけどとってつけたようなしつこいものではなくて好感。「蝦夷」という言葉にアテルイを思って切なくなったり。
裏切りや正体明かしはあっても想定の範囲内。こういうふうに動くのだろうなという予想通りに物語は進みます。ここ数年の作品の中では客演は比較的寂しめ、その分主要な役で劇団員の活躍も目立ちます。
ただ、観終わった後、すごくスカッとする、とか、悲劇に滂沱の涙を流す、というタイプの作品ではないかな。

初日でしたのでサクッと印象に残ったことをリストアップすると、・天海祐希さん舞台復帰おめでとー♪
・松ケン 単純バカ でも清々しい
・早乙女兄弟の殺陣が目にも止まらぬ速さ
・じゅんさん!!
・平幹二役
・何気に劇団員活躍
・農民の場面 エリザの♪ミルク だよね?
・で、結局どーなの?善さん!


物語の起承転結が小次郎の心変わり、というかいろんな思惑に巻き込まれて立ち位置を変えていくことで展開。
最後にすべて気づいた松ケン小次郎が、「俺はバカだっ!大馬鹿だっ!!」と叫んだ時には、「アンタ、ほんとバカだよ」と思いましたが、青空と緑の草と風が吹く坂東でのびやかに育った将門小次郎は純真で腹に一物なんてない感満載で、どこか憎めず清々しい印象。
「馬と話せる」小次郎が、その愛馬・黒馬鬼の言葉がわからなくなってしまうというところがポイントにもなっていますが、そのことに自分で気づかない小次郎が哀しい。そして、その善悪のジャッジを握っているように見えるこの黒馬鬼がね・・・(以下自粛)。

戦乱を治めるため、民を守るため、そして愛する蒼真を守るため、自分の首を差し出す覚悟を決め、弾正に約束させた上で、晴れやかな表情でパッと刀を捨てて両手を挙げる松ケン小次郎、カッコよかったです。
この終盤は、首塚伝説を持ち、今も関東守護神と祀られる平将門の激しくも哀しい運命とちゃんとシンクロしていて、中島かずきさん、お見事な収束ぶりです。

とはいうものの、この作品は「薔薇とサムライ」同様、天海祐希さんありきの舞台。
登場した時のオーラと客席の拍手がそれを物語っていました。
初日の出で拍手あったのは、天海さんとじゅんさんの二人だけ。
前半の「爪を隠した」時より、将門御前として甲冑に身を包んで立つあたりからシビれるカッコよさですが、あの「お前が立て」と純友に言われて最初は拒絶していたの決心するまでがアッサリしていて少し拍子抜けだったかなぁ。
あそこはもっと逡巡して、タメて、我慢を重ねて限界!というカタルシスが欲しいところ。
脚本的に蒼真の心象はどれもあっさり目かな?将門の妻になるところ、将門の代わりに立つところ、死を覚悟した将門に嫌だと抵抗するところ・・。

それから、今回殺陣はほとんどなくて、あってもびっくりするくらいスローで驚いたのですが(弓使いという設定のようですし)、天海さんといえばどうしても昨年の舞台降板が胸をよぎって、「大丈夫かな?」と思ってしまうのは、やる側にとっても観る私たちにとっても、そして何より一つの舞台作品として不幸なことだと感じました。

ラスト。
八百屋になった床一面に布を広げ照明をあてて緑の草原、ホリゾントにも大きな布を垂らして青い空。どちらもに風を送り、その風ではためく中、空と草原の真ん中にスックと立つ蒼真。
神々しいばかりの美しさでしたぴかぴか(新しい)


大阪含めて多分あと3回観る予定(笑)なので、他のキャストやストーリーについてはまた改めたいと思いますが、悪、というか、敵対する側にあと一枚欲しいところ。
平幹二朗さんの大物感も、ひとクセもふたクセもある梶原善さんもすばらしいですが、「天海・松ケン・太一・じゅん・高田」連合軍に対抗するにはやはり些かバランスの悪さを感じます。
ここに古田新太がいたら、と思わないではいられませんでした。

新感線公演出演3回目でめでたく準劇団員となられた(笑)早乙女太一くんに加えて、今回は弟の友貴くんもご出演というのは知っていたのですが、事前にあらすじとか役柄をチェックしたりしない主義の私は、二人がどんな役なのか、敵なのか味方同士なのかも知りませんでした。
早乙女太一くんのあの殺陣に互角に対抗できるのは今、友貴くんだけだと思っていますので、開演前に「二人が敵対する役で殺陣があるといいな」と話していたのですが、その通りというか、期待以上で、ほんっと、眼福揺れるハート
太一 vs 友貴、太一 vs 川原正嗣 の殺陣シーンだけで通えるレベルです。
友貴くん太刀影が太一くん夜叉丸を背中から斬った時には思わず「チッ」と舌打ちしてしまいました(笑)。卑怯なことするな、正々堂々とやり合え!と。
そのあたりは語ると長くなるのでまた次回以降に。

