2009年06月08日

鹿賀丈史のシラノ


s-shirano.jpg

ワイルドホーンが、前作「ジキル&ハイド」の鹿賀丈史に惚れ込んでタイトルロールに指名したという「シラノ」。ブロードウェイに先駆けて、日本初演のミュージカルです。


ミュージカル「シラノ」
台本・作詞:レスリー・ブリカッス
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:山田和也
翻訳:松岡和子
訳詞:竜真知子
出演:鹿賀丈史 朝海ひかる 中河内雅貴 戸井勝海 光枝明彦 鈴木綜馬 ほか


6月7日(日) 1:00pm 梅田芸術劇場メインホール  1階4列上手


ストーリー: 17世紀半ばのパリに実在した、優れた詩人にして勇猛果敢な剣士 シラノ・ド・ベルジュラック(鹿賀丈史)。従姉妹のロクサーヌ(朝海ひかる)に恋をしますが、並外れて大きな鼻を持つ彼には打ち明けることができないまま、若くてハンサムなクリスチャン(中河内雅貴)と彼女の仲をとりもつことになります。口下手なクリスチャンはシラノに教えられた愛の言葉でロクサーヌの心を射止め結婚します。仏西戦争の前線に赴いたシラノは、危険を顧みず、クリスチャンの名前で書いた愛の手紙を毎日ロクサーヌへと送ります・・・。

新作ミュージカルということで、新しい切り口を期待しましたが、演出も音楽も舞台装置なども結構オーソドックスな、いかにもミュージカルという印象(・・・という程ミュージカルは観ていないのですが)。
とはいうものの、「うわ、眠いかも」と思ったところに登場したガスコンの兵士達の合唱にピッ目と目が覚めたように、アンサンブルのコーラスはすばらしいし、プロローグの劇場の場面はともかく、原作に忠実なストーリー展開は、シラノの孤独や苦悩を十分焙り出していました。
鹿賀丈史は、見事な押し出しでいかにも主役の存在感を放ち、どこか人を食ったような雰囲気がシラノによくハマッていました。が、タイトルロールだから当然といえば当然なのですが、シラノだけが際立って突出しているような印象を受けました。良くも悪くも“鹿賀丈史のシラノ”でした。それと、「ここで聴きたい」と思うところで声がのびないばかりか、セリフもロレツが回っていないように聞こえる場面が気になりました。お疲れだったのでしょうか、それともあの鼻のせいかしら。

朝海ひかるを舞台で観るのは、宝塚のサヨナラ公演以来だったので、もうすっかりレディになっているのにオドロキ。凛として美しく華もあってステキなヒロインぶりでした。端々に見せる茶目っ気がロクサーヌのキャラクターにも合っていましたが、歌はもっと聴かせてほしいところです。

涙しぼられるからと言っていいお芝居という訳ではないけれど、以前見た栗田芳宏演出・市川右近主演の「シラノ・ド・ベルジュラック」、そして、緒形拳のひとり芝居「白野」のどちらも大泣きしましたし、シラノの“心意気”にとても感じ入っていましたので、正直のところ泣かない自分が不思議というか、納得いかない気分でした。だって全然涙出なかったんだもん。それはやはり、あの最期の修道院の場面に負うところが大きいなぁ。
カーテンコールで鹿賀さんは、「すばらしい作品ですので、また近いうちにお目にかかれると思います」と、すでに再演決定を匂わせるような発言をしていらっしゃいましたが、再演するなら演出はもうひと頑張りしていただきたいと思います。

そのカーテンコール。鳴り止まぬ拍手に、ついに鹿賀さん、ペットボトルとガムテープ持って登場。「これから荷造りしなきゃならないので」ですって。

s-IMG_1414.jpgこれは最期の場面でハラハラ落ちてきた枯葉をカーテンコールの時にアンサンブルの人たちが何度もほおり上げたものが私たちの足元に落ちてきたものです。
出演者の皆さんの晴れやかな笑顔を見ていると、とてもよいカンパニーだったことがよくわかって、小さな不満もどこへやら。



