2014年01月16日

観るたびに深まる 星組 「眠らない男 ナポレオン」 2回目・3回目

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連合軍との戦いに敗れ、退位宣言に署名させられ去りゆくナポレオン。
マルモン以下、見送る兵士が一斉に敬礼して歌う
♪われらがナポレオン 革命の守護神 フランスの英雄
かつてはナポレオンを称える歌として、民衆が大合唱した歌を、わずか数人の兵士がアカペラで歌うこの場面に涙。

宝塚歌劇 星組公演
ル・スペクタクル・ミュージカル  「眠らない男 ナポレオン ―愛と栄光の涯に―」
L’Homme sans sommeil: Napoleon ~Au-dela de l’Amour et de la Gloire
作・演出: 小池 修一郎
作曲; ジェラール・プレスギュルヴィック
出演: 柚希礼音  夢咲ねね  紅ゆずる  真風涼帆  礼真琴  美穂圭子  北翔海莉 ほか

2014年1月11日(土) 11:00am 宝塚大劇場 2階6列センター/
1月12日(日) 3:00pm 1階6列上手


初日に観た後は少しネガティブな印象もなくはなかった「眠らない男・ナポレオン」ですが、2回、3回と観るたびに物語に引き込まれて好きになります。
もちろん、回を重ねることで自分の理解が深まったこともありますが、1月11日に2回目を観た時、初日と同じ演目、同じ人たちが演じているとは思えないくらい求心力が上がっていました。
そうすると脚本も演出も細かい部分までよく構築されているのが見えてきて・・・。
私は舞台は一期一会だと思っていて、何度も観る人ばかりではないので、基本的に観客に一度ですべてを感じ取らせるべきという考えです。
だから、その意味では、初日にそれを受け取れなかった自分を反省していますし、感じ取らせてくれなかったのは作品としてどうなのだろうという疑問も些か残しつつ・・・。まずは演出(小池修一郎)。

プロローグは最初に観た時から大好き。
登場人物がワンフレーズずつ歌い継いで合唱となる壮大なプロローグは観ていて背中がゾクゾクします。
戦闘シーンをダンスで表しているところも好き。
イタリア遠征に出発する時に部下の名前を一人ずつ呼んで、隊列に加えるところとか、アルプス越えもカッコよかったな。

初日の感想にも少し書きましたが、場面転換は大劇場の舞台機構を知り尽くした小池先生の手腕が冴え渡っています。
話題沸騰のラブシーンも、その濃厚さもさることながら、ジョセフィーヌの部屋から二人が階段を上がって、月明かりの中、キスしたり抱擁したりしながらバルコニーをゆっくりと歩き、階段を降りてまた部屋に戻るという流れるように美しいシーンが盆が回って展開されて、夢見るような甘く美しい場面。
あの仕草の一つひとつまで小池先生が演出されたとはオドロキですが、宝塚歌劇史上に残る美しいラブシーンになったことは確か。

ナポレオンがイタリア遠征で戦っている戦場の場面で、いくら手紙を書いても返事も出さないジョセフィーヌのパリでの退廃的な暮らしぶりが中央にせり上がってくるところも秀逸だったな。

ラスト、去り行くナポレオンの心に、これまでのシーンや出会った人々が次々と現れては消えて行く場面はまるで走馬灯のようで、映像を観ているような印象も受けました。
このあたり、振付された桜木涼介先生のブログも興味深いです。

この場面、1回目観た時は気づかなかったという失態(!)で、2度目から号泣たらーっ(汗)(笑)。
ここに現れるマルモン(紅ゆずる)は士官学校時代の雪合戦のシーンなのですが、心ならずもナポレオンを裏切ることになってしまった彼を、全てを失ったナポレオンが思い出すのが雪を集めて笑うマルモンだったのは何とも切ないです。
そういえば、最初の雪合戦のシーンで、「負けるとわかっている戦いをどうするか」みたいな会話をナポレオンとマルモンがかわす場面がありましたが、あれは伏線だったのでしょうか。
パリを開門するとなった時に、「最後まで戦いを貫きたかった」ナポレオンと、「たくさんの命を救うために」負けを選んだマルモン。


次に楽曲(ジェラール・プレスギュルヴィック)。

音楽は、たとえば同じプレスギュルヴィックさん作曲のロミジュリの「エメ」や「世界の王」のように、あるいはエリザベートの「闇が広がる」や「最後のダンス」、レミゼの「民衆の歌」のように、一度聴けばすぐにリフレインできるほどキャッチーな曲ではないのですが、いずれも美しい旋律で耳に残ります。