太一くんはクライマックスの引っ込みというか、常世王が殺された混乱の中、舞台中央で赤いライトをあびて叫んで、というシーンで拍手起こっていました。もちろん私も盛大に拍手しましたよ。


IMG_4400.jpg俳優祭終演後、歌舞伎座から直行したので、ヒカリエ11階の THE THEATRE TEABLE で軽く食事。
6:00までなら、と奥のゆったりしたソファ席に案内してくれて、なかなかグッドなお心遣い。
「これから観劇のお客様でしたら、よろしければこちらも」と出してくれたメニューがこちら。今回の舞台にちなんだオリジナルドリンク。
蒼真をイメージした「空の風」と小次郎をイメージした「草の海」。
アルコールの「草の海」に興味シンシンだったのですがすでに、俳優祭でシャンパン2杯飲んでたし、観劇前だったので自粛して「空の風」の方をいただきました。さっぱりしていておいしかったです。



IMG_1431.jpg舞台であのラストシーン観た時、「これかひらめき」と思いました。




大阪までガマンしきれずパンフレット買っちゃった。重いってば! のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (totl 1157 わーい(嬉しい顔) vs 1162 ふらふら)
posted by スキップ at 23:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スキップさま、こんばんは。
初日にご覧になったのですね!
俳優祭→蒼の乱って、気力体力使いそうで凄いです。

「蒼の乱」、長時間を感じさせなかったですね。
シアターオーブという大きな劇場を、上手く使った魅せる芝居でした。
ラストの蒼真、本当に美しかったです。

オリジナルドリンク、11階でも飲めたのですね。
休憩中に飲みたいな~と思ったのですが、2幕の長さを考えて自重しました。
今度飲んでみようかな…。

再観劇の感想も楽しみにしています!
Posted by 花梨 at 2014年04月05日 00:51
♪花梨さま

そうなのです。我ながらハード。
気力も体力も使いましたが、間に少し時間がありましたので、
のんびりオリジナルドリンクも飲めましたし(笑)。

本当に長さを感じさせない作品で、久しぶりに「新感線を観た」
「いのうえ歌舞伎を観た」という感覚でした。
まだ幕が開いたばかりですし、これからの進化も楽しみですね。

私は次は東京千秋楽に観る予定ですが、花梨さんは今回は
大阪へはいらっしゃらないのですか?
Posted by スキップ at 2014年04月05日 08:42
スキップさん♪
コメント連投しつれいします(^_^;)。
この公演については先日、すでに直接お話ししちゃってますが(笑)
太一君と友貴君の殺陣は本当にお見事でした。
新春特別公演でもお二人の殺陣は際立っていましたが
あちらが体力と本能のぶつかり合い・・という感じだったのに対して
今回は計算し尽された殺陣、という洗練さも感じられ
殺陣師のセンスと、それを完璧にこなすお二人に
座布団3枚!という感じでした。

姐さんについて話し出すと長くなるので(笑)
止めておきますが、登場したシーンでは思わず
息をのんでしまいました!
Posted by みんみん at 2014年04月08日 02:27
♪みんみんさま

いえいえ、コメントいただくのはとてもうれしいのですが、
相変わらず遅くまで起きていらっしゃいますわね(笑)。

先日お互いの疑問点も検証し合いましたし、次回千秋楽では
それがいかに回収されているか、進化に期待したいと思います。

早乙女太一くんの殺陣は稽古場でも見学者続出と「蒼の乱」の
ブログにも書いてあって、誇らしい気持ちですが、
願わくば、新感線以外の作品でももっと太一くんのすばらしさが
引き出せたらなぁと思います。

天海さんの美しさは言わずもがなですが、私の遠い席からは
そこまで感じられず(涙)。
次に期待というところでしょうか。
Posted by スキップ at 2014年04月08日 23:54
スキップさん、こんばんは!
本当に鮮やかな色合いの印象的な舞台でしたね。
私は2階席からの1回きりの観劇だったのですが、
2階席からでも表情がしっかり見える役者さん(笑)方のおかげで、
舞台全体を楽しむことができました。
太一くんvs川原さんの殺陣は、本当に息をのんで見つめてしまいました。
確かにこれを見るためだけでも通えちゃいそうです(笑)。
スキップさんの「次回以降に」、楽しみに待っておりますねv
Posted by 恭穂 at 2014年04月19日 00:00
♪恭穂さま

ご覧になったのですね。
舞台の色も、役者さんの色も、彩り豊かでしたね。
あの芝居の大きさだと、2階席からでも楽しめるだろうなと思います。

太一くんはね~・・・語ると長くなるので自粛。
川原さんは太一くんの殺陣をよくわかってくださって殺陣をつけて
くださるので、本当に綺麗だし、その二人の対決はやはり迫力が
違いますよね。
あ、こんなこと書いていたら早く次、観たくなってきました(笑)。
Posted by スキップ at 2014年04月19日 00:29
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