
昨年8月「ラ・マンチャの男」を観に来て以来、1年ぶりの帝国劇場でした。帝劇に来ると、「ミュージカル観るんだぁ」って気分になるよね~。
「二都物語」
原作: チャールズ・ディケンズ
脚本・作詞・作曲: ジル・サントリエロ
追加音楽: フランク・ワイルドホーン
翻訳・演出: 鵜山仁
出演: 井上芳雄 すみれ 浦井健治 濱田めぐみ
橋本さとし 今井清隆 福井貴一 岡幸二郎 ほか
2013年8月24日(土) 12:30pm 帝国劇場 1階B列センター
18世紀。激動するフランス革命期のパリとロンドンを舞台に繰り広げられる物語。
ロンドンに住むルーシー(すみれ)は、死んだと聞かされていた父ドクター・マネット(今井清隆)が17年間バスティーユに投獄され今は解放されて居酒屋を営むドファルジュ夫妻(橋本さとし・濱田めぐみ)に匿われていることを知り、パリへ向かいます。父を伴ってロンドンへの帰途、一行はフランスの亡命貴族チャールズ・ダーニー(浦井健治)と出会います。彼は叔父のサン・テヴレモンド侯爵(岡幸二郎)に反発しイギリスに渡ろうとしていましたが、叔父の指示を受けたバーサッド(福井貴一)の企みによってスパイの濡れ衣を着せられ裁判にかけられてしまいます。その窮地を救ったのは酒浸りの弁護士シドニー・カートン(井上芳雄)。ルーシーに出会い、心を寄せるようになるカートンでしたが、ルーシーはダーニーと結婚します。子どもも生まれ幸せに暮らしていたダーニーでしたが、昔の使用人からの助けを乞う手紙を受け取り彼を救うため単身フランスに戻ったものの、蜂起した民衆たちに捕えられ裁判で死刑を宣告されます。ダーニーとルーシーの幸せを願うカートンは・・・。フランス革命を背景にしていて、虐げられた民衆の苦しみや革命によってドラスティックに転換する価値観、そして復讐の連鎖などが描かれてはいますが、この物語を貫くのは、人が生きることの本当の意味を見出したカートンの魂の再生。愛を知らずに孤独に、ともすれば自暴自棄とも思える生き方をしてきたカートンが、ルーシーと出会い、人を愛すること、人の心の温かさを知り、その家族を命がけで守ろうとする姿に涙。
カートンがダーニーの身代わりとなって断頭台へと上っていく結末は、冷静に考えると受け容れ難いものがあります。
だけど。
ルーシーへの愛は形としては実らなかったけれど、その娘であるリトルルーシーに慕われ、共に時間を過ごす中で生きる喜びを知り、自分の心の温かさも取り戻したカートンにとって、ダーニー一家の幸せは自分自身の幸せと同じ。リトルルーシーからパパを、ルーシーから夫を奪うなどという選択肢は彼の心には浮かんで来なかったのではないかと思います。
このカートンを演じる井上芳雄くんがすばらしい。
最初配役を聞いた時、井上くんと浦井くんが逆ではないかと思ったのですが、どうしてどーして。
心に屈折を抱えた飲んだくれっぷりから、今まで見たことがない新たな一面を見せてくれました。
ルーシーに心を打ち明けた途端ダーニーとの婚約を知らされて、平静を装いながら寂し気な笑顔を見せるカートン。
子供も生まれ、幸せそうなダーニーとルーシー。それを一歩離れたところから見守るカートン。
ダーニーが捕えられ、絶望して夢の中でダーニーを呼ぶルーシーの声を聞いて、なすすべもなく辛そうな表情を浮かべて立ちつくすカートン。
表現力豊かで骨太なのに繊細。
ダメ人間が突然愛に目覚めて変わったのではなく、元々正義感も男気もあった人物が見失っていた自分を取り戻した、ということが感じられました。
ラスト、降るような星空の下、迷いなんて微塵もない透き通った表情で歌う「この星空」の歌唱はねぇ~

対するダーニーの浦井健治くんはちょっと分が悪い。
これは浦井くんの演技云々というより、この人物自体が、といういことなのですが。
貴族にしてはリベラルな考え方を持ち、叔父さんに反発して威勢よく飛び出したのはいいけれど、人に助けられてばかりじゃん

