興味はあったもののいかにも難解そうなニオイがぷんぷん。
加えて、Jの人が出演する舞台特有の面倒な先行予約システムに気持ちが萎えてチケット戦線にも参戦できず、まぁいいか、とあきらめモードだったところ、初日1週間前になって追加席発売。
そのメールをタイミングよく見たのもご縁とトライしたら首尾よくチケットを手に入れて観劇となりました。
「冬眠する熊に添い寝してごらん」
作: 古川日出男
演出: 蜷川幸雄
出演: 上田竜也 井上芳雄 鈴木杏 立石涼子 大石継太 石井愃一 瑳川哲朗 沢竜二 勝村政信 ほか
2014年2月10日(月) 6:30pm 森ノ宮ピロティホール H列センター
古川日出男さんがこの舞台のために書き下ろした戯曲。
蜷川さんが熱烈に依頼されたのだとか。
100年のスパンで行き来する3つの世界-射撃のオリンピック代表として注目される川下一(井上芳雄)とその弟でエリート商社マンの多根彦(上田竜也)が息づく現代、彼らの高祖父(祖父の祖父)である熊猟師(勝村政信)と獣たちとの越後の山中、そして、同じ明治期に油田景気に沸く新潟の村-。
多根彦の兄・一と多根彦の婚約者である詩人のひばり(鈴木杏)。
かつて熊と契った高祖父を持つ一と、犬と獣婚した先祖の血を引き、生まれながらに髪の1/4だけ犬色(金髪)のひばりが、心も体も通い合い、交わってしまったことから、じわりと動く物語。現代における兄弟の対立が、人間と獣が通じていた彼方の時代の記憶を呼び覚まし、熊、犬といった原始的で根本的な“生命”と、石油というエネルギーによって進化してきた“文明”との対比を示すかのように、重層的に時空を行き来する世界。
・・・って書いても、実際に観てみないとこの感じは伝わらないですね。
かなり難解、そして観ていてとても疲れる作品でした。が、嫌いではなかったです。
冒頭の一・多根彦兄弟が仔犬のようにじゃれ合うシーンは微笑ましくてワクドキだったし、客席まで伸びる巨大なベルトコンベアのような回転寿司には呆れたし(ほめてます)、一とひばりの鳥屋野潟のラブホテルのシーンは「見えちゃうんじゃ?」「そこまで見せていいの?」とドキドキしながら楽しみました(笑)し(場面のセクシャルさとは対照的に2人の台詞はむしろ硬質な感じだったのも印象的)、狂気の淵へと沈んだ多根彦の兄への復讐と、明治時代の油田での謀略がシンクロして二人の銃が同時に炸裂する緊迫感といったらなかったし、富山の薬売り(石井愃一)と熊撃ちのシーンもよかったな。
「百年の想像力を持たない人間は、二十年と生きられない」と薬売りが放つ言葉がこの作品のテーマとなっているようですが、これは、舞台の中、つまり明治の時代の「欲望するエネルギー」である石油、イコール100年を経た現代における原発、そしてその欲望するエネルギーに依存する社会への警鐘なのだろうかと感じました。
ただ、個人的にはそのテーマと個々の物語がうまくリンクできなかったというか。
ひばりを介在した一・多根彦兄弟の葛藤と、特にあの油田の村との結びつけ方が些か強引な印象。
こういう難解な舞台だとつい唐十郎さんの一連の作品をイメージしちゃうのですが、あの聞き惚れるくらい流麗な台詞があるという訳でもなく、戯曲をそのまま文字として舞台全面に映し出す演出にも苦手感が
役者さんはさすがに皆よくて、若い3人を勝村さんはじめまわりのベテラン陣がしっかり支えている感じ。瑳川哲朗さんとか大石継太さんとか勿体ないような使われ方でしたが。
上田竜也くんは1幕のピュアでかわいい弟キャラと2幕での壊れっぷりのギャップが見事で、間にその葛藤を示すような場面がない中で、後半いきなりあのテンションに持っていくのは大変だっただろうなと思いました。
鈴木杏ちゃんの台詞しっかりぶりも相変わらず。
ラブホテルの場面の時、「ロミオとジュリエット」で藤原竜也くんロミオ相手に初々しく弾けるようなベッドシーンを演じた少女が、こんな情念の女を見事に見せてくれるようになったと感慨深かったです。
そしてお目当ての井上芳雄くん。
もっとブラックかと思いきや、意外とフツーでしたが、一は弟の婚約者を寝取ってしまったという逡巡とか苦悩はほとんど感じられない人で、そのあたりの血の通わなさというかシレッとした感じ、その分内に秘めたパワーも必要だと思われますが、そのあたりのバランスもすばらしく。立ち姿の美しさ、いつもよく聴き取れる台詞術もさすがです。
色白スベスベの肌を惜し気もなく晒してくれた脱ぎっぷりというおまけつき(笑)。
仕事帰りに観るにはいささかキツイ3時間40分 の地獄度 (total 1137 vs 1145 )
2014年02月19日
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