真田幸村率いる真田十勇士。
その十勇士の一人・猿飛佐助を主人公に、「嘘もつき通せば真実となる」をテーマに描いた作品。
「嘘がまことに まことが嘘に 見事変わればご歓声
嘘をまことに 浮世の憂さを ちょいと晴らせ!」
だったかな。
日本テレビ開局60年・読売テレビ開局55年特別舞台
「真田十勇士」
脚本: マキノノゾミ
演出: 堤幸彦
出演: 中村勘九郎 松坂桃李 比嘉愛未 福士誠治 中村蒼 高橋光臣 村井良大 鈴木伸之 青木健
駿河太郎 石垣佑磨 加藤和樹 音尾琢真 野添義弘
加藤雅也 真矢みき ほか
映像出演: 平幹二朗 語り: 坂東三津五郎
2014年2月15日(土) 12:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階7列上手
関ケ原の戦いで武勇の誉高かった真田幸村(加藤雅也)が、実は見栄えはよいけれど凡庸な武将で、彼と出会ってそれを聞いた猿飛佐助(中村勘九郎)が、「だったら、真田幸村は名将だったという大嘘を、この先100年200年先にまでとどろかせてやろうじゃないか」と、同じ抜け忍の霧隠才蔵(松坂桃李)らとともに、幸村を押し立て、徳川家康(平幹二朗)の仕掛けてくる“豊臣潰し”大坂冬の陣・夏の陣に真っ向から立ち向かう物語。
以前にも書いたことがありますが、真田幸村は負けると知りつつ豊臣を見捨てず最後まで戦った大阪の(というか私にとっての)ヒーローなので、それをヘタレキャラに設定されたのはいささか抵抗があります。
負けるとわかっている戦いにもかかわらず、「義のために」突っ込んでいく悲壮感とかそのカタルシスを真田の物語には期待する方なので、肩すかしをくらった感も・・・。
ですが、十勇士はもともとフィクションな訳で、そこに、家康と淀君の「密約」とか、淀君と幸村との恋情といった虚構なのか史実なのか曖昧なエピソードを散りばめつつ、最後には幸村も覚醒(?)させて、虚実織り混ぜた物語に仕立て上げた筆力はさすがマキノさんです。
フィクションといえば、十勇士を活躍させ、家康の鼻を明かして終結しようとする時、作家さんたちはどうしても、「秀頼は生き延びた」ことにしたいのね~と改めて思いました。
去年観た「大和三銃士」をはじめ、かなり既視感アリアリなんですけど~ただ、ここで単なるめでたしめでたしに終わらず、秀頼の命を守るために多くの武将の命を犠牲にした自分が生きている訳にはいかないと、大阪城とともに果てる覚悟を告げる淀君と、彼女の覚悟を「いや、一緒に生き延びよう」なんて陳腐な言葉で遮ったりしない佐助はよかったです。
才蔵がそんな淀君を見て、「どうする?」と佐助に聞いて、佐助が(淀君をおいたまま)「行こう」と応えるシーン。
十勇士一人ひとりのキャラが立っているのもマル。
最後に「秀頼を生き延びさせる」ために、十勇士の中に秀頼そっくりの人間が含まれていることがポイントになってくるのですが、福士誠治くん演じる根津甚八を臆病者の設定にして、戦では逃げ回って隠れていたので姿を見せず、その隙に秀頼を登場させるあたり、上手いなぁと思いました。最後のちょっとしたオチにも使われていましたし。
ただ、これは群像劇の宿命でもあると思うのですが(「八犬伝」などもそう)、十勇士が揃うまでが結構長くて、その分本来の物語の動き出すのが遅れがちで、結果として一幕は冗長になっちゃったかなぁ。
もう一つ脚本で気になったのは、笑いに走り過ぎなところでしょうか。
これは好みの問題ですが、とってつけたようなギャグやダジャレには冷めてしまうタイプなので。佐助が昨年の流行語大賞のワードを全部言ったのには引きまくりでした。あれを言わされる勘九郎さんもお気の毒です。
私が観た日はソチオリンピックのフィギュアスケートで羽生結弦くんが金メダルを取った日で、勘九郎さん佐助が客席から登場した時、 「羽生結弦 金っ!すばらしい。それを祝って今日は松坂桃李が5回転半やります」って言ったり、その桃李くんが宙乗りから降りた時には、「あ、両足着氷。減点!減点!」なんて言ってましたが、そういうアドリブはOKです(←我ながら身勝手)。
演出はさすが堤幸彦さんだけあって、映像使い放題でした。
