2009年05月22日

見果てぬ夢

s-lamancha.jpg2012年8月 松本幸四郎さんの70歳のお誕生日に上演1200回となる予定のミュージカル。
幸四郎さんのライフワークともいえる舞台ですが、
初見でした。

ミュージカル「ラ・マンチャの男」
脚本: デール・ワッサーマン
作詞: ジョオ・ダリオン    訳詞: 福井峻
音楽: ミッチー・リー
演出: 松本幸四郎
出演: 松本幸四郎  松たか子  駒田一  
上條恒彦  福井貴一 月影瞳 石鍋多加史 ほか

5月14日(木) 7:00pm シアターBRAVA!  1階D列センター


舞台は16世紀末のスペイン。教会侮辱の罪で投獄された劇作家のセルバンテスが、牢獄で囚人たちを巻き込んで自作の即興劇を演じます。ある田舎の郷士アロンソ・キハーナが妄想にかられ、“遍歴の騎士”ドン・キホーテとなって自らの信じた道を生きる物語です。

全く予備知識なし、しかも「ドン・キホーテ」の物語も読んだことがないので、序盤は、セルバンテスと牢獄の囚人たち、彼らが演じる劇中劇のアロンソ・キハーナの「現実」、そしてキハーナの「妄想」としてのドン・キホーテという多重構造の物語にいささか混乱しました。いくら舞台は虚構の世界と言っても、さらにその中の劇中劇という形では登場人物に感情移入もしにくいなぁ、と。

が、周りに何と言われようと、狂人扱いされようと、自分の信じた道を進み、夢を追い続けるドン・キホーテの姿-生きていく勇気につながる夢と、現実の厳しさが交錯する舞台に引き込まれ、心に響くセリフや歌の数々に胸が熱くなりました。

本当の狂気とは何か?
夢におぼれて現実を見ないのも狂気かもしれぬ。
現実のみを追って夢を持たないのも狂気かもしれぬ。
だが、一番憎むべき狂気とは、
あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、
あるべき姿のために戦わないことだ。


この言葉は心に痛いです。
まさに、あるがままの人生に折り合いをつけて、何とか自分に言い訳をして生きている私のような人間には。

そして極めつけは、「見果てぬ夢」。
キホーテにより歌われ、終盤には出演者全員で合唱されるこのナンバーは、かつて総理大臣時代の小泉純一郎さんが、郵政民営化への闘いの中、民主党の議員に国会質問で、「あなたは空想と現実がわからなくなったドン・キホーテだ」と揶揄され、「私はドン・キホーテは好きなんですよ。『ラ・マンチャの男』は大好きなミュージカルの一つです。『夢みのりがたく、敵あまたなりとも、我は勇みて行かん』」と切り返したことでも有名です。

夢は稔り難く 敵は数多なりとも
胸に悲しみを秘めて 我は勇みて行かん
道は極め難く 腕は疲れ果つとも
遠き星をめざして 我は歩み続けん
これこそは我が運命 汚れ果てしこの世から
正しきを救うために 如何に望み薄く遥かなりとも
やがていつの日か光満ちて
永遠の眠りに就くその時まで
たとえ傷つくとも 力ふり絞りて
我は歩み続けん あの星の許へ


朗々とした歌唱、哀切感漂う演技。夢を追い続けるキホーテが、「ラ・マンチャの男」を1100回、「勧進帳」の弁慶を1000回、信念を持って役者道を歩み続ける幸四郎さんの姿とも重なり、人はどう生きるべきかと自らの姿勢で範を示し、厳しい人生に畏れず立ち向かえ、と勇気づけられているかのようで、心を揺さぶられました。

牢名主の上條恒彦はさすがの存在感。少しお痩せになったように見えましたが。欲を言えばあのよいお声でもっと沢山歌が聴きたかったな。
アルドンサの松たか子。娼婦役にはお嬢様の品が邪魔をするのでは、と危惧しましたが、野性味あふれる中にピュアな心を持つアルドンサ。すばらしかったです。ファルセットは少し苦しそうでしたが、力強い歌唱は健在。ラバ追いのあらくれ男たちに襲われる場面は息を飲む迫力で、身も心も傷ついたアルドンサが、キホーテに向って「あたいはあんたの思い姫なんかじゃない」「いちばんの罪は生まれてきたことさ」と叫び、♪ドブの中で生まれたあたいさ~ と歌う場面に涙たらーっ(汗)

