2011年05月22日

亀ちゃん狐にキュン 染ちゃん八右衛門にドキッ!

meijiza.jpg明治座で歌舞伎が上演されるのは16年ぶりなのだとか。
若手花形の勢いのある熱気あふれる舞台で、昼夜ともとても楽しめました。

明治座 五月花形歌舞伎 昼の部
5月14日(土) 11:00am 明治座 1階2列センター

一、義経千本桜 川連法眼館
市川亀治郎宙乗り狐六方相勤め申し候
出演: 市川亀治郎  市川門之助  中村亀鶴  上村吉弥  市川染五郎 ほか

二、けいせい倭荘子 蝶の道行
出演: 市川染五郎  中村七之助

三、恋飛脚大和往来 封印切
出演: 中村勘太郎  中村七之助  上村吉弥  片岡亀蔵  市川染五郎 ほか



「義経千本桜 川連法眼館」
私が初めて観た「四の切」が猿之助さんのもので、歌舞伎も見始めの頃だったので強く印象に残っていて、以来すっと狐忠信は猿之助さんのイメージ。
その澤瀉屋正統の「四の切」を受け継ぐ亀治郎さんの狐忠信は、随所に猿之助さんの面影を残しながら、今の亀治郎さんらしさも強く出ていて、これが松竹本興行では初演ということですが、もう立派な持ち役という印象でした。

亀治郎さん特有のメリハリの効いた演技で、颯爽と登場する佐藤忠信の武将らしさと、初音の鼓を親と慕う源九郎狐のかわいらしさ、いじらしさの演じ分けが際立っていました。
特に源九郎狐は本当にかわいい。あんな仕草、表情を見せられては義経でなくとも鼓を与えたくなるというもの。狐ことばもとても自然で、お得意の早替わりは実に鮮やか。いろんなところから引っ込んでは登場する狐ですが、実に軽々としていて身体能力の高さが伺えます。あの百廻りの回転のスピードには目を見張りました。
義経から鼓を持ち帰ることを許されて、喜びにあふれたパッと明るい表情で「うれしやな~」と言うところなんて、抱きしめたいくらいでした(笑)。見た目にも楽しい荒法師たちとの立ちまわりの後、鼓を手に狐六方の宙乗り。
この明治座の宙乗り設備は猿之助さんのために作られたものだそう。なるほど、ワイヤーレールとか、宙乗りが入っていく箱とかあまり目立たないようになっていて、いつも見るのとは違った工夫がされているようでした。亀治郎さんの宙乗りはこれまでにも何度か観たことがありますが、ほんとに躍動感があって、特にこの源九郎狐は、狐六方も鮮やか、喜びを全身で表現していて、観ているこちらも笑顔になるような宙乗りです。最後に桜吹雪をビュ~っ浴びて気持ちよさそうでした。

その源九郎狐をいつまでもじっと見送っていた義経は染五郎さん。
美形の悲劇のヒーローがよくお似合い。少し線が細い印象はありますが、舞台に登場するだけで華やかで美しくて品があって、上に立つ者のカリスマ性を感じさせながらやがて訪れる哀しい運命を予感させるように儚げで、お手本のような義経像でした。


「封印切」
梅川・忠兵衛を中村屋兄弟で観られるとは。
勘太郎くん初役の忠兵衛。大熱演でしたが、良くも悪くもいっぱいいっぱいという感じを受けました。忠兵衛という人が元々切羽つまった人だからこれでいいのかもしれませんが、時々上方ものであることを忘れるような・・・というか、歌舞伎であることさえ忘れてしまいそうになることがありました。私が山城屋さんの上方色濃い「封印切」を何度も観ていることもあるかもしれませんが、江戸の若手ばかりで上方のあの雰囲気を出すのはかなり手強かったでしょうか。芝居全体のテンポも早かったのかな?
梅川と二人いちゃいちゃする場面はとてもラブラブで微笑ましく、それだけに一層その後の悲劇が際立ちます。「封印切」は私はどちらかといえば「ええい!」と自分で切る方が好きなのですが、今回は誤って切れてしまったというパターン。でもその切れてしまった時の、勘太郎忠兵衛の声に出さない「しまった!」「えらいことしてしもた」という何とも哀しげな表情は見モノでした。それにしても、藤十郎さんのご指導ということですが、声といい所作といい、驚くほど勘三郎さんに似ていると感じる時があります。

