2012年05月16日

タカラヅカ版近松ワールド 「近松・恋の道行」


chikamatsu.jpg宝塚歌劇で近松といえば、「心中・恋の大和路」という名作がありますが、こちらもそれに負けないすばらしい舞台でした。


宝塚歌劇花組公演 上方絵草紙 「近松・恋の道行」
脚本・演出: 植田景子
出演: 愛音羽麗   実咲凜音   華形ひかる  桜咲彩花  
汝鳥伶 ほか 

2012年5月13日(日) 2:30pm 宝塚バウホール 9列上手



この作品は、近松門左衛門の「曽根崎心中」や「生玉心中」をもとに植田景子先生が書いたオリジナルですが、脚本もそれを演じる役者さんたちも完成度が高く、とても見応えのある作品となっていました。

幕開きは竹本座の人形浄瑠璃「曽根崎心中」の舞台の場面から。お初・徳兵衛の人形振りが美しく静謐な雰囲気で、一気に近松ワールドに突入です。徳兵衛の人形を演じた柚香光さんの凛とした美しさに目がひきつけられます。物語は、茶碗商の跡取り・嘉平次(愛音羽麗)と遊女・おさが(実咲凜音)、おさがの妹分のような遊女・小弁(桜咲彩花)と行商人・清吉(華形ひかる)のラブストーリーがデュアルで展開します。
おさがの身請け金を工面しようと友人の長吉(瀬戸かずや)に大名へ高価な皿を売ってもらうことにした嘉平次には、騙され、侮辱に耐えられず長吉を殺してしまい、ついに進退極まり・・・という悲恋に対し、赤穂浪士・原惣右衛門の愛人の娘であった小弁はと原家の足軽の息子の清吉は、一度は心中を決意して川に飛び込むも命拾いして、赤穂浪士の遺族の援助に尽くす寺坂吉右衛門(紫峰七海)の尽力もあって幸せに結ばれる、という対照的な二組のカップル。

そこに、近松門左衛門(夏美よう)と偉大な父の影に屈折した思いを抱く次男の鯉助(春風弥里)の葛藤や、嘉平次には父親(汝鳥伶)の決めた許婚おきは(華雅りりか)がいて、おきはに思いを寄せる嘉平次の目の不自由な弟・幾松(鳳真由)自分の目が治らない方がいいとこっそり薬を捨てていたり・・・というサイドストーリーも加わります。

これらのお話がテンポよくわかりやすく進むので時間が短く感じられるくらい充実していました。

愛音羽麗さんは、思慮も分別もある嘉平次がおさがへの思いと友人の悪意からどうにもならなくなり・・という悩める嘉平次を細やかに演じています。最初に客席通路から傘をさして登場した着物姿の美しさにうっとり。声もよくて、特に響きわたる歌唱にも聴きほれました。
いや、そうは言っても嘉平次、人がいいというか、簡単に信用しすぎでしょ。近松モノに出てくる男たちは、何でみんなこんなに考えが甘いのかしら。

おさがは次期宙組トップ娘役就任が決まっている実咲凜音さん。芝居心があって美しさも色っぽさも十分。まだ若いのにとても落ち着いた舞台です。歌もお上手。
「カナリア」を観た時にも感じましたが、綺麗なんだけどなぜだか目に焼きつかないというか印象が薄い。何なんでしょ。タイプは少し違いますが、星組の早乙女わかばちゃんのように、どこにいてもパッと目立つ華やかな個性を身につけていただきたいところです。

主要キャストはもちろん、嘉平次の父親役の汝鳥伶さん、柏屋お香の光あけみさんといった人たちが実によくこの近松浄瑠璃の世界観を出していて、前日に松竹座で梅川・忠兵衛の「封印切」を観たばかりでしたが、歌舞伎とはまた違ったタカラヅカ版近松ワールドを存分に楽しむことができました。


竹本座の前に役者さんたちの幟が立ち並ぶ場面。「片岡仁左衛門」の文字に目が釘づけ目 のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 925 わーい(嬉しい顔) vs 927 ふらふら)
posted by スキップ at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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