
ミュージカル 「100万回生きたねこ」
原作: 佐野洋子
演出・振付・美術: インバル・ピント アブシャロム・ポラック
脚本: 糸井幸之介 戌井昭人 中屋敷法仁
音楽監督・作曲: 阿部海太郎
作曲: ロケット・マツ
作詞: 友部正人
出演: 森山未來 満島ひかり 田口浩正 今井朋彦 石井正則 大貫勇輔 銀粉蝶 藤木孝 ほか
2013年1月31日(木) 7:00pm シアターBRAVA!
1階B列(1列目)下手
1977年に発表された佐野洋子さんの絵本が原作(未読です)。
様々な飼い主に飼われて100万回死んできた猫が1匹の白猫と出会い、生まれて初めて心を通じ合い、やがてともに命つきてしまう物語。
ちょっぴり切なくビターな大人のメルヘン。
紙芝居の箱のような装置。オルガンやアコーディオンやリコーダーといったアコースティックな楽器で奏でられる音楽。アールデコっぽい衣装やメイク。韻を踏んだセリフ。しりとりになった会話。独特な振付のダンス。絵本から抜け出てきたような登場人物。流れる時間さえ愛おしく感じる舞台でした。絵本の1ページみたいなセットにとってもキュートなお洋服を着た女の子(満島ひかり)が一人。
♪女の子なんて 大嫌いだよ
女の子たちは 猫だったのよ
男の子なんて 大嫌いだよ
鳥でもないのに 高いところが好き
と歌う間にとらねこ(森山未來)登場。「えぇ~っ


ここから、死んでは生まれ変わり、また新しい飼い主に飼われて、死んで、生まれ変わって、を繰り返すとらねこ。
そんなとらねこの生きたり死んだりが、絵本に見立てたような世界で展開されます。
衣装や、細かい装置や小道具の一つひとつがとても凝っていてしかも洗練されていてカラフルでアーティスティック。どの場面を切り取っても絵本の1ページのよう。二次元の絵本をそのまま三次元で観ている感じです。
泥棒は天窓から頭を下にしてぶら下がったまま会話したり、魚は蝶ネクタイに燕尾服で踊るし、箱の中からジャックくんが飛びだしました的にびょ~んと天井まで飛び出す女の子とか。
飼主は王様(今井朋彦)→泥棒(田口浩正、石井正則)→船乗り(田口浩正)→手品師(藤木孝)→お婆さん(銀粉蝶)と変わっていき、ねこが死ぬたびにとても悲しんで涙を流します。
この涙が、たとえば王様はワインボトルから滴るお水だったり、船乗りは透明のチューブからくじらの潮吹きみたいに吹きだす海水だったり、手品師の涙は助手たちが放つクラッカーだったり、お婆さんのはキラキラの紙吹雪の涙だったり。
飼主たちの涙に反して、とらねこは「全然悲しくない」と言い放ちます。「オレは飼主が大嫌いだったから」・・・シニカルで、強がっていて、孤独。孤独なねこ。
二幕になると景色は一変。
緑あふれる森の中で、真ん中に平均台のような通路が1本。
そこに寝そべる「100万回死んだ」有名なねこに、メス猫たちがプレゼントを持って求愛に訪れます・・・このメス猫たちって藤木さんだったり田口さんだったりするのですが、何ともキモかわいい(あ、もちろん銀粉蝶さんはステキでした)。
そんなメス猫たちに見向きもしないとらねこは、自分に無関心な白いねこに興味をもちます。
「オレは『100万回死んだ猫』なんだぜ」と自慢するとらねこに、「じゃあ、あなたは何回生きたの?」と問う白いねこ(満島ひかり)。
この白いねこの佇まいがいかにも気位が高く気まぐれでアンニュイなねこという感じ。
これがきっかけで彼女に気持ちを寄せるようになるとらねこ。
とらねこと白いねこが短い言葉のしりとりで会話を重ねていくシーンが、永遠に続けばいいと思えるくらい好きでした。
短い単語なのに、一つひとつの言葉は他愛ないものなのに、それがとても研ぎ澄まされたピュアな響きを持って重ねられていくことで、二人(二匹だけど)の気持ちが少しずつ近づいて、寄り添っていく心の動きが目の前に広がるような、心震える時間。自然に涙があふれました。
しりとりの中で3回「好き」って言ったね、とらねこくん。
「もう時間・・」と「ん」で終わる言葉を言いかけてその時が近いことを感じさせ、やがて言葉を発しなくなり動かなくなった白いねこ。
そんな彼女を「ねぇ」「ねぇ」と何度も起こそうとするとらねこ。
そしてその死に気づいて、生まれて初めて悲しみを知り、生涯に一度、声を上げて泣くとらねこ。
やがて白いねこに寄り添うように、静かに、再び目覚めることのない眠りにつくとらねこ。
♪読みかけのページに
君の寝息はさみ
いつまでもそこだけ
ぼくは読んでいるよ
静謐で美しいシーン。
いつまでも観ていたいのに、涙で目がかすんでよく見えなくてコマッタ