七之助くんの梅川は本当に綺麗。あのうす紫の着物がほんとによく似合います。昨年平成中村座でも観ましたが、梅川、何だか大人になっていました。一途に忠兵衛を想う中に、自分の運命を受け容れる覚悟を持った、凛としたものを感じる梅川でした。

梅川さんを呼びにくる仲居さん役で小山三さん登場。客席からは温かい拍手と笑いと、「小山三っ!」という大向うもかかっていました。

そして染五郎さんの八右衛門。悪役フェチのワタシ的には、昼の部のベスト(笑)。
ちょっとカッコよすぎるのと愛嬌がありすぎて、鼻つまみの八っつぁんには見えないところが玉にキズですが、上方言葉も板についていて、早口でまくし立てるところなんて、実に気持ちよさそうでした。「総スカンの八っつぁんやけど、たったひとつだけ好かれるもんがあるんや。何やわかるか?わかるか?」「金や~」っていう時のどや顔わーい(嬉しい顔)
このあたりは日々アドリブも増えているようで、また観たかったなぁ。
一転して忠兵衛をじりじりと追い詰めていくところは厭らしさも十分出ていて、八右衛門のダーティぶりGood job!
どちらかといえば忠兵衛役者といえる染五郎さんですが、八右衛門、ハマリ役かも。


「蝶の道行」 踊りのことはよくわからないけど観ているだけでため息出そうなくらい綺麗な二人でした のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 782 わーい(嬉しい顔) vs 783 ふらふら)
posted by スキップ at 23:32| Comment(6) | TrackBack(1) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今頃のコメント、お許しを(ず~っと忙しくて。芝居ばっかり見てるから… (^-^;)。
亀治郎さんの狐、よかったですね!! 本物の忠信も去年の亀治郎の会よりずっとよくなっていました。猿之助さんの芝居は映像でしか見たことがないのですが(本物をご覧になった方が羨ましいっ!!)、亀治郎さんを見ていると猿之助さんによく似ているなあと思います。後継者を自任して勉強していることがよくわかります。「四の切」は1000回上演するつもりだそうですから、まだまだどんどん進化するんでしょうね。
「封印切」は私もだいたいいつも八右衛門のほうが素敵なんて思ってしまうんですよ(仁左様が八右衛門をやったら絶対!)。染五郎さんもステキでした。
上方の雰囲気というのは、上方に住んでいないと出すのがむずかしいと聞いたことがあります。藤十郎さんが、息子さんたちでさえ東京に住んでいるから上方の本当の味は出せていない、と以前おっしゃっていました(そこはかとない柔らかさなんでしょうか、私にはよくわかりませんが…。仁左様が江戸っ子の役をやられると、とてもサマになっているのですが、どこかに柔らかさがあると思うのですよ。それが上方の味なのかなあ、なんて…)。藤十郎さんの域に達するのは至難としても、江戸の役者が上方ものに挑戦するというのもなかなか興味深いと思いました。
Posted by SwingingFujisan at 2011年05月31日 23:18
♪SwingingFujisanさま

イエイエ、コメントはいつでも大歓迎です。
ありがとうございます。

実は亀治郎さんはもう何度の「四の切」を演じてらっしゃる
のだとばかり思っていました。これまでも猿之助さんの持ち役
をたくさん演じて来られましたので、てっきり観たような気に
なっていたんです。
私は初めて猿之助さんの「四の切」を観た時、もう壮年で
いらしてかなりふっくらされていたのですが、あの欄干の
狐歩きの衝撃は今でも忘れられません。
早替りとか宙乗りとか、歌舞伎の人ってこんなことできるんだ~
と驚いてばかりでした(笑)。
亀治郎さんはこれから1000回以上も、私のように初めて
観る人を驚かすのでしょうね。

