
昼の部は3等席 3階12列が3等席の最前列。御園座の3階は初めてだったのですが、花道も半分くらいまで見えてなかなかグッド

中村勘太郎改め 六代目中村勘九郎襲名披露
第四十八回吉例顔見世 昼の部
2012年10月6日(土) 御園座 3階12列上手
一、八重桐廓噺 嫗山姥
出演: 中村時蔵 坂東彌十郎 中村梅枝 坂東新悟 片岡亀蔵 中村扇雀 ほか
昔話のヒーロー・金太郎こと坂田金時誕生にまつわる近松門左衛門作の人形浄瑠璃が原典。
人気花魁だった八重桐(時蔵)は紆余曲折の末、今は紙衣を着て流しの恋文代筆業をしながら夫・坂田蔵人時行(扇雀)の行方を捜しています。
とあるお屋敷から聞こえてきた夫の声を聞きつけて、腰元お歌(亀蔵)に取り入って中に入れてもらいます。今は煙草売りに身をやつした夫は、仇討ちの相手を探すために出奔したのだと告げますが、「仇討ちは妹の白菊さん(梅枝)が果たしました」とそれを聞いた蔵人時行は・・・。初見でした。
ストーリーも全く知らなくてイヤホンガイドも聞かないので、「仇討ちは白菊さんが既に討っている」と揶揄されて、いきなり切腹する蔵人の両側で「しぇ~っ」と驚く八重桐、白菊と一緒に私も座席で「ひょえ~」とびっくり

かっ切った腹から吹き出した血を飲まされて、「わが魂魄はお前の身に宿り~」となった八重桐は金太郎を身ごもり、山姥となって悪人どもを相手に大立ち回り・・・って。怒涛の展開というか、歌舞伎らしい荒唐無稽というか。いやはや。
時蔵さん八重桐が沢瀉姫(新悟)に廓話を聞かせる時の、語りはなくてもそれ以上に雄弁でしなやかな手の動きに見惚れました。
そして後半は一転、隈取施して登場し、男声で、灯篭を持ち上げるくらいの怪力ぶりを発揮して大立ち回り。階段上でぶっ返って見得を切る・・・実にカッコよかったです。
梅枝くん白菊のきりりとした美しさ、亀蔵さんお歌の陽気なひょうきんぶりも印象的で、思っていた以上に楽しめた一幕目でした。
二、けいせい倭荘子 蝶の道行
出演: 尾上菊之助 中村七之助
昨年5月に明治座花形歌舞伎で市川染五郎さんと中村七之助くんペアで観て、今年7月には文楽でも観ました(文楽の時は今回同様、「伊勢音頭恋寝刃」も併演だったのだと今気づきました)。
染-七も夢のように綺麗だったけど、菊-七もほんとに美しい並びだなぁ。
今回は助国が菊之助くんで七之助くんが小槇でしたが、この二人なら役替わりもできそうです。衣装は明治座の時の和モダンな感じのものより今回の方が好きでした。
お正月の着物で明るく楽しげに舞った後、白い着物に早替わりした二人が業火に苦しみ、まず助国が動けなくなり、やがて小槇が重なり合うように息絶える、静謐でとても切ないのに一幅の絵のように美しい幕切れでした。
そしていつもながら、菊之助くんも七之助くんも見事な海老反り。(そこ?)

出演: 中村勘九郎 片岡仁左衛門 尾上菊之助 中村梅枝 市川左團次 尾上菊五郎 ほか
万野に菊五郎さん、喜助に仁左衛門さんという大御所がつき合ってくださる襲名披露演目。
勘九郎くん初役で挑む福岡貢。
忠義一途で、「心ならずも」人を斬ってしまって、そこから歯止めがきかなくなって殺戮に走ってしまう・・・という部分で、うーん、何でしょ、その心に潜むある種狂気のようなものが薄目だったかなぁ。若さの迸りというか、若気の至りのように見えなくもなかったです。だから、奥庭であの丸い障子を突き破って相手を斬りながら出てくるところのゾクゾク感とか空恐ろしさがあまり伝わって来ませんでした。あの場面って、「盟三五大切」の五人斬りとか「夏祭浪花鑑」の長町裏の場のように、それまで耐えに耐えていた善良な心が狂気に制されて暴発してしまう、というのキモのような気がするのですが、そのあたりがいささか希薄だったかな、と。
台詞はしっかり、殺陣の形もとても美しいので、年齢を重ねて男の色気もにじみ出るようになった頃もう一度観たいと感じさせる貢でした。
今回の配役で一番楽しみにしていたのは菊五郎さんの万野。
意地悪で嫌味なおばさんを、あまりデフォルメし過ぎず、だけど強烈な威圧感、存在感を放っているところはさすがです。ほんとヤな感じだったもん(笑)。
一方、仁左衛門さんの喜助は贅沢すぎる配役ですが、いかにも賢こくて如才なさそう。ちょっとオトコマエ過ぎるとは思いますが、所作もいかにも裏方の料理人という雰囲気で、もっとたくさん観たいなと思わずにはいられませんでした。
貢への心にもない愛想づかしがいじらしいくらいだった菊之助さんのお紺。美しさも声も際立っていました。梅枝くんはお岸でこの幕でもやっぱりよかったし、お鹿ちゃんは何と左團次さん。チャーミングでした。
それにしても、あんなにたくさん殺しておいて、何となくめでたしめでたしという感じで終わるのはいかがなものか、とこの演目を観ていつも思います。
最後に喜助が登場して、刀は本物だと聞かされ、そこで初めて灯りに照らして本物だと確認する貢。いやいやいや、最初に確認しましょうよ(爆)。


画像は、私がチョイスしたかぼちゃのモンブラン(季節ものにヨワイ)。
今回の襲名披露公演の特別ポスター 2ポーズもいただいて、本当にありがとうございました

昼の部は上から見てもちょっと空席目立っていて心配でした のごくらく地獄度



