今年の松竹座初春公演は坂東玉三郎さんの特別舞踊公演。
金曜日の夜、会社帰りに歌舞伎が観られるなんてステキじゃない?と公演期間中2回しかない夜公演の日をあえて選んだのですが、やはり金曜日の6:00開演はいくら何でもキビしくて、仕事で遅くなって一幕目の「村松風二人汐汲」には間に合わず(涙)、二幕目からの観劇となりました。
「坂東玉三郎 初春特別舞踊公演」
2014年1月24日(金) 6:00pm 松竹座 1階14列センター
二、操り三番叟
出演: 市川猿弥 市川月乃助 坂東薪車 市川笑三郎
翁というには若々しくて美しい月乃助さんと、笑三郎さん千歳のおめでたくも厳かな舞。
月乃助さんは12月の南座顔見世にもご出演でしたが、歌舞伎に戻って来られたことが本当にうれしい。姿といい声といい、なくてはならない存在だと改めて思いました。
そして、薪車さん後見が舞台下手の桐の箱を開けて、猿弥さん三番叟の登場です。
こう申しあげては失礼ながら、あのふくよかな(笑)猿弥さんが、驚くくらいぺったんこになって、箱の中から出てきます。
薪車さんの操る糸で一つひとつ命が吹き込まれるように、手、足、顔と動かし始める三番叟。その人形振りが何とも言えぬ愛嬌、キレのよい動き、音もなく軽々と高くジャンプする身体能力の高さ、猿弥さんの真骨頂です。客席からどよめきも拍手も起こっていました。楽しかった!三、二人藤娘
出演: 坂東玉三郎 中村七之助
「藤娘」を二人で踊るという趣向で今回が初演なのだとか。
完全暗転からチョンパとなって、舞台中央に大きな松。そこにここぞとばかりに枝垂れる無数の藤の花。その藤の花の前に七之助さん、花道七三に玉三郎さん。
あまりの華やかさにどよめく客席。
美しいとか可愛らしいとか色っぽいとか艶やかとか、いくら修辞を連ねても表現しきれない感じ。
二人が大木の陰に隠れて、藤の花をあしらった着物を次々変えて現れるのにも、表情や細かい指先の動きの変化にまでも見惚れます。
踊りに疎い私(おまけにイヤホンガイド苦手で借りない)は、振りの意味とかよくわからないのですが、二人が踊る姿を観ているだけで幸せな気分になります。
華麗で可憐な玉三郎さん、同じく可憐だけどどこかクールでシャープな七之助くん。
同じ振りを踊っていても、二人の個性の違いが感じられたのも興味深かったです。
一番それを感じたのはスピードかな。何でしょ、どちらが速いとか遅いというより、玉三郎さんの方が全体的にゆったりした印象。でもスタートと終わりは同じタイミングなの。これ、不思議な感じでした。
扇と襦袢を徳利と盃に見立てて二人がお酒を酌み交わすところも楽しかったな。だんだん酔って目も座ってくる玉三郎さんがとてもキュート
時には七之助さんを見守る目線が優しい姉のようにも感じられる玉三郎さん。紅い振袖を着た二人が連れ舞で花道の引っ込み。最後まで私たちの目をひきつけて離さない藤の精二人でした。
四、於染久松色読販 心中翌の噂 「お染の七役」より
出演: 坂東玉三郎 中村七之助 市川月乃助 市川笑三郎 ほか
この演目は歌舞伎でも文楽でも何度か観たことがあって、一番印象に残っているのは、亀治郎さん時代の猿之助さんが七役演じた2011年ル・テアトル銀座の「二月花形歌舞伎」。
舞踊仕立てで拝見するのは今回初めてでした。
お染・久松・お光の三役を早替りで演じる七之助さん。
お化粧がそのままなので、久松がちょっとナヨッとした感じに見えるのはご愛嬌ですが(ま、久松は金も力もない色男だからそれでいいのかも)、早替りも演じ分けもお見事でした。
今、舞台上から消えた久松が、お染ちゃんとなって揚幕から登場とか、お染と久松が早替りしながら二人で舞う場面は、わかっていてもその速さに驚きます。客席はかなりどよめいていました。
お染ちゃんを乗せた駕籠を運ぶ駕籠屋さんが坂東功一さんと片岡松十郎さんという玉三郎さんお気に入りのイケメン二人で、しかもナマ脚だし、ワタシ的にテンション上がりました(笑)。
ラスト、七之助くん久松の立ち回りの場面で名題下さん扮する船頭たちが次々広げる番傘に「なかむらや」と入っていたのを見て何だかじ~んときました。
そして久松が散々立ち回りやって盛り上がった後、その「なかむらや」の傘の花の中にパァ~ンと登場して場をさらう玉三郎さんお六がこの上なくカッコよかったです。
いかにも鉄火肌の姐御といった風情。やぁ、これやっぱり舞踊でなくお芝居で観たかったなぁと思いました。
終演後の玉三郎さんの切り口上ご挨拶がまた胸熱。
決して立て板に水の如き話し方ではないのですが、歌舞伎を盛り立てようという気持ち、後に続くものを育てようという思いがひしひしと伝わってきます。
七之助くんに対する気遣いも同様で、「七之助さんは生まれた時から知っていまして。子どもの頃、お父さんに叱られていた姿を思い出しますのに、こんなに大きくなって。年を聞くとびっくりするくらい…」と。本当にやさしいお姉さん、慈愛あふれる母のようでもありました。
玉・七競演を観られただけでも幸せなのに、この日はもう一つお年玉のような眼福が
私は二幕の「三番叟」開演ギリギリに席についたのですが、始まってしばらくして係員さんに伴われていらした方が・・・通路挟んで少し前の席に案内されたその人の後ろ姿を見て、「えっ あれ、ベニー?!」
暗がりで、しかも舞台観ながら片目で、後ろ姿一瞬見ただけで紅ゆずるさんだとわかった自分、エライ(笑)。
「あれ?でも今日は公演中だしな・・・平日だから1:00 1回公演か、終演後なら来られるな。七之助くん観にきたのかな・・」と頭の中をぐるぐる回って舞台に集中できなくてコマル。
それからは幕間はもちろん、舞台中にもかなり気になって
藤娘踊る七之助くんを客席から観てるベニーをナナメ後ろから見るなんて、ほんとに贅沢な夜でした。仕事立て込んでいて、「やっぱ無理かな」とあきらめそうにもなったのですが、あきらめずに観に行ってホントによかったです。
それにしても紅さん。長身小顔でクールな雰囲気。お肌すべすべ、お洋服はセンスいいしバッグもステキで華やかオーラ輝いていました。
こちらはロビー天井に飾られた凧。
玉三郎さん直筆の文字を写したものだとか。
開演前には獅子舞もあったらしいのですが、見られなかったのよ
玉・七・紅 で三眼福 のごくらく度 (total 1129 vs 1136 )
2014年01月26日
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