
ふんわりパーマヘアで、うすい色の入ったサングラスかけて、やさしい笑顔で、声を張らない、自然体の染ちゃんに惚れ直し~

「女教師は二度抱かれた」
8月12日(火) 7:00pm シアターコクーン 1階 XA列センター
作・演出: 松尾スズキ
出演: 市川染五郎 大竹しのぶ 阿部サダヲ 市川実和子 荒川良々 池津祥子
皆川猿時 村杉蝉之介 平岩紙 浅野和之 松尾スズキ ほか
天久六郎(市川染五郎)は、演劇界の風雲児と存ばれる小劇団の演出家で、歌舞伎界の異端児である女形 滝川栗乃介(阿部サダヲ)と組み、新しい現代の歌舞伎を創造するべく、CM出演や大劇場に打って出ようと前途洋々。その一方でいつもみる同じ夢に悩まされています。そんな彼の前に、高校時代の演劇部の顧問で彼の才能を発掘した恩師でもある女教師 山岸諒子(大竹しのぶ)が突然現れます・・・。
松尾さんの作品にしてはエロ&グロも、暴力も不条理も、些か控え目という印象。笑いや歌や、時々血を散りばめながら、リアルで自然なお芝居でした。
ストーリーもセリフもリアリティあって、衣裳やダイレクトなギャグや、よく聞かないとわからないような小ネタでもかなり笑わされ、ちょっと背筋がヒヤリとして、そして切なくて。「人生は一度きりだと思ってない?」
「『よーい、はい』っていう演出家の声があれば、別の人生を生きられるのよ」
狂気の中、女優でありつづけようとする山岸先生がとても切ない。
それと同時に、どこかでボタンを掛け違えてしまった自分の人生をもう一度生きたい、やり直せると思っているかのよう。
女優になりたいという意志と、天久くんのことを思う心を捨てきれない山岸先生を演じる大竹しのぶ。舞台に登場するだけで、その場を支配するような感じ。その場面を明るくするのも悲劇にするのも狂気に彩るのも、思いのままです。正気と狂気の境をあれほど自然に演じられる女優さんを他に知りません。この正気と狂気の境をさまよう山岸諒子が、以前蜷川幸雄演出で観た大竹しのぶのブランチと重なるなぁ、と感じていたのですが、後でプログラムを読むと、この作品は松尾スズキが「欲望という名の電車」のブランチをモチーフに後日譚として書いたと知って、なるほど、と得心した次第です。
何だかヘンな衣裳着て踊ったり唄ったり、登場するだけで大笑いしてしまう松尾スズキ、ハイテンションの弁慶がハマっている荒川良々、よくこんな役引き受けたわね、と思ったもののさすがの存在感の浅野和之(インド人、笑えたぁ)・・・超個性的な出演者の中で、風俗嬢・杏の平岩紙がとてもよかった。紙ちゃんのあの透明感は何でしょうね。あんな風俗嬢がいたら、私が六郎でも通っちゃう。しかもそれにはさらに別の顔があって・・・っていう変わり身も鮮やかでした。
阿部サダヲ。
いつもながらすばらしいです。良々くんに負けず劣らずハイテンションで、かわいくて、ちょっと傲慢なスターという感じもよく出ていて。2幕冒頭の派手な隈取り姿にはぶっとびました。
しかしながら、阿部サダヲの“ゲイ役”は守備範囲のような気がしますし、歌舞伎役者としての所作となると、さすがのサダヲさんにも手強かったでしょうか。そもそもこの役を歌舞伎役者にする意味があったのかという疑問もあります。
「壊そうと思っても壊れないものと、壊れてほしくないのに壊れていくものの物語」というこのお芝居のテーマの「壊そうと思っても壊れないもの」を体現させようとしたものと思われます-実際、鉱物圭一(浅野和之)に対してそのようなセリフを放っていましたし-が、「歌舞伎を破壊する」というメッセージもCM用のセリフのみに終始していて、実際歌舞伎の世界でどうこうという場面は一切なし。冷静に考えれば本筋には全くといっていいくらい絡んでいません。何だかもったいない。これはむしろ脚本(松尾さん)の問題なのでしょうが。
そして市川染五郎。
「六郎は本名の僕だと考えてもらって構いませんよ」とプログラムで語っていますが、杏ちゃんとのやり取りなど(本当に風俗に通っているかどうかは別として)限りなく等身大のように見えました。
ほんとうは、天久六郎は甘ちゃんで、ずるくて、卑怯で、ダメダメ男なのかもしれませんが、なんだかそのダメぶりが、ほっとけないかわいさに見えてしまうのは染ちゃんの身に備わったものゆえか、私が染ちゃん贔屓のせいなのか。
山岸先生のことを忘れた=逃げた?という罪悪感が心のどこかにいつもあって、それを清算したくて全部罪を被ってしまう。その結果すべてを失ってしまうけれども自分なりに心の平安を得たような彼の前に、追い討ちをかけるように山岸先生が最後の“清算”にやって来る。一瞬動揺し、抵抗して、ついには自分の運命を受け容れようとするかのような静か表情が印象に残ります。瞳には言いようのない哀しみをたたえて。
最初の工場の場面でみんなと同じ作業着を着ていてもすぐにそれとわかる美しい後姿、お顔が少しほっそりしたようにお見受けしますが、相変わらず筋肉のついた逞しい脚とちょっぴりぽよ~んなお腹、学生服着てトシちゃんばりの振りつけで唄い踊るシーン・・・これまで見たことなかったいろんな表情の染五郎さん、楽しませていただきました。