カラスコ博士(福井貴一)により、自分の現実の姿を思い知らされ、傷心の中、瀕死の病の床につくキハーナ。そこへアルドンサが訪ねて来てもはじめは誰だかわからなかったキハーナが、「あたいのことを違う名前で呼んでくれたよ、ドルシネアって。」と懸命に語りかけるアルドンサに、ドン・キホーテとしての魂と誇りを心の中に甦らせて、最期の力をふり絞って立ち上がるラストには涙、ナミダたらーっ(汗) たらーっ(汗)

位置情報 カーテンコールでは「見果てぬ夢」を、るんるんTo dream the impossible dream To fight the unbeatable foe~ と原語で披露してくださった幸四郎さん。
「EXILEに負けるな~」と茶目っ気も。(お向かいの大阪城ホールはEXILEのライブだったので)

位置情報 この日の席はD列でしたが、前2列がつぶしてあったので2列目のど真ん中。座席配置が前後の列で交互になっているBRAVAでは、カーテンコールで舞台の中心に立つ幸四郎さんとさえぎるものなく正対する形となり、手で涙をぬぐいぬぐい拍手する私を、「うん、うん」とうなづきながら笑って見下ろしてくださった(と思う)。あの笑顔にヤラレましたワ。息子さんの方にもよくヤラレているのにお父様にまで・・・高麗屋おそるべし!


我こそはドン・キホーテ。ラ・マンチャのドン・キホーテ! のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 491 わーい(嬉しい顔) vs 490 ふらふら)
posted by スキップ at 23:41| Comment(6) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スキップさん、とっても良い席で見られたんですね。
その席だと、やられてしまいますね。
幸四郎さんがやるからこそ、深い感動が与えられるんじゃないかなと思います。
松たか子さんはホントに素晴らしかったです。
彼女の舞台は見たことがなくて、「どうなのかな?」と思っていたのですが、驚きました。
さすがです。
高麗屋一家、本当におそるべしです。
Posted by るみ at 2009年05月23日 19:29
読んでるだけで、また涙がじわ~っ。

私の観劇デビュー作、あの時はただただ生の迫力に圧倒され、好きな芸能人欄に「市川染五郎」と書くようになった中学生だったけど、アラフォーになってついに2度目の観劇をした時は、台詞の一つ一つが胸に突き刺さって熱くなりました。
3度目は2011年を予定、アラ更になって観るとまた違うものを感じるのかも楽しみです。その時はぜひご一緒しましょう!
Posted by ファザコンサリー at 2009年05月23日 22:08
♪るみさま

ちょっと近すぎという気がしないでもなかったのですが(笑)、
とてもよいお席で堪能いたしました。
長い間演じ続けていらっしゃる幸四郎さんには、ドン・キホーテが
乗り移っているかのようでした。
松たか子さんのアルドンサもすばらしかったし、ほんとに、
高麗屋さんからは目が離せませんね。
Posted by スキップ at 2009年05月24日 02:59
♪ファザコンサリーさま

私も「見果てぬ夢」の歌詞を読むたびに目頭が熱くなります。
中学生や高校生の頃、自分が人生に折り合いをつけて生きていく
ことになるなんて、思いもしませんでしたから。

>好きな芸能人欄に「市川染五郎」と書くようになった中学生
(~o~) お父様の方ね。
今は息子さんの方の「市川染五郎」と書いているのよね。
はい。次回「ラ・マンチャの男」ご観劇の折には、ぜひとも
ご一緒させてくださいませ。
Posted by スキップ at 2009年05月24日 03:05
先日はありがとうございました!!
『ラ・マンチャの男』感想を、直で語れて
よかった~!!嬉しかったです!!
スキップさんと同じもので感動できて
嬉しかった~~!
・・・次は2011年・・なんですねっ!
よ~~し、行ける様にがんばるぞっ!
・・・いろいろと今から折り合いをつけてかないといけませんが
この為のそれならばいいのではないかと・・・(笑)
がはは!がんばるじょ~!!(←金ちゃん風)
Posted by かずりん at 2009年05月27日 08:53
♪かずりんさま

こちらこそありがとうございました。
観たばかりの「神様と・・・」より「ラ・マンチャ」とか
他のお芝居のお話の方が多かったけど(笑)、とても
楽しかったです。
次観るとしたらまた東京っていうことになりますね。
お互いがんばりましょう。
息子さんの方も娘さんもお孫さんも応援しつつ、・・・忙しいわね。
Posted by スキップ at 2009年05月28日 03:55
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