2014年03月13日

升毅に惚れ直し 「一郎ちゃんがいく。」

ichiro.jpgラスト。
部屋着の浴衣姿で階段の上にスックと立ちナナメに構えて、「わしを誰や思てんのんじゃ」「わしが浅井一郎じゃいっ!」と渾身のキメ台詞を放つ浅井一郎こと升毅。
カーーーッコイイ~揺れるハート
シビれるカッコよさです。
そうだよ、升さん。こんな升さんが観たかったのよ。

近鉄アート館 復活 オープニングシリーズ
「一郎ちゃんがいく。」
脚本・演出: わかぎゑふ  
出演: 升毅  三浦理恵子  近江谷太朗  粟根まこと(東京公演のみ)  土屋裕一  平野良  岩崎大  谷山知宏  升ノゾミ  加治将樹  広瀬諒人  月岡弘一  牧野舞  小川信太郎(大阪公演のみ)

2014年3月9日(日) 1:00pm 近鉄アート館 C3列


1989年に初演され、1998年に現在の明治バージョンとなって、今回が5回目の上演。
元々は、「役者にしか出来へんことしようや」という升毅さんの発言に「結局、台詞を覚えて、さも本当のことのように見せるのが役者の仕事ちゃう?」という結論に至ってわかぎゑふさんが書き上げた脚本で、最初に台本見た時、升さんが「これ・・覚えるの?」と言い、わかぎさんは「あんたが書けって言うたんやんか!」とツッコミを入れたのだとか。
これまで演出を担当してきたG2さんがスケジュールの都合で入れず、今回はわかぎゑふさんが演出も担当。

ストーリー: 明治末期。華族議員の大蔵建造男爵(近江谷太朗)はイギリス・オックスフォード大学に大留学団の派遣を計画し、そのリーダーとして日本一頭の良い男を武道館で行う公開試験で選ぶことにします。候補として招集されたのは、自らを天才と呼び、勝利に異常なまでの執念を燃やすオタク大学生の白河稀人(小川信太郎)、華族の家柄にこだわり、プライド高い歴史学者の堤洋一郎男爵(平野良)、そして、帝大を半年で卒業した伝説の天才・浅井一郎子爵(升毅)。そこに名乗りを挙げた、天皇の隠し子と噂される、皇位継承権第12位の高瀬宮(土屋裕一)。4人の知力をつくしたバトルを中心に、一郎の妻で華族のお嬢様・華子(三浦理恵子)と息子新吉(升ノゾミ)。公開試験を取材する新聞記者・木原雄吉(岩崎大)、彼を憎からず思う大蔵男爵の娘・莉奈(牧野舞)といった人々が周りを彩って繰り広げられる物語。

怒涛のように博学ぶりを発揮し、喋りまくる天才一郎ちゃん。その知識を自ら金儲けに利用して儲けまくる一郎ちゃん。息子とコミュニケーションをとってはしゃぎまくる一郎ちゃん、女房にヨワイので言い訳しまくる一郎ちゃん。(プログラムより)
わかぎさんが升毅さんにあて書きしたというこの一郎ちゃんが実に魅力的。公の場ではモーニングに身を包み、隙なくピシリとカッコイイ浅井一郎が、家に帰った途端、「こんな窮屈なもん、大嫌いや」と洋服も靴も脱ぎ捨て、着物でお茶漬けを食べ、美しい華子さんを「おかあちゃん」と呼んで関西弁でまくしたてるギャップにまずヤラレます。
あんなにオトコマエでカッコいい天才なのにお金儲けが何よりも好きで、男気があって妻の華子さんにベタ惚れで、「落ちる」とか「滑る」とい忌み語に果てしないヨワイという弱点を持つ一郎ちゃんを、升さんがとても活き活きと演じていて、まさにあて書きここに極めれりという感じ。

昔、大好きでよく見ていた深夜番組「現代用語の基礎体力」に出演していた古田新太、生瀬勝久(その頃は槍魔栗三助)、そして升毅の3人の中で、一番年長なのに今も変わらず一番カッコいいのは升さんに違いない。そのことを改めて思い出させてくれる熱演でした。

4人の試験で堤男爵がわざと負けて、3人になってからの問答バトルは迫力ある台詞の応酬に息が詰まりそうでした。
この場面、台詞を言う役者さんは本当に大変だったと思いますが、わかぎゑふさんの博識ぶりが冴え渡っています。ほとんど何言ってるのかわからないマニアックな質問ばかりでしたが、「月も朧に白魚の・・」が出て来た時には「三人吉三!と心の中で手を挙げました(笑)。