心の準備をするヒマもなくそのシーンはあっさりやって来ちゃって、ちょっと拍子抜けだったけど。

出演者へのメッセージはそれぞれの中学や高校時代の恩師からのもので、ほとんどが直筆。
とても興味深く読みました。
「二度抱かれた」の「二度」って?のごくらく度



観てきました!
>染ちゃんの身に備わったものゆえか、私が染ちゃん贔屓のせいなのか
えっと・・・。私も可愛い♪って思いました!
同じように見えていないでしょうか。いわゆる「母性本能をくすぐる系」で。
ちょっと卑怯なところも人間臭く、親近感がわきました。
だからこそ、大竹さんのエキセントリックな感じが活きますよね。
うはは!
確かにそうですよねぇ~。
真相を知りたい気もするし、知りたくない気もするし。(笑)
歌舞伎の舞台とも、新感線の舞台とも違う、
新たな染様の姿を見れて、嬉しくなりました。
ご本人が一番楽しそうだったのが、さらに嬉しくて♪
冒頭での作業着姿の時、すぐに染様だと認識できなかった私は、
まだまだ修行が足りないようです。(笑)
って、一体どんな修行なんだか?
この舞台では他の役者さんがめちゃめちゃテンション高く
芝居心出し切ってます!という感じの中、染五郎さんは
ひとり「なーんか何もかもめんどくせえや」みたいな
スタンスをキープしているのがすごいと思いました
(↑ ほめています・笑)。
風俗嬢とのカラミも含めて、何をやっても下品にならない
のは、やはりお育ちでしょうか。
染ちゃんはほんとに楽しそうにお芝居していましたね。
風俗通いは・・・今は2児のよきパパですし、言わずが花って
ところでしょうか(笑)。
私は染ちゃんはすぐにわかったのですが、しのぶさんは
全くわからなくて、いきなりしゃべり出した時には
「えっ、そこにいたの!?」っていうカンジですごく
驚きました。スターのオーラを消す、というのも
役者さんとして力の見せどころだと思います。
(↑ ほめています・笑)
朧のライが私の中での染五郎さんだったので、天久はちょっと驚きでした、
が、かわいぃと思ったのは私も同じくでございますっ。
相手が風俗嬢かどぉかは別として、有名人なら少なからずこぉゆぅことは
経験してるのでは、なんて思ってみたりもします。
サダヲちゃんのゲイ役、私も思います守備範囲。
次の動きが見えちゃうってゆぅか、、、。
大人計画だからそれでいぃのかなぁ、とも思ってみたり。。。
>「二度抱かれた」の「二度」って?
ギャハハ!ほんとだ、二度って!?
「朧」のライは本当に凄かったですものね。
“新感染”での染五郎さんは、みんなとってもカッコイイですが、
天久のような自然体の染ちゃんもカワイくて、抱きしめてあげたい(?)
と思ってしまいました(笑)。
染五郎さんが意外性があった分、サダヲさんは既成路線のように
見えたのかもしれません。でもあの役をあのテンションでやれる
のはサダヲさんの他に考えらないのもまた事実。そこが座付作家の
良いところであり、ある意味限界なのかもしれません。
「二度」・・・。あのフランス人・ルクルーゼが1回入ってるのかしら?(爆)