2013年05月28日

明治座 五月花形歌舞伎 昼の部

mijiza1305.jpg明治座の五月花形歌舞伎は一昨年観て今回で2回目です。前回から猿之助さん(当時 亀治郎さん)が抜けて愛之助さんが入ったという感じかしら。

明治座創業140周年記念 五月花形歌舞伎 昼の部
2013年5月26日(日) 11:00am 明治座 1階3列センター



一、源平布引滝 実盛物語
出演: 中村勘九郎  中村七之助  松本錦吾  上村吉弥  片岡亀蔵  市川高麗蔵 ほか


これは初めて観る演目だなぁ、と思っていたら、小万の白い腕が出てきたところで「あっ!」と思い出しました。調べてみたら、2年前の南座顔見世で、菊五郎さんの実盛を観ていました。(最近じゃんあせあせ(飛び散る汗)

元源氏の武将で今は平家方に身をおく斎藤別当実盛。
勘九郎さんの実盛は、颯爽としていて凛々しく、ほんとにカッコイイ。
「清盛様のご命令」を振りかざして憎たらしい瀬尾をビシリとやり込めるかと思えば、身振り手振りも華やかに小万の腕を斬り落としたいきさつを九郎助たち一家に語って聞かせたり。大きな動きの型もピタリピタリと決まって華やかで見映えよし。

日頃から端々で勘三郎さんに似てきたと思わせる勘九郎さんですが、こういう丸本物になると特にそれが顕著。声はもちろん、言葉の発し方、間まで勘三郎さんがそこにいるように感じる場面もありました。教えてもらってすごく勉強したんだろうなぁ。太郎吉くん役の子役ちゃんに接する時のやわらかい微笑みと手つきのやさしさに、二児の父である勘九郎さんが透けて見えるようでした。
「母の仇」と迫る太郎吉に、「大きくなったら討たれてやろう」という実盛。
この実盛なら、白髪を黒く染めて若武者のようないでたちで戦に出て、手塚太郎(太郎吉)に討ち取られたという後日談も納得できます。

七之助さん小万は、腕を継いでもらい、起き上がって言葉を発するけれどそれは魂であって、すでに此岸の人ではないということが感じられる、何とも玲瓏な雰囲気。源氏の白旗を握って放さなかったあの白い腕が、そのまま人の姿となったように見えました。

その小万の死体を罵って、太郎吉くんを怒らせて、わざと刺されて手柄をたてさせる瀬尾。
亀蔵さんの瀬尾はほんと憎々しかったですが、子を、孫を思う心情が哀れ。
「俊寛」でも意地悪キャラの瀬尾にこんな秘められた過去があったとは・・・源平物語、奥が深いなといつも思うのですが、「俊寛」観る時はそんなこと忘れてしまっているのよね。


二、与話情浮名横櫛
序 幕   木更津海岸見染の場
二幕目  赤間別荘の場
三幕目  玄冶店妾宅の場
出演: 市川染五郎  中村七之助  坂東薪車  片岡亀蔵  中村亀鶴  片岡愛之助 ほか


ご存知お富与三郎。
今回は「見染」の後に与三郎がメッタ斬りにされる「赤間別荘の場」も併せての上演です。源氏店は今回、明治座のある人形町周辺の古い地名「玄冶店」と称しているのだとか。
冒頭、お富を伴って小山三さんが花道に登場するだけで湧く客席。私ももちろんうれしい。小山三さん、江戸の雰囲気そのままに台詞もたっぷりと。

七之助さんのお富や匂い立つような色香と美しさ。
この役を以前拝見した時の印象と比べるとずい分大人の女になったなぁと思いました。
あえて言うなら強さとかしたたかさが結構前面に出ていたような。赤間別荘では若干尻込みする与三郎に対して超積極的だし(笑)。
お富は男の人によって人生を翻弄される女性ですが、ただ流されるだけではない強さと、女の業のようなものを感じるお富さんでした。

対する与三郎は染五郎さん。
この与三郎といい、「油地獄」の与兵衛といい、染五郎さんの“遊び人のぼん” 最強!
綺麗で色気があって隙だらけ(笑)、だけど品があって可愛げも失わない。
「見染の場」はお富と与三郎の二人だけが周りの風景や人物からくっきりと浮き出ているような鮮やかさで、ああ、この二人が恋に落ちるのは無理からぬことと思えました。

その分、悪に転落してからも甘さや弱さを隠し切れない、といった与三郎でした。
もう少し強くお富への怒りの発露や凄味がほしいかな、という感じがしないでもないですが、この与三郎という人はワルを気取ってはいても、若旦那育ちの気質が見え隠れするのが眼目であるのかもしれません。
玄冶店で先に蝙蝠安が話している間、外で所在なげに待つ与三郎が石を蹴ったりしているのは仁左衛門さんの写しかな。

それにしても染五郎さん与三郎のあの太もも、眼福です。
眼福といえば、与三郎さんと勘九郎さん金五郎が客席通路を通る時、ちょうど私たちの座席の真横で一旦立ち止まってくれたのも超眼福でした。
その金五郎の勘九郎さん。染五郎さんが“遊び人のぼん”キングなら、勘九郎さんは鳶の似合いっぷり日本一じゃないかしら。
いかにも気風のいい江戸前の職人といった風情で、手つきや足さばきにもホレボレ。
酒を飲め、という酔っ払いに、「下戸でござんして」と断る姿に見惚れました・・・この場面、いかにも気弱そうに嫌そうに、金五郎の後ろに隠れる染五郎さん与三郎の弱っちい顔にも揺れるハート

IMG_6821.jpgお富与三郎のハッピーエンドの鍵を握る和泉屋多左衛門の愛之助さんもとてもよかったです。
大店の番頭さんで、道理もわきまえた胎の座った人物という雰囲気がよく出ていました。愛之助さん、こんな役ほんとに上手いな。

いかにも卑屈な小悪党という感じの亀鶴さん蝙蝠安、オトコマエが悪役やるとこんな凄味が出るのね、な 薪車さん松五郎も印象に残りました。



「染五郎の超訳的歌舞伎」 直筆サイン本売ってたけどもう持ってるから買うのガマンしたバッド(下向き矢印) のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1104 わーい(嬉しい顔) vs 1104 ふらふら)
posted by スキップ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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