
これで2人のオスカルと4人のアンドレ、全パターン制覇です。
宝塚歌劇 月組公演
「ベルサイユのばら -オスカルとアンドレ編-」
原作: 池田理代子
脚本・演出: 植田紳爾
演出: 鈴木圭
出演: 龍真咲 明日海りお 愛希れいか 星条海斗
越乃リュウ ほか
2013年2月2日(土) 11:00am 宝塚大劇場 1階12列上手/3:00pm 2階8列上手
まずは作品全体について。
今回は「オスカルとアンドレ編」ということで、両親を亡くしたアンドレが、ジャルジェ家の乳母であり彼の祖母であるマロングラッセに引き取られ、オスカルと初めて出会うところから始まります。そして一気に大人になる2人。オスカルは近衛隊から衛兵隊への転属を決めていて、ここからバスティーユの戦いで2人が戦死するまでが描かれています。そこに重なる民衆の苦しみや怒り、そしてフランス革命へのうねり。。テーマとして浮かび上がってくるのは“シトワイヤン”。
「植田歌舞伎」と言われる大仰な台詞や動き、独白や幕前の芝居が多いなど相変わらずといった部分も散見されますが、2008年から2009年にかけて上演された4本の外伝のがっくしぶり

「イケメン」とか「オタク」とか、「子どもが大事だからお母さん方は無理しないでください」とやけに分別臭い(笑)ロザリーとか、今風にアレンジしてあるんだなぁと思える箇所もいくつか。一つ不満点を挙げるとすれば、マリー・アントワネットが出て来ないことでしょうか。
オスカル・アンドレ・フェルゼン・そしてアントワネット・・・4人で「ベルサイユのばら」だと思っているのです、私は。
オスカルはアントワネットが14歳でウィーンから嫁いて来た時からずっと王太子妃(のちの王妃)を守護してきた近衛兵で、オスカルとアントワネットの間にはアンドレとはまた違った信頼関係や敬愛があったと思います。オスカルが近衛隊から衛兵隊に転じ、やがて民衆の側に立つことは、王妃アントワネットと袂を分かつこと。そこには自分の信念に基づいて生きることとは相反する葛藤があったはず。そのオスカルの苦悩が描ききれていないような気がしました。だから、フェルゼンの登場がとても唐突だし、フェルゼンの言い分がすごく一人よがりのヘンな奴になっているように感じたのでした。
アントワネットが登場しないことで華やかな宮廷シーンがないのも少し残念だったかしら(一幕終わりに少しあるけれど)。
楽曲は、プロローグの

「愛の怯え」は私が知っている範囲ではアントワネットが歌うイメージだったので、フェルゼンが去った後、オスカルが ♪強い 強~い 愛がほしいのよ~ と女言葉で歌うのにはちょっぴり違和感。
最後のガラスの馬車は、思っていたより大丈夫でした(笑)。特に2階席で観た時には、浮遊感があって、ほんとに夜空に浮かび上がる感じ。あれはあれでありかもしれません。普通に盆で回ってくる馬車の方が好きではありますが。
キャストについて。
今回一番大変だったのは明日海りおさんでしょう。
オスカル、アンドレの役替りに加えてベルナールも。このベルナールがとてもキリリとしていて3役の中で一番好きでした。民衆を率いていく聡明な若きリーダーという感じ。綺麗なお顔立ちと男役としては少し小柄なことからフェアリー系と思いがちですが、案外骨太の男役もお似合いかも。
もちろんオスカル(面差しが朝海ひかるさんに似てた)もアンドレもハイレベルでしたが。11:00公演のオスカルの時、バスティーユの場面で床の剣拾ってしばらく両手に剣持って闘って(踊って)いましたが、あれは何かのアクシデントだったのかな。
フィナーレのボレロでは本役がオスカルアンドレにかかわらず女役を踊っていました。 オスカルの11:00はストレートのロングヘア、アンドレの3:00はショートボブでした。
龍真咲さんのオスカルは、最初に観た蘭とむアンドレの時にも書きましたが、いささか女っぽい。いや、女なのだから当り前だし、衛兵隊の前では凛々しく、アンドレの前では女らしく、というメリハリのついた役づくりは正解なのかもしれませんが、私の好みとしてはちょっと女の部分が出すぎのような気がしました。龍さんはトップになる前、敵役や男っぽい役も多かったので、こんな可愛いらしい人なんだと新鮮ではありましたが。ただ、龍さんはオスカルよりアンドレの方がお似合いと思っていたのですが、オスカルの方がよりハマっていたのは意外ながらうれしい驚きでした。
・・・というか、2人のアンドレを観て、今さらながら蘭寿さん、壮さんアンドレのすばらしさを知る、みたいな(笑)。
その他に目立っていたのは断然 星条海斗さんのアラン。ちょっと熱演すぎるきらいはありますが、熱血漢のアラン。押し出しも立派だし、戦闘場面のダンスもダイナミックで存在感際立っていました。
美弥るりかベルナール、珠城りょうジェローデルという本来のパターンもやっと観ました。美弥さんはどちらもステキでしたが、珠城さんはがんばりどころ。まずは少し痩せた方がいいかも。
そして、越乃リュウ組長のブイエ将軍は、相変わらず悪役ながらあっぱれ!のカッコよさと色っぽさでございました。フィナーレのダンスでもつい目がいっちゃいます。
月組にお知り合いのお嬢さんがいらして、3:00公演はそのご両親とご一緒に観劇したのですが、お母様は第一次ベルばらブームの時に夢中になって観た宝塚ファン。「自分があんなに夢中になった作品に娘が出られるなんて・・」と感激の面持ちでしたが、そんな幸せな気持ちを味わえるお母さん、そんなにいませんよね、うらやましい。
龍&明日海ペアもこれで見納め のごくらく地獄度



