2011年12月28日

當る辰歳 吉例顔見世興行 昼の部

IMG_5111.jpgこれを観ないことにはお正月が来ないんじゃない?と思えるくらいな顔見世。今年は日程的にキツくて、昼夜通し観劇となりました。

南座新装開場二十周年記念
當る辰歳 吉例顔見世興行 
東西合同大歌舞伎 昼の部

出演: 坂田藤十郎  尾上菊五郎  片岡我當  
    片岡秀太郎  片岡仁左衛門  市川左團次  
    中村時蔵  坂東三津五郎  片岡孝太郎  
    片岡愛之助 ほか

2011年12月23日(金) 10:30am 京都南座 1階15列センター


昼の部は毎年ご招待いただいている貸切公演で、今年もありがたいことにお弁当つきで楽しみました。「寿曽我対面」
歌舞伎の様式美にあふれた一幕で幕開きから色彩が溢れて華やか。片岡我當を筆頭に、秀太郎、進之介、孝太郎、愛之助と松嶋屋一門中心の上方版「曽我対面」でした。

我當さん工藤祐経は冒頭、合引に腰掛けていらっしゃいましたが、階段を降りる時はいかにも膝がお辛そうで観ているこちらもハラハラ。しかしながら朗々と響く声や度量の大きさを感じさせる風格はさすがで、台詞に独特のリアリティがあって、この物語を単に様式美のみではないドラマに感じさせました。

この工藤を仇と狙う曽我十郎・五郎兄弟は片岡孝太郎と片岡愛之助。愛之助さんの五郎は隈取も美しく血気盛んで勇壮な雰囲気もナカナカ。ただ、ここ一番、と大声を張る時に声が割れて聞こえたのと、花道で手を交差させてじっと待つポーズ(何ていうのかな?)の時、指先まで力が入っていないように見えたのがちょっとザンネン(前に別の役者さんで観た時、指がつるんじゃないかしらと思うくらい力入ってるのを目撃したことがあるから)。1ヵ月の興行も終盤でお疲れモードだったのかな。今回初役ということですので余裕もなかったのかもしれません。今後に期待!

印象的だったのは、上村吉弥さんの大磯の虎と、中村壱太郎くんの化粧坂の少将。一方はきりりと風格のある美しさ。そして他方は初々しい可愛らしさ。歌舞伎の女方の二つのあり方とともに、この二つの役の対照もきちんと描かれていると思いました。衣装も美しくて、二人が後姿で打ち掛けを広げてキメるところなんて、ほんと眼福。


「お江戸みやげ」
地方から行商で江戸に出てきたお辻(坂東三津五郎)とおゆう(中村翫雀)。何ごとにも締まり屋でお金にもシビアなお辻がふとしたことから役者の阪東栄紫(片岡愛之助)に惚れ込み、その窮地を救うために汗水たらして稼いだお金をすべて差し出してしまう、という人情芝居。とても楽しめました。

おゆうがすすめるお酒や料理、お賽銭まで「いくら?」と確認するような締まり屋でしっかり者のお辻が、お酒が入った上のこととはいえ、栄紫のために全財産を投げ打つ姿はおかしいやら切ないやら。私も含めて、お芝居が好きな人は役者さんに対してそんな思いを抱くことって多かれ少なかれあるんじゃないかな。それができるかどうかは別として。一文なしになった帰途、湯島天神の境内で、追いかけてきた栄紫からせめてものお礼にと引き裂いて渡された長襦袢の片袖を大事そうに抱きしめ、「これがあたしのお江戸みやげさぁ」と微笑むお辻にエールを送りたくなりました。
三津五郎さんは4月にも演舞場でこの役をされたそうですが、私は初見でしたので、最初はかなり意外な気がしました。とりたてて美人でも色っぽくもない(失礼!)お辻さんですが、純粋に栄紫を思ういじらしさや、所持金をすべてなくしてもさっぱりしている潔さに共感できる、血の通った人間像になっていて、さすが芝居巧者の三津五郎さんだと感心しました。そして、そばにいる翫雀さんおゆうのおおらかさにもまた、心和まされるのでした。

若い人気役者で「色男、金と力はなかりけり」を地でいくような栄紫は愛之助さんにぴったりのハマリ役。色っぽいし、お辻がひと目ぼれするのも納得です。
坂東竹三郎さんの文字辰。竹三郎さんといえば、「引窓」のお幸のように涙を絞られる役も絶品ですが、実の娘をお金持ちのお妾さんにして楽をしようとする欲深くて冷酷な文字辰が、憎まれ役で実際イヤなオンナなんだけど何だかカッコよく見えました。
もう一人、いかにもお酒好きの陽気な役者さんで、でも華やかで美しい上村吉弥さんの市川紋吉、ステキでした。
中村萬太郎くんと子役ちゃんの角兵衛獅子の兄弟もカワイかったな。