「それは人前では言えません」というヒンズー語の問題(たぶん下ネタ?)で白河稀人を負かし、残った一郎と高瀬宮の高度なバトルを、その内容の高度さがわかる白河に解説させるという演出・・・それで観客である私たちも問題の意味を知ることになる・・・も上手いなぁと思いました。
一郎ちゃんが高瀬宮を打ち負かそうとする出題のヒントが、家での何気ない息子との会話の中にあったなんていうところもニクイです。
大蔵家の飼犬の名前がレアティーズで、ハムレットにちなんだ台詞が出てきたりなんていう演劇的な小ネタや、大蔵男爵のクセが親指を上げて「いいね!」で、「今皆さんが何気なく使っているいいね!の発案が大蔵男爵だったんですね」なんて時事ネタ?も入っていて、わかぎゑふさん、ほんと抜け目ありません。

有象無象の共演陣の中、三浦理恵子さんの華子さんが際立った印象を残していました。
お嬢様で天真爛漫で浪費家で、でも肝が座っていて。
三浦理恵子さんは舞台で拝見するのは初めてで、よくも悪くも映像のイメージそのままでしたが、何と言っても可愛い。あんな華子さんなら一郎ちゃんも自分が稼いだお金をどんなに使われててもついデレッとしてしまうんだろうなぁ。
スレンダーなボディに鹿鳴館風のドレスがよくお似合いでした。黒留袖をそのままドレスに仕立てた衣装、ステキだったな。

その華子さんの従兄弟で、銀座ショッピングの荷物持ち・遊び人ののんちゃんは谷山知宏さん。
華族のチャラ男なんだけど実は帝大医学部の学生で、なんていうところもいかにもセレブにいそうです。自分が浅井家の当主になれると思っていたところ、駆け落ちまでして華子さんをさらってしまった一郎ちゃんには何やら屈折した思いもありそうで、一郎ちゃんの弱点をライバルにバラしたりもしちゃいますが、一郎ちゃんのピンチにはお医者さんの卵の本領発揮というおいしい役。
谷山くん、花組芝居の時もそうですが、よく通る声と高い身体能力。異彩を放っていました。

白河稀人(小川信太郎)は東京では粟根まことさんがやっていらして、稀人のアドリブコーナー(?)では、「僕にはまことという兄がおりまして」とおっしゃっていました。
「ハルカスのは」というように客席から一文字もらってアドリブで一発ギャクやるの、なかなか苦戦していらして「この空気・・・あせあせ(飛び散る汗)」と。

IMG_8272.jpg開演前のロビーではわかぎゑふさんとコング桑田さんが並んで物販(笑)。
大千秋楽で、升毅さんが特別にサインしたプログラム(イチローだから160冊)を販売。
「今日は千秋楽限定モデル。升毅のサイン入り。日付も入ってるから!今日朝 升さんが書いたの。一人10冊までOK!」とロビーに大音量で響き亘るコングさんの声。超優秀な営業マンだわーい(嬉しい顔)

で、まんまと乗せられて買ったパンフレットに掲載されている上演記録を見ると、私が観たのは1998年の中島らもプロデュース版だった模様。
近鉄アート館で三面客席だったのも今回と同じ。忘れてましたが高瀬宮役は今をときめく?佐々木蔵之介さんだったのよね~。

大千秋楽で大盛り上がりのカーテンコール。
出演者全員の写真ないから、と、三面客席それぞれをバックにして全員で記念撮影。「ここにいてはマズイ人は下向いててください」とか(笑)。私も写り込んだかなぁ。
升毅さんは「今回、親子共演できました」とノゾミちゃんを紹介したり、「ずっと華子の役をやってくれていた牧野エミの姪の牧野舞にも参加してもらいました」と感無量の様子。
それを見ていたら、役者さんにとって戦場ともいえる舞台にそんなふうな個人的なウェットな感情を織り交ぜることには否定的な私も、今回ばかりは許す、という感じで胸が熱くなりました。

最後に登場したわかぎゑふさんは、劇中のバトルの最後の問題の答えを「千秋楽のプレゼントに」と私たちに教えてくれて、さらに新たな問題を出題されました。
「今回が5回目の上演だからさすがにもうこのままでは再演しないでしょう。『一郎ちゃんが次にいく』みたいなのを書くかも」と。
それを受けて升毅さん「一郎ちゃんがホニャララ…」でお会いしましょう!で幕。


投げキッスしながらはける姿もチャーミングな升毅に惚れ直し のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1145 わーい(嬉しい顔) vs 1153 ふらふら)
posted by スキップ at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック