2007年11月17日

オガタっ!


shirano.jpg第1場 第2場 第3場 それぞれの幕切れに白野がキメのポーズでセリフを放つと、「緒形っ!」と絶妙の大向こうがかかりました。
そして、それがとてもよく似合う役者でした。


緒形拳ひとり舞台 『白野』
2007年11月15日(木) 7:30pm OBP円形ホール 9列センター


原作: エドモンド・ロスタン 『シラノ・ド・ベルジュラック』
演出: 鈴木勝秀   音楽: 朝比奈尚行
出演: 緒形拳    チェロ: ウォルター・ロバーツ



エドモンド・ロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を、幕末から明治中期までの日本を舞台に一人芝居の形式で翻案した「白野弁十郎」。新国劇の創立者澤田正二郎から島田正吾へ、そして緒形拳へと受け継がれた舞台です。

哀愁を帯びたチェロの生演奏だけが響くシンプルな舞台で、緒形拳は一人で5役を演じます。
意外なほど淡々とした静かな口調に、「ヤバイ。こんな静かに話されちゃ寝ちゃうんじゃないかしら」とはじめは心配になったくらいでした。ところが。
特に声色を変えるでも、表情をつくる訳でもないのに(もちろん衣装は着たきり)、ちゃんとそれぞれ別の人物が浮かび上がってくるのには目を見張る思いでした。

あの最期の場面。
舞台上には二脚の椅子が置かれ、一方に白野が座り、隣には主のいない椅子がライトに照らし出されています。白野が隣に座る千種に視線を向け、穏やかに語りかけ、微笑みを投げかけると、まるでそこに千種が座っているかのような思いにとらわれました。そして、誰も座っていない椅子に何度も目を向けてしまったのです。

「シラノ・ド・ベルジュラック」を観た時は、この落ち葉の場面でだーだー泣きましたが、今回最初に胸が苦しくなったのは、第2場で、千種の家の窓下から闇夜にまぎれて来栖の代わりに愛を告白する場面-うまく事が運び、千種が来栖を受け容れることになって、壁づたいに千種の部屋に入る来栖を自分の肩に担いで上らせてやった後、夜の闇を見つめて、
「千種。私の心も今あなたの元に。」と静かにしぼり出すように語った時、涙がどっとあふれました。「私はあなたを恋している」「あなたを愛している」・・・聞く人のいない虚空に向かって、届かぬ思いのたけをふり絞る・・・こんなに静かで情熱的で、恥ずかしくなるくらいストレートでシンプルで、そして哀しく切ない愛の告白を聞いたのは初めてではないかしら。

位置情報 カーテンコールでは、劇中のセリフ「さよおならぁ~」とともに大きく客席に手をふって、いたずらっ子のような何とも魅力的な笑顔を見せてくれた緒形拳さん。ブログはお人柄を表していてとてもかわいいです。鶴橋で焼肉を召し上がった模様(笑)。Boys at heart って、きっとこういう人のことを言うのでしょう。



それは緒形拳の心意気のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 267 わーい(嬉しい顔) vs 265 ふらふら)


posted by スキップ at 23:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
行ってよかったです~~~~っ!!感謝!感謝!
最初はどうなるか・・・は、私も思いました!
・・・がっ!やっぱり終盤はよかったです!!
スキップさん、そのパンフの表紙めくってみて!
その月は・・・女性のお顔に見えないこともなくない?
私だけがそう見えちゃう?
Posted by かずりん at 2007年11月19日 22:38
♪かずりんさま

なるほど。この月が千種さんのお顔ですね。
どうかな?(笑)

私は先に「シラノ・ド・ベルジュラック」を観ていたので
ストーリーにも入りやすかったのですが、あのひとり舞台だけ
を観てこんなに感動できるかずりんさんの感性はすばらしいです。
うらやましいな。

それにしても緒形拳さん、ステキでしたね~。
Posted by スキップ at 2007年11月20日 00:51
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