
今年の観劇納めですが、思えば観劇始めも「TOP DOG UNDER DOG」でアメリカ現代劇で、感想にも「苦手だ」って書いていました(笑)。まさに「一年の計は元旦にあり」ですな(観たのは元旦ではないけれど)。
「SEMINAR セミナー」
作: テレサ・リーベック
翻訳: 芦沢みどり
演出: 栗山民也
出演: 北村有起哉 黒木華 黒川智花 相葉裕樹
玉置玲央
2013年12月29日(日)2:00pm 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール 1階A列センター
2011年にアメリカで初演された戯曲。
高額の授業料を払って小説の創作教室に集まる作家志望の若者たちと彼らを指導する辛辣な著名作家・・・5人が織りなすストーリー。
ほとんど作品を発表せず、海外の紛争地帯へ取材に出かける傍ら、創作教室を開いているレナード(北村有起哉)の10週間5,000ドルという高額のクラスに集まったのは、資産家の娘でプライドも高くジェーン・オースティンに傾倒しているケイト(黒木華)、性的魅力にあふれるイジー(黒川智花)、作家を叔父に持つダグラス(相葉裕樹)、作品をなかなか提出しないマーチン(玉置玲央)という4人でした・・・。
これ、観終わった後にコメディだと知ったのですが(笑)、もちろん笑いは散りばめられているものの、結構シリアスな台詞の応酬は聴き応えありました。
レナードの講義(セミナー)と、レナードがいない場での若者たちの4人だったり2人や3人だったりする場面と交互に展開する形で進みますが、その温度差も興味深く。生徒たちを演じる4人の役者さんは舞台やTVで観たことがある人ばかりですが、それぞれがその役の個性や背景になるものをきっちり表現していて、かつ活き活きと現代の若者を演じていてとてもよかったです。いいな、若いチカラって。まぶしいくらいです。
中でも黒木華ちゃん。
「表に出ろいっ!」で抜擢された時(私は太田緑ロランスさんの方だったので残念ながら拝見していませんが)、「今までもNODA・MAPに出てたの?」と驚くくらいだったのに、どんどん活躍の場を広げて、4人の中心人物ともいえる役を・・・すばらしい。
北村有起哉さんのレナード。
若者たちに容赦なく辛辣な言葉を浴びせ、女には目がなく?、刹那的に生きているように見えますが、本物を見分ける目は超一流で書き手の人間性まで見抜く、そして心には深い翳りを持つ・・・4人の若者の中にいることもあってか、とても大人で陰影豊かで、力が抜けているようで張りつめていて、という感覚が絶妙でした。
それまでの場面はずっとケイトのアパートで、現代的でスタイリッシュな雰囲気だったのが最後の場面だけ一転してレナードの部屋。木の温かみがあって、たくさんの本や世界各地の民芸品があふれている(日本人形もあったな)この部屋がいかにもレナードらしくて思わず笑っちゃいました。
北村有起哉さんにとって翻訳劇はライフワークの一つということですが、こんな翻訳劇ならまた観たいなと思わせてくれるレナードでした。
ケイトのレナードに対する反発は、真実を言い当てられたことへの裏返し、人間性まで見通すレナードに心の底では惹かれていることはすぐに見て取れます。
それでも、最後のシーンでマーチンがレナードを訪ねて来た時、「取り込み中」のお相手がケイトだったのには些か驚きました。
同じくひっくり返りそうなくらい驚いているマーチンにケイトが言う「レナードは本当のことしか言っていないわ」という言葉はとても印象的。
そしてラストのあれは?
マーチンと作家活動のみならず、プライベートでも「パートナー」なるっていうこと?(笑)
カーテンコールの玉置玲央くん。レナードが飲み残したウィスキー(?)を一気飲みしていました のごくらく度