「隅田川」
昼食後にこの演目はキツイ、と事前に数々撃沈情報を聞いていて、お弁当食べた後メガシャキ一気して臨んだ演目・・・でも寝なかった。私、エライ(ってそんな低レベル?)
いやもとい。踊りのことはよくわからないし、イヤホンガイドも借りなかったのでストーリーも細かくは理解できないのですが、坂田藤十郎さん踊る母親がさらわれてしまったわが子を探してはるばるやって来て、やっと出会えた時にはその子はすでにこの世にはなかった、という悲嘆がひしひしと伝わる舞踊劇でした。悲しみと紙一重の狂気を演じる(踊る)藤十郎さんが凄まじくて、ほんとに母その人のように見えてくるから不思議です。


「与話情浮名横櫛」
昼の部の「待ってました!」はこの演目でしょうか。
以前に何度か観たことがあって、前に観たのは仁左衛門さんの与三郎に玉三郎さんのお富だったかなぁ、と後で番附を見たら、その後に海老蔵与三郎、菊之助お富というのも観ていました(笑)。

仁左衛門さんの与三郎は、姿形のよいのは万人の認めるところですが、細やかな芝居が行き届いていて、「生きた」与三郎と感じられるところがやはりタダモノではありません。
若旦那の頃の品よくはんなりした雰囲気と切られ与三となってからの世を拗ねた感じの落差も鮮やか。見染の場から年月を経て花道から登場するところでは、顔こそ傷を隠すためほっかむりをしているけれど、反り返るように背筋を伸ばして花道をつかつか歩く姿はその後の流転の人生を感じさせます。有名な、「え、御新造ささんぇ、おかみさんぇ、お富さんぇ、いやさ、これ、お富、久しぶりだなぁ」という台詞も、普段なら、「キタっ!」と思うところですが、芝居の流れから自然に入って行ったので最初はその台詞だと気づかなかったくらいです。源氏店の場で蝙蝠安がお富と話している間、外で待っている時、所在なげに石を蹴ったりしている様がまたカッコよく、やんちゃな感じも、元は育ちのよいおぼっちゃまな感じも漂わせて何ともカワイイんだな。
序幕では、鳶頭の金五郎(三津五郎)と私たちの席のすぐ横の上手通路を歩いてくださって、にこやかな笑顔を至近距離で堪能できて眼福でございましたムード

相棒の蝙蝠安は今回は初役の尾上菊五郎。
菊五郎さんは与三郎もお富もこれまで演じたことがあって、蝙蝠安と合わせて三役演じた役者さんは初めてなのだとか。顔見世だから、相手が仁左衛門さんだからと自ら率先して引き受けられたそうですが、背中を丸めてガニマタで歩く汚れ役。これがあの菊五郎さん?と驚くくらい卑しい感じもハマっていて(笑)、さすがの力量を見せていただきました。源氏店から帰る時、与三郎とのやりとりは弁天小僧と南郷力丸を思い出してニヤリ。
お金を分ける時、「俺も京都に来たら金がいる」とおっしゃっていました。菊五郎さんってばわーい(嬉しい顔)

仁左衛門さんと時蔵さんのカップルはこのところよくお見かけするように思いますが(最近では七月松竹座)、ほんとによくお似合いです。お風呂上がりのお富さんの洗い髪とか客席に背中を向けてお化粧をする姿とか、ほんとに女の人以上に色っぽい。ちょっと崩れた感じとか気風のよさとか、見染の場よりも源氏店の方が断然「ニン」のように思いました。番頭藤八の松之助さんの好演も印象に残りました。

物語は、お富を囲っていた多左衛門がお富の実の兄とわかり、急転直下。
仁左衛門さん与三郎が時蔵さんお富を抱いて「もう離さない」って、きゃ~揺れるハートなハッピーエンドでした。

IMG_5108.jpg昼の部はムンパリさんとご一緒させていただきました。短い幕間にもあれこれお話できて楽しかった!ありがとうございました。

今年のご招待のお弁当は花萬のこちら。
おしゃべりしながらあんまりじっくり味わうことなくパクパク完食しちゃった のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 867 わーい(嬉しい顔) vs 869 ふらふら)
posted by スキップ at 22:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この時期のスキップさんの感想を楽しみにお待ちしてます♪

今年もお弁当付きですね!いいなぁ♪

スキップさんの年中行事を読ませてもらうことでいつも勝手に追体験させていただいてるので(笑)

来年も楽しみにしております!
Posted by sakuraya at 2011年12月29日 21:42
♪sakurayaさま

ありがとうございます♪

顔見世は演目も多く時間が長いので体力勝負(笑)みたいな
ところがありますが、普段関西ではめったに観られない役者さんや
演目が並ぶので私もとても楽しみにしています。
もちろんお弁当も(爆)。

来年・・もがんばります(^^ゞ
Posted by スキップ at 2011年12月29日 22:03
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