2013年09月22日

九月花形歌舞伎 昼の部


9gatsuday.jpg昨日は東京へ行ってきました。
日帰りで歌舞伎座直行直帰(笑)。
歌舞伎座に1日中お籠りして、九月花形歌舞伎を昼・夜通しで観ました。
とはいうものの、約束していた方、そうでない方、たくさんの方にお目にかかって、幕間も昼夜の間もとても楽しく忙しく過ごしたのでした。
皆さまいつもありがとうございますムード

さて、昼の部。
夜の部「陰陽師」の話題が何かと先行していますが、意外にも(と言っては失礼ながら)、この昼の部もとても見応えありました。


歌舞伎座新開場柿葺落  九月花形歌舞伎 昼の部
2013年9月21日(土) 11:00am 歌舞伎座 3階1列下手


一、通し狂言 新薄雪物語   花見/詮議/広間・合腹
出演: 市川染五郎  尾上松緑  市川海老蔵  尾上菊之助  
中村勘九郎  中村梅枝  中村七之助  片岡愛之助 ほか 
   


初めて観る演目だったのでまずはあらすじを。
園部兵衛(市川染五郎)の子息 左衛門(中村勘九郎)と幸崎伊賀守(尾上松緑)の息女 薄雪姫(中村梅枝)はそれぞれの家臣、奴妻平(片岡愛之助)と腰元籬(中村七之助)の取りなしで恋仲となります。天下を狙う秋月大膳(市川海老蔵)の策略により、奉納の刀に天下調伏のやすり目を入れたと左衛門と薄雪姫に謀反の疑いがかかりますが、執権 葛城民部(市川海老蔵)の計らいで、左衛門が幸崎家、薄雪姫が園部家に預けられます。それぞれの子を預かった兵衛と伊賀守は、子どもを逃がして自らが犠牲になることを決意し、陰ながら腹を切ります。二人は命を捨てて子どもの恋を成就させようという思いが互いに一致したことを、兵衛の妻梅の方(尾上菊之助)とともに涙を隠して笑い合うのでした。


お父様世代がこれまで演じて来た演目でなかなかハードルが高かったのでは、と思いますが、懸命に取り組んでいることが感じられ、とても熱い舞台になっていました。
筋書のインタビューで、海老蔵さんは吉右衛門さんに、染五郎さんは仁左衛門さんに、菊之助さんは玉三郎さんに、松緑さんは幸四郎さんに、愛之助さんは梅玉さんに、勘九郎さんは菊五郎さんに、それぞれ教えて頂くと語っていらして、歌舞伎って本当にこうして、家は違ってもその芸を継承して行くのだなぁと感概深かったです。

華やかあり、アクロバティックあり、いかにもな悪役あり、親子の情あり、理不尽な死あり・・・歌舞伎のいろんなエッセンスが盛り込まれたような演目でした。


序幕の「花見」は満開の桜も背景も、登場人物の衣装も色鮮やかで美しく、「ああ、歌舞伎観てる~」という気分になります。
綺麗で若々しい勘九郎・梅枝カップル。梅枝くん薄雪姫はいつもながら可愛いばかりでなく品があっていかにもお姫様。タイトルロールにふさわしいです。恋には結構積極的なのね(笑)。
七之助くんも薄雪姫ができそうですが、今回は委細承知、といった訳知りの腰元・籬。姐御肌な感じと武家に仕える腰元らしく下世話になり過ぎない雰囲気とのバランスが絶妙でした。
奴・妻平の愛之助さんはこの中に入ると演技もさすがにお兄さんで安心して観ていられます。

一幕終わり、その妻平がたくさんの奴たちと大立ち回りをする場面は、屋台下からの大ジャンプとか5人飛び越えとか、名題下さんたちの高い身体能力から次々繰り出される技を存分に楽しみましたが(何度もどよめきと拍手が起こっていました)、歌舞伎座の舞台でその中心にいて奴たちを一人で捌く愛之助さんにはちょっと胸熱でした。らぶりんファン、うれしかっただろうな。

そんな楽しい気持ちも雰囲気もガラリと変わる三幕が、やはり見応えありました(その間に「詮議」の二幕目もあるのですが)。

まずは兵衛。
届けられた刀を見て「自分たちは薄雪を逃がしたのに伊賀守は我が息子の首を打ったのか」と恨みごとを言う梅の方に対して、じっと刀を見つめた後、意を決したように「伊賀守に会うため着替えてくる。その間、決して恨みがましいことを言うな」と告げる兵衛。その表情に覚悟が読み取れて、胸の奥をギュッと掴まれたように苦しくなりました。

次に伊賀守。
陰腹を切っている伊賀守が首桶を抱え、やっとという感じで歩いて来ます。座敷に上がろうとして草履がなかなか脱げず、片方だけ脱げて片方はそのままで座敷に上がってやっと脱ぐ・・・この細やかな演技。
そこに母にひと目会いたいとやって来た左衛門の声。
左衛門は自分が手にかけ、首はこの中にある。生きているなら狐か狸、幽霊だ、と言って左衛門に「出て行け!」と渾身の力を振り絞って叫ぶ伊賀守・・・その迫力。

この日の三階は団体さんが入っていて結構ざわついたりもしていたのですが、このあたりに来たらしんと静まり返ってみんな固唾をのんで成り行きを見守っている雰囲気でした。

そして「三人笑」。
首桶を抱えて再び現れた兵衛も陰腹を切っていて、つまり2人の父親は同じことを考え、首桶を開けるとどちらにも子どもたちの首ではなく願書が入っていたことがわかります。
兵衛と伊賀守、語らずともきちんと心が伝わった安堵の笑い。笑え、と言われて、最初はひきつるように、声にならない声で笑う梅の方。だけどその向こうにあるのは喜びではなくて絶望。三人とも笑っているのに、切なくて哀しい。そして観ているこちらは涙。


IMG_2993.jpg二、吉原雀
出演: 中村勘九郎  中村七之助 
 

吉原の仲之町にやってきた鳥売りの男女の舞踊。

昨年の錦秋特別公演でこのお二人の「吉原雀」を素踊りで拝見しましたが、やはり衣装をつけメイクをすると雰囲気はグッと変わります。
明るくて華やか。見た目も綺麗な二人の並びは眼福です。

この舞踊の感想になっていないかもしれないのですが、以前は、二人の舞踊は勘九郎さんの後を七之助くんが必死で追いかけているように見えたのですが、このところはそれぞれが別の道を歩き始めたなぁ、と。別の道と言ってもバラバラという訳ではなく、ちゃんと二人踊りとしてはとてもいいバランスなのですが、何と言ったらいいのでしょう、七之助くんが目覚めた?
こと踊りに関しては、自分の行く道は兄とは違う、とふっきれたというか、そんなことをぼんやり思いながら、だけど二人の踊りはとても楽しくて、ずっと口元ゆるみっ放しで観ていたのでした。



夜の部含めて、何気に松緑さん奮闘公演か? のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1164 わーい(嬉しい顔) vs 1168 ふらふら)


posted by スキップ at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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