2012年04月12日

新橋演舞場 二月大歌舞伎 夜の部

IMG_5318.jpg昼の部が3時50分終演、夜の部は4時30分開演と、ほとんど時間がないじゃん!ってことで、入れ替え時間も外に出ずに演舞場の中にいました。
劇場でお目にかかったブロガーさんやツイッターのフォロワーさんたちとお話したり、3階まで上がってお持ち帰り用のお目出たいやき予約したりしているうちに時間はあっという間に過ぎました。

中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露
二月大歌舞伎 夜の部

2012年2月19日(日) 4:30pm 新橋演舞場  1階18列センター


一、御存 鈴ヶ森
  出演: 中村吉右衛門  坂東十郎  中村錦之助  中村勘三郎 ほか


昼の部でお目にかかったcocoさんに、「『鈴ヶ森』って初めて観るんだけどイヤホンガイドいるかな?」とお尋ねしたりしていたのですが、幕が開くなり思い出しました。去年、こんぴら歌舞伎で観たことを。勘三郎さんの白井権八が登場した時、ちょっと驚きました。
齢56歳を数える勘三郎さんが、何とも瑞々しい世慣れぬ前髪の少年としてそこに現れたから。
海千山千の雲助たちの中に一人置かれて大丈夫かしらと心配になるくらい綺麗な若衆ながら、きりりと引き締まった表情、相手を真っ直ぐに見据える視線、どこか影を感じさせる雰囲気、片時も隙を見せることのない所作・・・白井権八の、若いながらもこれまでの人生が透けて見えるかのようでした。

これに対する幡随院長兵衛は吉右衛門さん。いかにも器の大きな、男気のある侠客で、ぺらんめぇ調の台詞もピタリと決まります。それでいて地獄を見て来たような厳しい雰囲気も漂わせて、これも絶品。この白井権八にこの幡随院長兵衛あり。まさに極め付けの二人といった印象です。
濃密な空間、薫り立つ時間、緊張感極まる演技。「鈴ヶ森」とはこういう芝居だと示していただいた気分です。
とかくいろんな噂があって長い間共演が途絶えていたお二人。こんな名舞台、せひともこれからも楽しませていただきたいと願うところです。


二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上

我當さん、三津五郎さん、十郎さん、芝雀さん、秀太郎さん、吉右衛門さん、仁左衛門さん、東蔵さん、扇雀さん、錦之助さん、橋之助さん、福助さん、そして七之助くんに勘三郎さん。
幹部俳優総出演の賑々しい口上ですが、皆さんお父様の勘三郎さんと親しく勘九郎くんを子ども頃から知っているということで、和気藹々、とても温かい雰囲気にあふれた口上でした。
口火を切るのも最後の締めも勘三郎さん。父として、我が子の襲名を喜び、心から盛り立てようとしていることが強く感じられました。
仁左衛門さんが「勘三郎さんが一昨年来の体調不良のためこの襲名披露に間に合わなかったかもしれないが無事に出られてよかった」とおっしゃっていましたが、考えただけでも恐ろしい。ご無理なさっているのかもしれませんが、あの口上の場に勘三郎さんがいないなんて考えられません。

福助さんの平伏した姿勢がとても綺麗でした。まっすぐに伸びた背筋をほんとうに床すれすれまで低く下げて保っていて。

そして勘九郎くんは、「父が46年間名乗った勘九郎を六代目として襲名することになりました。感謝の言葉しかありません。父は先ほど『大したことない』と申しましたが大したことあります。勘九郎は憧れの名前でした。これからも弟と手を携えて精進し参ります」ときりりと。


nigatsukagami.jpg三、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子  
  出演: 中村勘九郎  中村亀蔵  中村小山三 ほか


昼の部の「土蜘」がお父様もお祖父様(先代勘三郎さん)も勤めたことのない初役だったのに対し、 この「鏡獅子」は勘三郎さんも母方のお祖父様・中村芝翫さんも当たり役のひとつ。勘九郎さん自身も2度目の挑戦です。

前半の弥生は、たとえば同じ花形世代の菊之助くんあたりと比べると、やわらかさとか華やかさには少し欠ける感じはしますが、初々しく品もあって、一手一手をきっちりと踊っているように見えました。扇づかいもさすがにお上手だし形も綺麗ですが、どちらかといえば後ジテの獅子の精に本領発揮といったところでしょうか。あの一旦登場した花道を後ろ向きに全速力で揚幕に戻るところは、あまりの速さと迫力に客席からどよめきが起こりました。ほんとにスゴイ。毛振りはとても勢いがあって綺麗な軌跡を描く毛先はいつも上を向いていたのにもいたく感動。凛々しい隈取も本当によくお似合いです。

小山三さんが老女・飛鳥井で出ていらして緋色の着物もお似合いでした。それこそ生まれた時からずっと見守ってきた勘九郎くんの襲名。うれしいだろうなぁ。
この飛鳥井がいやがる弥生の手を引く場面の舞台写真がほしかったのですが、昼の部ではあった舞台写真が夜の部では軒並み売り切れになってびっくり目 折れたり失くしちゃったりしたら嫌だから最後の幕間に買おうと思っていたのが裏目に出ました。

そして、高見を勤める七之助くんが勘九郎くんに向ける凛とした真摯な眼差しにかなりヤラレたのでした。


四、ぢいさんばあさん
  出演: 坂東三津五郎  中村扇雀  坂東巳之助  坂東新悟  中村橋之助  中村福助 ほか


この演目は、2008年の南座顔見世で、仁左衛門さんの伊織と玉三郎さんのるんという超美形&キュートカップルで観ていたので、どーかな~と思っていたのですが、
いやいや、好ましい舞台でした。ハッピーエンドとはいえ切ないお話だなぁ。

三津五郎さんは元々リアルなお芝居をする役者さんだと思っているのですが、今回福助さんもやり過ぎ感がなくてよかったです。(37年後の老け役の時は少しつくり過ぎかなぁと思うところがあったものの)。
そして橋之助さんの下嶋が、ほんとにイヤな奴なのだけれど、そのイヤな中に鬱屈した心理が見えるようで、少しだけ気持ちを寄せることができました。もしかしたら伊織は、そんな下嶋と自分の中に近親憎悪ともいうような、同じものを嗅ぎ取っていたのではないかなぁ、と感じたりもして。


IMG_5319.jpgお祝いムードあふれるロビーには襲名を祝って贈られた約160枚という「飾り絵馬」が飾られていました。

これから各地のご贔屓筋からのものを加えながら襲名披露興行の劇場を一緒に回るのだとか。





IMG_5321.jpg知っている人やお店の名前をたくさんお見かけしましたが、やっぱこれでしょ。
勘九郎くんと竜也くん。
また二人が共演する舞台も観たいなぁ。




勘九郎くん 襲名ほんとうにおめでとうございます のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 909 わーい(嬉しい顔) vs 912 ふらふら)
posted by スキップ at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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