けれども、育ちのよさが感じられる品があり、大らかで純粋で誠実で、人を疑うことを知らいいヤツ・・・この男ならルーシーが愛するのも無理ないとカートンに思わせるのは浦井くんならでは。
カートンが自分の身代わりになろうとしていることを察して、気絶させられる直前に一瞬見せた抵抗する表情が切なかったです。
彼の他の舞台でも感じたことがあるのですが、時々猫背に見えることがあって、これは舞台人として気をつけた方がいいのではないかと老婆心ながら。(井上くんの立ち姿がいつもとても綺麗なので余計にそう感じたのかも)
そんな2人に愛されるルーシーはすみれさん。
歌は思ったより悪くなかったです。綺麗で舞台映えするし、華もある。
だけど何でしょ。硬質な感じというか、声も顔も表情の変化に乏しく、やわらかさとか温かみにも些か欠けていて、何だか強そう(笑)。精神を病んだ父や、危機に瀕した夫を一途に支えようとする献身的で貞淑な妻には見えなかったのは残念でした。
この2人については脚本の盲点かな、という気もします。
ダーニーとルーシーの描き方が不足しているため、カートンとダーニー、男同士の友情と信頼、カートンとルーシー、ダーニーとルーシーの心の通い合いといったものが見え難いかったかな、と。そのため、カートンひとりが際立っていて、まるで「カートン物語」のように感じられなくもありません。
その他の役者さんも皆さんすばらしかったですが、貴族に虐げられた過去の憎悪のあまり復讐の鬼と化し、自分で自分をコントロールできなくなった悲しみも見せた濱田めぐみさんのマダム・ドファルジュの凄味が群を抜いていました。四季在団時代に「アイーダ」を拝見して以来ですが、相変わらず迫力のヴォーカル。
その彼女を包み込むような包容力を見せた夫の橋本さとしさん、悪の華といった趣のサン・テヴレモンド侯爵 岡幸二郎さんの怪演も印象的でした。
装置はシンプル。
濃い赤とグレーがかった白が表裏になっている4枚の大きなパネルの出し入れや表とウラの入れ替えによる場面転換、そこに光を当てたり映像を写し出すことなどで様々な場面を表現し、壁になったりドアになったり、色んな役割を果たしていました(美術: 島次郎)。
ロンドンは白、パリは赤、ということのようでしたが、それよりも、温かさとか信頼の感情を描く場面では白、怒りや憎しみといった激情の場面では赤、という印象の方が強かったかしら。
最後のお針子さん(保泉沙耶さん)との場面もよかったけれど、神に祈りを捧げ、穏やかな眠りにつくリトルルーシーとカートンが描かれる反対側で、貴族の馬車に轢かれて死んでしまったガスパール少年を抱きしめて涙にくれる父親、この対比が、この時のロンドンとパリの状況や人々の心の表裏を象徴しているようでとても印象的でした。
演出では他に、二幕冒頭の劇中劇?もおもしろかったな。ちょっとパペット風でもあり、ルイ十六世とアントワネットのギロチンをあんなふうに描くなんて。
楽曲は美しい旋律で佳曲ぞろいですが、たとえばレミゼやエリザベートのように1回聴いたら耳に残ってすぐ口ずさめるようなキャッチーな曲はなくてあっさりした印象。その反面、芝居を邪魔しないというか、芝居の中に融け込むような雰囲気。

井上くんカートン、「お前はいくつカツラつけてんだ」とか笑ってたし、その後の場面でもストライバーの頭ペタペタしてたし(笑)。

最後に井上芳雄くんと浦井健治くん二人だけのカテコが二回。一回目は浦井くんがヘンなダンス踊って井上くんがあきれて(笑)、二回目は井上くんがめまいでフラつくテイで浦井くんがおんぶしてはけていきました(^-^)

カートンとダーニーの役替りも観てみたいかも のごくらく地獄度




この日はマチソワのすれ違い、とっても残念でした。
レポを読ませてもらって、スキップさんが書かれている場面の多くが、
私もとても印象に残ったシーンだったので、
ほんとにお話したかった!!と改めて思いました。
井上くんのカートンはじめ、他のみなさんもほんとに素晴らしかったですね。
どの役者さんもが細やかに役を生きていらしたので、
いろいろ見落としがありそうで・・・
また是非再演してほしいなあ、と思います。
そのときはご一緒できるといいなv
「なるほどなあ~!」の箇所ありあり♪です・・。
DVDの映画も観て行ったけど、やはり
一回では分からない・・・(笑)
でも、井上君と浦井君は素敵でした♪
ミュージカル俳優の歌声って素敵ですね!
(↑・・・当たり前のこと書くなよ~!ですが・・(笑))
ほんとに超ニアミス、残念でしたね~。
私も恭穂さんとこの作品についてあれこれ語り合いたかったです。
ミュージカルには疎いのでいろいろ教えていただきたいこともありましたし。
恭穂さんは2回ご覧になったのですよね。
やっぱり1度だと目が行き届かなかったり理解の及ばないことも
ありますので、もし再演されたら、私もまた観てみたいです。
その時はぜひご一緒に!
かずりんさんもご覧になったのですね。
井上くんも浦井くんもステキでしたね♪
私はずーっと昔に原作を読んだことがあるのですがすっかり忘れてて、
前にも話した4月の草彅くんの舞台がよい予習になったというか(笑)。
だから理解しやすかったのかもしれません。
いやぁ、ミュージカルの役者さんの歌はほんとすばらしいですね。
「レミゼ」もご覧になりますか?楽しみですね。
もう、今さらのコメントでごめんなさっ!気持ちに余裕がない毎日で・・。
>帝劇に来ると、「ミュージカル観るんだぁ」
あー、分かります。開演前の合図がブザーでなくて鐘の音なのも「帝劇だあ」って思います。
>このカートンを演じる井上芳雄くんがすばらしい。
そうなんですよねー、本当に。浦井派の私でも井上王子に惚れました(笑)。
作品自体もカートンに軸を置いて書かれていますが、それ以上に“井上芳雄のカートン”
がとても印象深くって。スキップさんの感想を「そうそう、そうなのよねー」
なんて思いながら拝見しておりました♪
あ、私もダーニーの最後のシーン(気絶させられる直前)はとても切なくて好きでした♪
役替わり、観てみたいけど・・でもやっぱり井上カートンを選びそうです。
ごめん、浦井王子(笑)。
とんでもないです。
バタバタ毎日を過ごしているのはお互いさま(笑)。
コメントはいつでも大歓迎です。
井上くんカートンはほんとにすばらしかったですね。
私はStarSのコンサートの時も井上くんにかなり惹かれたクチです(もちろん
“天然”浦井くんもとても愛しています)が、今は、過去の井上くん出演作品
を「ミュージカルはなぁ~」ということで観てこなかったことをちょっぴり後悔中。
>役替わり、観てみたいけど・・でもやっぱり井上カートンを選びそうです。
きゃはは(^o^)
いいんですか~?ホタルイカとしては。
いや、浦井くんはできる子ですから。立派なカートンになってくれますって。