2014年03月22日

この世に生れし命の浮き世 「ちゃんちき」

chanchiki.jpgオペラなんて年に1回観るか観ないかというくらいの私が「これ、観てみたい」と思ったのは一にも二にも兵芸から送られてきたこのフライヤーが楽しそうだったから。
そして「演出 茂山千三郎」の文字。
あぁ、この衣装、狂言なんだひらめき

日本オペラプロジェクト2013 「ちゃんちき」
作曲: 團伊玖磨
指揮: 船曳圭一郎 
演出: 茂山千三郎
総合プロデューサー: 日下部吉彦
管弦楽: ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
合唱: 堺シティオペラ記念合唱団 
出演: 西尾岳史/狐のおとっさま  東野亜弥子/狐のぼう  水野智絵/おとっさまが化けた美人  片桐直樹/獺のかわ兵衛  橋爪万里子/獺のおかわ  鈴木実/口開(山神)

2014年3月16日(日) 2:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 
1階E列(1列目)センター


手にしたチケットはE列だったのですが、会場に入ると前4列つぶしてオーケストラボックスになっていたので最前列。
すでにスタンバイされていたオケピをのそいてみると、ブラックタイの管弦楽団にまじって、紋付袴や黒留袖の三味線・鼓・笛・和太鼓といった人たちの姿が。うわっ、楽しそ~と、これ見ただけでテンショングッド(上向き矢印)

舞台はかなり八百屋になっていて、真ん中に茅葺の屋根のようなものがついた穴がひとつ。全体的にはチャコールグレーで特に装飾もなくシンプルな舞台装置。
そこに現れる口開)。

これはこの山を守る 山神なり
むかし むかし 奥美濃のある山に 狐の親子が住んでおりました・・・


と始まる雰囲気は狂言というより能の幽玄な雰囲気そのものでした。
音のない世界に一人、また一人と静かに登場する森の精のような子どもたち。
オーディションで選ばれた一般のこどもたちだそうですが、ちゃんと摺り足で、両手は太ももの位置にきちんとそえて、狂言の所作もしっかり。物語りは民話「きつねとかわうそ」を題材にしたもの。
いつまでも親離れできず大きくなっても自分では食べ物を獲ることもできない狐のぼうに、自然の世界に生きる弱肉強食の厳しさを教えようとするおとっさま。
美女に化けてまんまとカワウソ夫婦にご馳走をふるまってもらったものの、やがてその正体を見抜いたかわ兵衛の言葉に嵌り、おとっさま狐は魚を獲ろうと冬の冷たい氷の池にしっぽ垂らして待つうちに・・・。

狐のお話ではあるけれど、親子の対立とか断絶とか世代交代とか、親が子を思う気持ちとか、それを取り巻く社会の問題とか、まるで現代社会の写し鏡のような物語。
しっぽがもげてしまって、もう化けることもできず、動くことさえままならぬおとっさまに、「今度は僕が食べ物を獲って来るし、住む穴も穴熊を騙して奪って来るから待っとって」と明るく前を見て進み出すぼう。
一人残り、最期までぼうを案じてやがて意識をなくしていくおとっさまの上にとどまることなく降りしきる雪。

この世に生れし 命の浮き世
浮き世とは 一木葉にうち乗りて
世を 流れ彷徨い行く 危き一葉船
渡る浮き世に 冬が来る


厳しさと切なさと、静謐なまでの美しさにあふれたエンディングでした。


舞台が奥美濃ということで、台詞(というかオペラなので全部歌だけど)はすべて三河弁。厳密には名古屋と岐阜の境目くらいの言葉ということらしいですが。
おとっさまが「早く一人前に・・」とぼうに言うのに「一人みゃ~に」と歌ったのには吹きだしそうになりましたが、周り誰も笑わないしあせあせ(飛び散る汗)
オペラの歌手の人のことはよくわからないのですが、「待っとるで」とか「~だら」とかといった言葉を歌い上げるのに違和感なくて、いや~皆さんスバラシイ。
特に狐のおとっさまの西尾岳史さんの朗々と響くバリトンと、ポーカーフェイス(?)なのにいろんな感情が伝わってくる歌唱が印象的でした。

和洋融合の演奏も期待通り、とても楽しく聴き応えありました。
一幕終わりの総踊りの場面の、管楽器フル演奏に三味線、鼓打ち鳴らしてちゃんちき♪の場面はほんとに楽しくて気持ちアガリました。


この作品、「夕鶴」と並ぶ團伊玖磨さんの代表作だなんてちっとも知りませんでした のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1150 わーい(嬉しい顔)vs 1157 ふらふら)
posted by スキップ at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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