同じ曲がリプライズで効果的に使われているのもドラマチック。
たとえば、ジョセフィーヌが ♪生きる~ 女王になれるその日まで~と自分の生い立ちを語って歌う「女王になる」という歌はこの後2回出てきます。
本当は誰よりもナポレオンを愛していると気づいた時、そして、ナポレオンが失脚し、ロシア皇帝に流刑地のことを嘆願した後、自らも息絶える直前・・・自信に満ちていたり心細気だったり、時を経てその時々で心情が変わっているのも感じられます。

また、ウジェーヌ(礼真琴)が父の形見のサーベルを取り返しに行った時、ナポレオンに♪もしもあなたが父に会えたら~と歌った曲は、ラスト近くでグランマルモン(英真なおき)がナポレオンⅡ世(天寿光希)に、♪もしもあなたが陛下に会えたら 一目だけで わかったはず 聡明で偉大な皇帝だったと~ と歌詞を変えてリプライズされていて、とても印象的でした。

ミュージカルの作劇に詳しくなくて、この曲をここで使って、同じ曲を歌詞を変えてここでリプライズして、というのは演出家の小池先生のお仕事なのか、音楽監督の太田先生のご担当なのかわからないのですが、いずれにしてもGood job!


そして衣装(有村淳)。

ナポレオン以下ずっと軍服ですが、年月を経るに従って豪華になったり顕彰がたくさんついたり。やはり紺の軍服に二角帽がカッコいいムード
豪華な戴冠式の場面や、その後の画家に絵を描かせる場面の赤い服など、現存する絵画とそっくりの衣装も見ものです。

軍服ばかりの中では、革命後のいかにもブルジョワのチャラ男といったミュスカダンたち(鶴美舞夕・如月蓮・十碧れいや・麻央侑希)が色とりどりのタキシードにシルクハットで歌い踊るシーンは明るくて華やかで楽しかったです。

でも今回は衣装は何と言っても娘役のものだな(笑)。
特にねねちゃんジョセフィーヌのドレスはその着こなしのセンスも含めて、どれもとても美しい。
宝塚の娘役には珍しくブルーのドレスが多かったのも印象的。
中では、バラスとパーティに登場した(そこでナポレオンが一目ぼれした)時のエンジのドレス(パールの首飾りがゴージャズ)と、結婚式の緑のりボンのドレス、そして、あの♪君のうなじが 月明かり浴びて~ のラブシーンの白いネグリジェ(かな?)がお気に入り。
ロシア皇帝をお迎えするから「美しくあらねば」と歌う最後のシルバーグレーのドレスも綺麗でした。


柚希さんとねねちゃんについては書きたいことはまだまだたくさんありますが、今回は周りの人たちについて。

初日、プロローグのワンフレーズずつ歌い継ぐところで、「この人歌うまっ!!」と思わずオペラあげて確認したら北翔海莉さんでした。
フィナーレの男役群舞で、柚希さんはさておき、その下手で踊る人のダンスがとても綺麗、とオペラで見たら北翔海莉さんでした。
みっちゃんおそるべし。そして凄いよ。
タレーランは出番は決して多くないですが、いかにも腹に一物持った人物で際立った印象を残します。
バラスのパーティの場面で、「聞かせてよ 君の話・・」と自分からジョセフィーヌに生い立ちを話すよう仕向けておいて、彼女が歌っている間はニヤニヤ笑ってワイン飲んだり、周りの人たちと談笑したりして全く関心がないような人非人(ほめています)なところがいかにもタレーラン。
足が悪く杖をついているタレーランですが、暗転で袖にはける時も役のまま杖をついてゆっくり歩くタレーランに感動。

士官学校時代からずっとナポレオンの弟分でいいヤツで、だけど二人の間には少しずつ溝ができて、やがて苦渋の決断で裏切ってしまうマルモンは紅ゆずるさん。
この裏切りに至る心の葛藤や変化が描かれ不足だったかなぁ。これは紅さんの問題ではなく脚本として。
ナポレオンⅡ世にナポレオンのことを語って聞かせる老マルモンの口調は終始穏やかで温かくて、あの裏切りが決して本意ではなく、彼は今もナポレオンを敬愛していることを感じさせるのでなおさらです。
歌はまだあちゃがく〜(落胆した顔)と思うところがなきにしもあらずですが、すごく聴きやすくなったと思います。

実直なマルモンに対して、どこか要領よくて、軍服も自分でカスタマイズしちゃうし先に出世もするミュラは真風涼帆さん。
どこにいても目立って視線をひきつける華はさすがで、真風さんと早乙女わかばちゃんカップルの並びは本当に華やかで綺麗でした。
この人の特徴でもあるのですが、台詞の口跡の甘さはあとひとふんばりかなぁ。
それと、ダンスにもあと一息シャープさが欲しいところ。あ、これは紅さんも。