グッズはいろんなものが売り切れ続出。人気あるのね~の地獄度 ふらふら (total 497 わーい(嬉しい顔) vs 498 ふらふら)

posted by スキップ at 23:40| Comment(10) | TrackBack(1) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
同じ日やったんですね、出会わなかったですねv
私は11列下手側でした^^;
ガスコンの歌は良かったなぁ~♪
そうそう鹿賀さんの声…やっぱあの鼻のせいなのかなぁと思えるところもありました。
時々こもるんです。
スキップさんが4列目でそう感じちゃったら11列な私は~~~\(゜ロ\)(/ロ゜)/
Posted by きばりん at 2009年06月09日 23:20
こんばんは。
シラノ、東京で上演している時に見ました。
面白かったら、リピートしようと思ってましたが、結局一一回で終わりました。

うーん、何が悪かったのでしょうね…。
鹿賀さんが歌も台詞もいまひとつだったのが、非常に悲しかったです。
Posted by 花梨 at 2009年06月10日 01:25
♪きばりんさま

あらぁ、ご一緒でしたか。それはお目にかかれず残念でした。

>そうそう鹿賀さんの声
そうなんですよね。「ジキル&ハイド」の時の歌唱が
すごく迫力あった印象があるので、意外でした。
セリフも時々聞こえにくかったし・・・ほんと、どうしちゃったんでしょ。
ロクサーヌにしても、ソロの時は意識が遠のきかけ、
ガスコンとかのコーラスになるとパチッて感じでした(笑)。
Posted by スキップ at 2009年06月10日 02:56
♪花梨さま

私はそんなにミュージカルを観る方ではないので、
あまりよくわからないのですが、何となく迫力不足と
いうか、自分の中でも消化不良でした。
鹿賀さんは、千秋楽でお疲れなのかとも思ったのですが、
東京公演でも精彩がなかったのですね。
ほんとに、どうしちゃったのでしょう。
Posted by スキップ at 2009年06月10日 02:59
>お疲れだったのでしょうか、それともあの鼻のせいかしら......贔屓としてはとてもせつなかったのですが、「名優も老いるのだ」と認めました。今年は玉三郎丈が二人道成寺で尻餅をつかれるのを見てしまったし、そういう風に厳粛に受け止めつつしっかり見ていく決意を固める年になりました。
私は「シラノ」が鹿賀さんのミュージカル主演の最後の作品になるだろうと推測しています。だからこそ鹿賀シラノの舞台だし、共演者がみな鹿賀さんを尊敬の念をもって温かく支えて包み込んでいるようで、カンパニー全体の雰囲気が素晴らしかったです。ファイナルと銘打つまでは再演があると思うので磨き上げられる期待も含めて毎回一回は観ていきたいと思っています。
Posted by ぴかちゅう at 2009年06月13日 00:51
鹿賀さんのシラノ、気になっていたのですが、行くことができませんでした。
ジキルとハイドも、結局見られなかったし…
次回再演される時は、ぜひ乗り遅れないようにしたいと思います。
その時は、演出も良い方向に変わっていたらいいですね。
Posted by るみ at 2009年06月14日 13:36
スキップさん、こんにちは~♪

シラノはフランスが舞台なので(笑)話自体は好きなんですよ。
分かりやすい展開ですよね。

今回の鹿賀さん主演のシラノは主役の3人がちと残念でした。
でも、アンサンブルさんはじめカンパニーが素晴らしいかったから“金返せ~”とは思わなかったです。
Posted by 真あさ at 2009年06月14日 16:39
♪ぴかちゅうさま

>そういう風に厳粛に受け止めつつしっかり見ていく決意を固める年になりました。
自分が歳をとるのは棚にあげて(笑)、憧れの眼で観ていた役者さんの
衰えを観るのは切ないし辛いことですが、その覚悟が必要ということですね。
「シラノ」については、本邦初演でしたので、脚本も演出的にも今後
筆が加えられて、進化していくことを期待したいですし、鹿賀さんも
このままのシラノで終わってしまう俳優ではないと
信じています。
Posted by スキップ at 2009年06月15日 02:05
♪るみさま

もう再演が決まっているような気配でした(笑)。
私が観た回がたまたまそうだったのか、この公演全体がそうなのか
よくわかりませんが、再演の時にはバージョンアップを期待したいです。
「ジキル&ハイド」のファイナル、すごくよかったですから。
Posted by スキップ at 2009年06月15日 02:08
♪真あささま

私もシラノ・ド・ベルジュラックのお話は好きです。
鹿賀さんは私の中のシラノのイメージからは少し洗練されすぎてたかなぁ、
とも思いました。
アンサンブルはほんとによかったですね♪
でも私はこれで13,000円はちと高い、と思っちゃいました(笑)。
Posted by スキップ at 2009年06月15日 02:12
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