森山未來くんのすばらしさはこれまでの舞台でも十分知っていますが、身体能力の高さはもちろん、演技も歌もダンスも一流。キュートとシニカル、傲慢と繊細が同居。今この役ができる人が他に思いうかびません。
ねこが、よくあるテンプレートな猫の動きではないのに、すごく猫。とっても猫。
何と言ったらいいのでしょう。もし猫が人間の肉体だったらきっとこんな風に動くのではないかしら、みたいな。
甘さ切なさの混じった歌声もステキ。あと、ボイスパーカッションも難なくこなしていました。ほんとに何でもできるのね。
女の子と白いねこの満島ひかりちゃんもとってもキュート。
前回観た舞台では声を枯らして辛そうだったけど、今回はそんなこともなく、演技も歌声ものびやか。スレンダーで小顔で、未來くんとのバランスもとてもよかったな。
周りの役者さんも藤木孝さん銀粉蝶さんはじめ皆さんドラマティックに歌える人ばかりで、 しかも個性的で、こちらも絵本みたいで楽しかったです。
手品師のアシスタントがやたら美形男子・・と思ったら大貫勇輔さんでした。よく見てたら他にもいろんな場面で踊ってて、当然だけど「死」のダンサーとは全く違った雰囲気のダンス。
とらねこも白いねこも死んじゃって、切なく悲しい結末なのに、ハッピーエンドという気持ちも少し加わって不思議な余韻が残ります。
白いねこに出会うまでは、「100万回死んだねこ」だったとらねこくん。彼女と出会い、心を通じ合い愛し合うことで「100万1回生きたねこ」になったのですね。正しくは、「100万回死んで1回生きたねこ」だったのかもしれませんが。

可愛さにつられて肉球マシュマロ&猫ブローチ買ってしまいましたっ。
カーテンコールの二人もとってもカワイイ

未來くんが上手、ひかりちゃんが下手にはけるのですが、幕の手前で振り返り、それぞれ目を合わせて微笑み合って、客席に一礼して・・。
カーテンコールの時、森の緑の草原に花が咲いているのに気づきました。あれって最初からあったかしら。
これ、あと10回くらい観たかったな。DVD出ないかなぁ のごくらく度



突然のコメント失礼いたします。
この舞台は大好きで、東京で初日から楽まで何度も足を運び、広島の大楽にも行きました。
早くも私の今年のNO.1です。
キャスト、美術、衣装、音楽、台詞、どれもシンプルなのですが、洗練されていてどことなくノスタルジックで素敵でした。
特に第2幕はすばらしく、思い出す度に胸がきゅんとします。
しりとりの台詞は、好き過ぎて覚えました。
しろねこの『もうじかん』の『ん』でしりとりが終わるところなど、3人の脚本家で制作したのに、本当に良くまとまって出来ていると感心しました。
東京の芸術劇場では2日間ほどカメラが数台入っていました。
NHKのBSで放送される予定との話を聞いています。
(もし違ったらごめんなさい)
大楽のアンコールでは♪また繰り返す♪をキャスト全員で歌ってくれて、会場全体が総立ちの大合唱となったのは良い思い出です。
始めたばかりのツイッターもフォローさせていただきます。
今後もよろしくお願いいたします。
レポを読ませていただいて、
またあの不思議な空間にいるような気持ちになりました。
大貫くん目当てで、予備知識は殆どなく観た舞台でしたが、
観終わったときには、いえ、あの小さな家から女の子が出てきた瞬間から、
この空間そのものに魅了されたように思います。
本当に素敵な舞台でしたね。
あの空間はやはりリアルで感じた方が良いとは思いますが、
やっぱりDVD化して欲しいなあ、と思います。
NHKが入っていたという噂は私もききましたので、
きっとそのうちBSで放送されるんじゃないかしら。
再演はきっと先になると思いますので、
(森山くん始めみなさん人気者ですものね)
放送を心待ちにしていようと思いますv
ようこそお越しくださいました。
コメントありがとうございます。
東京で何度もご覧になって、広島の大楽にもいらっしゃったなんて
うらやまし過ぎます。
本当に、きっと何度観ても心をとらえて離さない舞台だったと思います。
私も大好きな作品です。
♪雨が降る 繰り返す
朝がくる 繰り返す
ですね。いいな、いいなぁ~。キャストの皆さんと一緒に歌えるなんて。
カメラが入っていたということは、何かの形で映像になるという
ことですよね。楽しみです。オンエア情報に気をつけておきたいと思います。
情報ありがとうございます。
ツイッターもフォローしていただいて重ねてお礼申しあげます。
こちらからもフォローさせていただきました。
こちらの方こそ、今後ともよろしくお願いいたします。
この作品、大阪は公演期間が短くてチケットが本当に出回っていなくて、
スケジュールがタイトなこともあって、リピできなかったことを
とても残念に思っていましたので、オンエア情報はうれしいです。
音楽や歌詞もとてもステキだったので、もしCDとか出たらぜひ買って
聴きたいです。出ないかなぁ~(笑)。
しっかし未來くんとひかりちゃんのねこ、ほんとにキュートでしたね。
ご無沙汰いたしております。
コメントありがとうございます。
そうだ、hitomiさまは猫お好きでしたね。
この作品、ほんとによかったです。
私は絵本も読んでいないのですが、ジュリーが舞台でされて
いたことも知りませんでした。調べてみます。
上のお二人のコメントにもありますように、今回の作品は
BSでオンエアされるかもしれないようですので、hitomiさまも
機会があればぜひご覧になってくださいね。