2012年12月20日

融け合う6つのアナザワールド イキウメ 「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」


library.jpg浜田信也さん 第47回紀伊國屋演劇賞個人賞ご受賞おめでとうございますぴかぴか(新しい)


イキウメ 
「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」
青の記憶/輪廻TM/ゴッド・セーブ・ザ・クイーン/賽の河原で踊りまくる「亡霊」/東の海の笑わない「帝王」/いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ

作・演出:  前川知大
出演:  浜田信也  盛隆二  岩本幸子  伊勢佳世  森下創  大窪人衛  加茂杏子  安井順平/菊池明明  西山聖了

2012年12月9日(日) 1:00pm ABCホール A列(1列目)センター



今年劇団結成10年を迎えたイキウメの10年目の最後の公演。
「短篇シリーズ『図書館的人生』から選り抜きと新作を織り交ぜてお送りします。」ということでしたので、6本の作品をオムニバス形式で順番に上演されるのかと思っていたのですが、いい意味で予想は裏切られました。

6つの物語が繰り広げられるのですが、並行して展開したり、突然次の物語が舞い降りて来たり。一つひとつの物語の境目が交錯していつの間にか別の物語に移っていたり、時空を超えてまた戻ってきたり。舞台装置も役者さんの衣装もずっと同じなので、知らずに観ている最初は少し混乱するのですが、その6つの物語がひとつの大きな世界を紡ぎ出していて、それぞれが独立した物語だということさえ忘れそうになるくらい。6つ(厳密に言えば図書館という舞台もあるので7つ)の世界の「融合」とでも言えばよいでしょうか。何とも不思議な時間、空間でした・・・あ、「まとめ」ってそういうこと?


本がぎっしり詰まった天井までの大きな書架が何本もある雰囲気の図書館が舞台。
一度入ると出られない?異世界との境目のようにも感じる図書館で、静謐な雰囲気の中に水滴のような静かな効果音が響きます。
ちょっと「海辺のカフカ」を思い出しました。
この図書館で思い思いに本を読んだり探したりしている人たち。誰かの人生が書かれた本を誰かが手にとって読むと、その本の世界、そこに住む人の人生が演じられる、という構成のようです。だから、その人が本を閉じると物語は中断したり。

病院の一室に集められた5人とか、秘密の実験をする男たちとか、投身自殺しようとしている女とか、賽の河原の見張り番の鬼とか、ギクシャクしている夫婦とか、万引きのプロとか、物語の登場人物は様々です。そこに描かれる世界は、「今」はもちろん、過去の記憶だったり、死後の世界だったり、未来の姿だったりするのですが、どれも前川さんの死生観とか輪廻転生に対する考え方が色濃く表れた作品という印象です。

6編の中では「青の記憶」「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」「東の海の笑わない『帝王』」の3編がお気に入り。
自分が「死んでいる」ことを理解できていない人達が、さっきまで月だと思っていた空に浮かぶものが「青い」と知った時の表情が何とも切ない「青の記憶」。
人間は死ぬ時には自分が死ぬことがわかると言いますが、自覚も覚悟もないまま突然その時を迎える人もいるでしょうし、無念を残した人はどうだったのかな、などと彼の人に思いを馳せたりもしました。

「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」では自殺しようとする女性を思いとどまらせる解決策ハッとしたり、「東の海の笑わない『帝王』」では、「言葉にしないと伝わらない」というメッセージがとても響きました。たとえ愛し合っている者同士でも。
イキウメの役者さんは、私はまだ顔と名前が一致する人が限られているのですが、浜田信也さんはワカル(笑)。感情が言葉ではなく体の動きに出てしまうという、何とも奇妙な動きがコミカルで楽しかったです。夫の気持ちを計りかねて悩む妻役の人がこれまでのイキウメの公演で観たことのない女優さんだなぁと思っていたら、ナイロンの菊池明明さんでした。

6つの物語が切り替わるごとに、当然のことながら役者さんたちの役も瞬時に替わるのですが、前述したように衣装やメイクを変える訳でもなく、セットも図書館のままなのに、ちゃんと前川さんのつくるそれぞれの世界を描き出す・・・これってイキウメという劇団のチカラであり、(失礼ながら派手さはないけれど)役者さん個々の力量ハンパないなと感じました。



来年5月の(下)には池田成志客演ですって のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1032 わーい(嬉しい顔) vs 1034 ふらふら)


posted by スキップ at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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