諸先輩を差し置いて、主役以外で一番目立ったのは礼真琴さんのウジェーヌではないかしら。
そして期待に違わぬ実力を見せてくれています。
ソロの歌唱はもちろんのこと、母ジョセフィーヌとともに投獄される子供時代、ナポレオンのもとへサーベルを取り戻しに来る少年時代、母と義父であるナポレオンの仲を案じる青年時代と、声も演技もくっきりと演じ分けているのに感心。

プロローグからその歌唱が頭抜けているばかりでなく、貧しくても貴族としての威厳や敬虔なカソリック教徒としての顔を持つナポレオンの母レテイツィア・美穂圭子さん、相変わらずのベルベットボイスが響き渡り華やかな笑顔も印象的な社交界の花・テレーズの音羽ゆりさん、しっかりものの娘・オルタンスの音波みのりさん、と娘役さんが並ぶ中、少ない出番ながら鮮烈な印象を残したのはナポレオンの再婚相手 マリー・ルイーズの綺咲愛里さん。可憐な容姿で下級生の中では以前から役付きよかったですが、ここで一気にあげてきた感じがします。もう一人の綺麗どころ・早乙女わかばちゃんは組替えだしなぁ。


・・・というところで長文になってしまったのでつづきはまた改めて。


まだ書くんかい!・・・というかまだ観るんかい!(笑) のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1125 わーい(嬉しい顔) vs 1131 ふらふら)
posted by スキップ at 23:28| Comment(4) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
又、涙が溢れてきました。1幕は、はっきり言って初見の人には、少し長く展開の速さ等で、周りの客席の方々も、どことなく疲労感があったのですが、2幕になると、どこかしらから、すすり泣きが。私と言えば、もう失神してしまうのではないかの(+o+)の勢いでした。3時間で見事なナポレオンの一生を演じきったちえ様、同性でありながらドキドキするくらいの、ネネちゃんの艶やかさ、特にうなじの細さ。仰っておられる様に音楽が少し初見では、心に残りにくく、プレスギュルビックさん、手抜いて無い?とか思ったりしたのですが、後々おもえば又、良くって(^^)。この三年は、仕事やら諸般の事情で一回しか観れなかったのですが、今公演はリピートする事に意義有りです。ちょっといろんな手を尽くして、行ってまいります。
宝塚バンザーイ!!
Posted by sissy at 2014年01月17日 06:18
初めておたよりします。先日一度コメントさせていただいたのですがうまくいかなかったようです。ごくらくさんのブログ毎回楽しみに拝見させてもらっています。「ナポレオン」お正月と先日で3回みてようやく歌の良さ、演出の良さ、出演者のすばらしさがわかりました。極楽さんが上手に書いていただいている通りです。先日読売演劇大賞に「明日海りお」が候補にあがっているとありました(結局はいりませんでしたが)私的には柚希礼音の方がすばらしく、演劇大賞でもあげたいところです。
Posted by のぐち けいこ at 2014年01月17日 11:15
♪sissyさま

私も観るたびにナミダの量が増えるような気がします。
♪嵐のように 生きたお~とこ~  とか
♪僕は~ 眠らない~  とか
♪ジョセフィーヌ ジョセフィーヌ  とか
いつも頭の中をぐるぐる回っています(笑)。
柚希さんもねねちゃんも、星組の皆さんもすばらしいですよね。

今回リピートなさるのですね。
私もあと2回分チケット持っているのですが、もう1回くらい
増やせるかな~と画策中です。
お互いに心おきなく楽しみましょう!
Posted by スキップ at 2014年01月18日 00:03
♪のぐち けいこさま

コメントありがとうございます。
先日、「埜口 啓子様」のお名前でいただいたコメントも
ちゃんと入っていて拝見しました。
星組公演ではない記事のところにコメントいただいていたので
そちらにリプライしたのですが、わかりにくかったですね。申し訳ありません。
恐縮ながら初日の記事の方にコメントを移動させていただきました。
こちらからご覧になれると思います。

http://paradise.269g.net/article/17889962.html

2回、3回と観るとすばらしさがじわじわと心にしみくる作品ですね。
初見でそれがわかればもっといいのでしょうけれど(笑)。
演出も音楽も、そして柚希さんはじめ星組の皆さんもすばらしいです。

読売演劇大賞は数いるジェンヌさんの中で明日海りおさんだけが
というのは少しオドロキでしたが、トップになってさらに輝きが
増すことを期待したいです。
Posted by スキップ at 2014年01月18日 00:19
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