公開50周年を記念して、昨年「新リマスタリングされた映画を全編を上映し、音楽部分を生のフルオーケストラで演奏」という企画が発表されました。2011年から2012年にかけて、ロサンゼルス・NY・シカゴ・シドニー・ロンドンと公演され、今秋、日本公演の指揮者に選ばれたのは、“バーンスタイン最後の弟子” 佐渡裕さん。
佐渡裕 指揮 「ウエスト・サイド物語」
シネマティック・フルオーケストラ・コンサート
指揮: 佐渡裕
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団
映画 「ウエスト・サイド物語」
監督: ロバート・ワイズ/ジェローム・ロビンス
製作: ロバート・ワイズ
音楽: レナード・バーンスタイン
出演: ナタリー・ウッド リチャード・ベイマー ジョージ・チャキリス リタ・モレノ ほか
2012年9月24日(月) 7:00pm オリックス劇場 1階12列センター
「ロミオとジュリエット」をベースにした映画「ウエスト・サイド物語」はずい分若い頃に観た記憶がありますが、その音楽とともにお気に入りの映画の1本。
しかも指揮が佐渡裕さんなら聴き逃す訳にはいかないととても楽しみにしていた公演。そしてそれは期待に違わぬすばらしいものでした。開演前には佐渡さんのプレトークがありました。
『ウエスト・サイド物語』 の公開が1961年。その年にバーンスタインは初来日しています。
その時、副指揮者としてついていたのが小澤征爾さん。
日本での公演という事で、日本の作曲家の曲が採り上げられたそうですが、それが黛敏郎さん。
その黛さんが初代司会者を務められた「題名のない音楽会」の現在の司会者は佐渡さん。
そして、佐渡さんが生まれたのもその年、1961年。
不思議な縁を感じます、と。
通常のコンサートスタイルで、ステージ上には指揮者とオーケストラ。ホリゾントの部分に大きなスクリーンが下がっていて、そこに映画が映写されます。
冒頭のOvertureは映画の映像はまだ流れていない部分なので、コンサートホールで「ウエスト・サイド物語」の名曲の数々を聴いている感じ。この部分だけでもかなり感動しました。
門外漢なので専門的なことはよくわからないのですが、映画のセリフや歌、踊りに合わせてオーケストラの生演奏を合わせるのは、佐渡さんが「東京フィルハーモニーの職人芸」とおっしゃっていましたが、まさしく。
指揮も、自分の思い通りのテンポではなく、決められたテンポで画面とぴったりシンクロさせなくてはならないのはどんなに大変なことが想像もつきません。
指揮台の奥にはモニターがあって、映画の映像とともに光の縦線が左から右へと移動していました。カウントを取る役割でしょうか。
また、佐渡さんは映画の音声を聞き取るためか左耳にイヤホンをされていました。
プレトークで佐渡さんが「どこで拍手したらいいかわからないかもしれませんが、皆さんいつでもお好きな時に拍手してください」とおっしゃって、演奏の区切り区切りに拍手が起こるのですが、それは映画の場面の区切りやダンスの決めポーズともリンクしていて、まるでミュージカルの舞台を観ていて役者さんたちに拍手を贈っているような不思議な感覚でした。
映画が進んでいくうちに、生演奏であることを忘れて画面に見入ってしまう場面もしばしば。
演奏がそれだけ違和感なく映画と合っていたということだと思いますが、映画そのものも本当にすばらしい作品だと再認識。
音楽はもちろん、歌やダンスも、映像のカットワーク、そして普遍的なストーリー、全く古さを感じません。CGもデジタルもない時代にチカラワザのクオリティ。役者さんも粒揃いです。
エンドロールの出し方とか、ほんとにおしゃれでスタイリッシュ。
そしてエンドクレジットの最後まで生演奏。贅沢すぎます。
そういえば、自分の記憶からすっかり抜け落ちていて今回映画観て気づいたこと。
トニーは最初決闘に行くつもりはさらさらなかった(「素手でやれ」ということを皆が守ると思っていた)のに、「あなたは行かなくてはだめ。あなたが止めに行って」とマリアに言われたから行ったのですね。それであんな悲劇に・・・トニーが行かなくても悲しい事件は起こったであろうとは思いますが、マリア、あんなこと言わなければ愛する人が自分の兄を殺してしまうようなことになならなかったのでは
それにしても何て名曲ぞろいなんでしょ。
「トゥナイト」「マリア」「クール」を始め、♪I like to be in America とアニタたちが歌い踊る、大好きな「アメリカ」など、ほとんどの曲を歌えることに自分でもびっくり。そんなに何度も観た記憶はないのだけれど。
オーケストラ観たり映像観たり、忙しくて困ってしまいます。
こんなことができるなんて。
東フィルの演奏もすばらしかったし、佐渡裕さんはほんとに音楽の神様に愛されている人だと思いました。カーテンコールはスタンディングオーベーションで拍手の嵐。佐渡さんは涙ぐんでいらっしゃいました。
ロビーには「ウェスト・サイド物語」の歴代ポスターや新聞、雑誌の記事などの展示が。
オリックス劇場になってからは初めてでした。
ロビーや客席シートはもちろん綺麗にリニューアルされていましたが、座席の基本構造は厚生年金会館の時のままで建て替えた訳ではなく、リノベーションだったようです。
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