宝塚歌劇 星組公演
ロマンティック・ミュージカル
『めぐり会いは再び』-My only shinin’ star-
~マリヴォー作「愛と偶然との戯れ」より~
脚本・演出: 小柳奈穂子
18世紀フランスの劇作家マリヴォー作の喜劇「愛と偶然との戯れ」をミュージカル化した作品。
オルゴン伯爵(英真なおき)の令嬢シルヴィア(夢咲ねね)の花婿選びが舞台。花婿候補の一人・公爵の子息ドラント(柚希礼音)は、相手の本質を見抜こうと従者のブルギニョン(紅ゆずる)と入れ替わってシルヴィアの前に現れます。ところがシルヴィアも、同じ考えから侍女のリゼット(白華れみ)と入れ替わっていました・・・。
この2組のカップルが周りを巻き込んで引き起こす騒動を中心に、5人の求婚者それぞれの恋模様をコミカルに描いて、まるでシェイクスピアの小品の喜劇を観ているよう。
ストーリーは単純で、結末も予想がつくのですが、それでも夢があって楽しくて、胸がキュンとなる乙女ゴコロ(もはや乙女ではないが)のツボをツンツン刺激する舞台。
登場人物がみんなカワイくていい人で、衣装もカワイくて華やかで、主題歌もカワイイ。もう、めちゃくちゃカワイくてキラキラした、まさにロマンティック・コメディ。小柳奈穂子先生はこれが大劇場デビュー作ということですが、しょっぱなからクリーンヒットです
大劇場ロビーには震災被災者の方たちのための星組出演者のサイン寄書きが掲示されていました。右は柚希礼音さんと夢咲ねねさんのものです。
柚希ドラントと紅ブルギニョンの登場シーンからもうヤラレっ放し。銀橋での二人のやり取り、ほんとにおかしくてカワイイ。
「お前がその長い台詞を言えたことはほめてやる」 by ドラント とか、 「旦那様のお得意のダンスだけは無理です」「ダンスなんて、顔で踊りゃいいんだ」「顔で踊るって、どーすりゃいいんだよ」・・・なんて台詞はリアルちえちゃん&ベニーの会話のようでもあり、座付作家の本領発揮といったところです。
柚希礼音ドラントは文句なしにカッコいい
貴族のコスチュームも、従者の衣装もさらりと着こなし、身分が明らかになった時にさっと膝をつくポーズのキマリ方、美しさといったらハンパないです。
壁を背にしたシルヴィアに手をつかわず(つまり手で顔を隠さず)キスするシーンがあって、その仕草のカッコよさにほんとにドキドキ
ドラントはただのおぼっちゃまではなく、両親の身分違いの恋から生まれ、父に棄てられ苦労して亡くなった母を見て育ったため女性が信じられず、心に影を持つ青年です。そんな彼が、真っ直ぐにモノを言うリゼット(実はシルヴィア)に心を開き、気持ちを込めて歌うバラード 「LIFE is ・・・」は心にしみ渡ります。この曲が平井堅さんの曲だっていうこと、2回観て2回とも忘れていました。あとで、「え?どれだっけ。あの曲?」と思い出してみたり。それくらいお芝居の雰囲気に溶け込んでいました。
夢咲ねねシルヴィアは、勝気で聡明な令嬢がぴたりハマっています。
ねねちゃんのベタベタした感じの話し方や歌い方が苦手だったのですが、そういう部分は影をひそめ、侍女の衣装でアヒル口してドラントにズバズバものを言うシルヴィアのかわいらしいこと。今まで観たねねちゃんの中で一番好き。
「男はどうせ、優しくておっとりしてて何もないところで転ぶようなドジッ子が好きなのよ」というセリフなんて共感でき過ぎて笑ってしまいます。これ、小柳先生の女性ならではの視点かな、と思ったのですが、原作にある台詞なのかな。
紅ゆずるのヘタレで情けないけれども一途な従者ブルギニョンといつも慌てふためいている白華れみリゼットのカップルも本当にかわいらしい。
旅芸人の一座が歌う主題歌がまたとても耳なじみがよくて覚えやすくステキな曲でした。
(小柳奈穂子・作詞/吉田優子・作曲)
むかしむかしの
遠いおとぎ話
美しい姫と
花婿候補者達
哀れな魔法の
呪文をかけられて
愛の言葉に
焦がれても気付かない
星達の奏でる恋の輪舞
すれ違う愛のシンフォニー
日が沈み 暗い夜の底で
きっと見つける私だけのエトワール
心の奥底をのぞいてごらん
澄んだ瞳の君が君を見てる
心の奥底をのぞいてごらん
澄んだ瞳の君が君を見てる
先日仕事でちょっと凹んだことがあった時、なんだかカワイイ曲が頭の中をぐるぐる回ってる、と思ったら、ここ~ろの 奥底を~ の~ぞいてご~ら~ん 澄んだ瞳のきみが~ きみを~見てる~ でした
この旅芸人の一座の人たちの役名が、シリウスとかカストルとかポルックス(「ふたご座のカストルとポルックスのように」ってオスカルのセリフ、あったなぁ)とかスピカとかリゲルとか、星の名前になっていて、星組らしい粋なはからい。
星組らしいといえば、この舞台は97期生の初舞台でもありますが、恒例のラインダンスは、モーツァルトのきらきら星変奏曲のアレンジで、星をイメージした黄色い衣装です。
宝塚の舞台にラインダンスはつきものですが、初舞台生のラインダンスは格別。目いっぱいの笑顔で34名が奇跡のようにピタリと同じ高さまで脚を上げて踊る姿を観ているといつも目頭が熱くなります。これからの長い宝塚生活で、ただ一度きり、同期生全員で渡る銀橋。この銀橋を、スポットライトを浴びてソロで渡るスターが一人でも多くこの期から生まれますように。
メガネくんな真風涼帆エルモクラートもステキ のごくらく度 (total 777 vs 773 )