「封印切」は昨秋、大阪城の平成中村座で演じた勘三郎さん
でさえ手強かったようですので、まして初役の勘太郎くんは
とてもがんばっていたと思います。
が、「そやけど忠さんはなぁ~」という上方の芝居通の
おばさま方の声が聞こえてきそうでもありました。

先日、秀太郎さんが講演でまさに藤十郎さんと同じような
ことをおっしゃっていました。
「江戸の役者さんに上方の心を出すのは難しい」と。
「でも、染五郎くんと亀治郎くんにはそれがある」とも
おっしゃっていましたので(ちょうど二月ルテ銀の
「女殺油地獄」の後でした)、勘太郎くんや七之助くんも
これからどんどん上方の空気を身につけていってくれる
ものと期待しています。

それにつけても、仁左衛門さんの八右衛門、ほんとに
ステキでしたね~♪、
Posted by スキップ at 2011年06月01日 01:43
明治座花形歌舞伎を4回に分けてアップしました。予想以上に見応えのある舞台だったので感想も気合が入ってしまいました(^^ゞTBは4番目の「高坏」と昼夜通してのイメージの記事にさせていただきましたが、末尾に全部リンクつけてありますm(_ _)m
昨年の亀治郎の会で観た「四の切」がバージョンアップしていました。その時も染五郎義経でしたがあまりいいと思えなかったのですが、今回はバッチリだったので私もご機嫌です。亀ちゃん狐もさらに磨きがかかっていて、佐藤忠信と狐忠信の両方の写真を買ってしまうほどでした。
「封印切」は吉弥さんの他はお江戸の役者さんばかりなのに頑張ってくれて嬉しかったです。
>「ええい!」と自分で切る方が好き......松嶋屋型ですね。今回はどちらかと思っていましたが、勘太郎くんが成駒屋で頑張ってくれました。染五郎の八右衛門が二枚目で性格の悪い敵役で実によく、実直な勘太郎忠兵衛とエスカレートしていく芝居が愚かしく哀しくてよかった!
小山三さんの手塩にかけた坊ちゃんたちとの共演を観ている方も嬉しかったです。少しでも長く舞台でお姿を見ていたい役者さんの一人です。
Posted by ぴかちゅう at 2011年06月02日 22:38
♪ぴかちゅうさま

16年ぶりの明治座は、ほんとに見応えがあり、花形の華やかさがあり
とても楽しい舞台でした。
私はまだ夜の部の感想も書けずにぐずぐずしていますが、4回にわたって
アップとは、ぴかちゅうさん、さすがです。
あとでじっくり読ませていただきますね。

染五郎さんは今回、最後の「高坏」以外すべての演目にご出演でしたが
どれも存在感や新たな一面を見せてくれて、若旦那贔屓としても大満足
だったのですが、ぴかちゅうさんにもお褒めいただいて、なおのこと
嬉しいです♪
明治座では来年も歌舞伎公演が決まったそうですが、今年のように
また力の入った舞台を期待したいですね!
Posted by スキップ at 2011年06月02日 23:59
もう○十年か前猿之助さんと児太郎さんの舞台を
拝見したことあります 猿之助さんは今の亀治郎
さんより上だったから壮年の忠信で児太郎さんが
目の覚めるように美しかったこと 咲き始めた薔薇
(洋花に例えるのはおかしいけど)のように輝いて
いました 亀治郎さんいじらしくてけなげな仔狐でしたね できれば「吉野山」「四の切り」と続けて上演してほしいです
Posted by さくらそう at 2011年11月01日 20:50
♪さくらそうさま

児太郎さんは今の福助さんでしょうか。
本当にお美しかったですね(今もお美しいですが)。
私はよく、「橋之助さんのお姉さん」と言い間違えて友人に
笑われたものです。とても男の人のように感じませんでしたので(笑)。

この五月明治座は、亀治郎さんは「雨」のお稽古があって
あまりお時間が取れなかったようですが、次の機会には
ぜひ「吉野山」と通しで拝見したいです。
Posted by スキップ at 2011年11月02日 23:35
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