プロジェクションマッピングやCGはもちろん、文字にイラストにナレーションに、って時々映像作品を観ているような感覚にもなりました。
基本、舞台にはナマのマニュアル感を求める方なので、ま、はっきり言えばこの演出、苦手ってことです(笑)。
クライマックスで燃え落ちる大阪城をまんま映像で見せられてもなぁ、という感じ。もっと舞台ならではの表現方法があると思うのです。
古い話で恐縮ですが、「染模様恩愛御書 細川の男敵討」の金銀赤の紙吹雪が吹き出してくる火事のシーンなんてアナログだけどすごく迫力あってすばらしかったけどなぁ。
初めて拝見する方も多かったのですが、役者さんは皆熱演。
中でも中村勘九郎さんが、台詞、間、動きのキレ、殺陣、すべてにおいて頭抜けているという印象です。わりと三の線のキャラクターなのだけれど、実にイキイキと楽しそうに、締める時にはピシッと締め、まさに硬軟自在。
観ているだけで幸せな気分になる美しさの松坂桃李くん才蔵もよかったです。
ただ才蔵は、佐助の対照として立つキャラクターにした方がもっと際立ったかなという気がします。クールだけど笑いの部分も捨てきれず、というところにブレがあったかな、と。これは桃李くんではなく脚本の問題ですが。
十勇士の中では、加藤和樹さん由利鎌之助が長い薙刀を駆使した殺陣がキレッキレで目をひきました。
殺陣といえば柳生宗矩役の野添義弘さん。失礼ながらおじさんなのに佐助とも才蔵とも渡り合う殺陣、すばらしいなと後でプロフィール調べたら、特技欄に「アクション・殺陣・殺陣振付」とあって納得した次第。
坂東三津五郎さんのナレーションは、勘九郎さんとのやり取りもあったりご馳走でしたが、徳川家康の平幹二朗さんが映像だけのご出演だったのはちょっぴり残念でした。
日本テレビ開局60年記念で豪華キャストに3Dマッピンクを駆使した映像スペクタクルで一大エンタテインメントとして仕上げ、惜しげもなくたっぷりお金を使いました・・な舞台でした。
あの大きさもお値段も規格外のパンフレットは何とかしていただきたい・・・買わなかったけど~ のごくらく地獄度 (total 1138 vs 1146 )
2014年02月21日
この記事へのトラックバック
わわ・・あのパンフお買い上げですか。
確かに、サイズ的にもカタチ的にもちょっと持ちにくそうでした。
トートバッグとセットとは・・・さすが日テレ、商売上手ですね(笑)。
舞台が始まってから、終わった時、直前のスキップさんの
反応がよ~~く理解出来ました(笑)。
ギャグの多さも、映像に頼った演出も私好みではなく・・。
確かに役者さんたちは熱演で良かったんですけどね。
ま、こういう事もあるさ!ですね。
ちなみに夜公演もオリンピックネタありました♪
(両足着氷~は無かったけど)
パンフは「並んでいただいても売り切れかもしれません」
って言ってました~。
あの時のビミョーな気持ちね~(笑)。
私は特に真田に対しては思い入れがあるので、ハードル上げちゃった観
があるのですが、期待が大きかった分、ドンピシャではなかった場合の
落差は激しいといったところでしょうか。
群像劇としては楽しかったのですが。
パンフは私が観た回もほとんどの人が持っていました。
そうか、売り切れるくらいなら買っておけばよかったかしら(違)。
そこのところがイマイチだったんですが(凄いなあ・・とは思いましたが・・)、初めて『芝居』を観た友人達はめちゃくちゃ気にいっておりました。お芝居の『入口』で観た方には、おおむね好評のようですね・・・(笑)
言いたいことはボチボチありますが・・・
でも、まあ・・・勘九郎君と桃李君をじっくり見れて
幸せでございました♪
なるほど~。お芝居初心者には好評、と(メモ)。
私のお隣の席の朝ドラで桃李くんファンになったとおぼしきおばさま
は途中スヤスヤとおやすみでしたけどね~(笑)。
勘九郎くん、桃李くんはじめ役者さんは皆よかったですね。
ただ桃李くんは「ヘンリー四世」のことを思うとやっぱりちょっぴり
物足りなかったです。もっとできる子のはずなので。
これは桃李くんの演技云々というより、脚本の描かれ方が、
という意味ですが。