
作: エドモン・ロスタン 翻訳: 辰野隆/鈴木信太郎
演出: 栗田芳宏 音楽: 宮川彬良
出演: 市川右近 安寿ミラ 加納幸和 坂部文昭
たかお鷹 桂憲一 市川猿弥
演奏: アコーディオン 大田智美 バイオリン 廣川抄子
2007年9月14日(金) 7:00pm 兵庫県立芸術文化センター
中ホール 1階F列下手
ステキなお芝居でした。
物語の終盤、シラノが散りゆく落ち葉を見つめながら、「美しく散って行くなぁ。樹の枝から土までの短い旅だが、末期の美しさを忘れないのが実によい」とつぶやくあたりはもう涙ポロポロなのですが、笑って泣いて、後には何だか爽やかな気分の残る、そんな舞台でした。
ひらすらロクサアヌを想いながら、大きな鼻という醜い容姿のコンプレックスのために恋心を告げることができず、その文才で心ならずもクリスチャンとロクサアヌの恋をとりもつことになるシラノ。それから14年の時が流れ、これまでの手紙の主がシラノで、シラノこそ自分が本当に愛している人だと気づくロクサアヌの前で、シラノは最期の時を迎えようとしていました・・・。
舞台は至ってシンプル。三方に定式幕が張り巡らされ、舞台上には小さな2段重ねの円形の台座のようなものが置かれていて、役者は四方に設けられた通路から出入りします。場面転換もなく、時折場面を説明する掛け軸様のパネルを持った人が登場してそれと判る仕組み。座席位置の関係もあるかもしれませんが、照明が全体的に暗く、しかも出演者はつばの広い羽つき帽をかぶっていることが多いので、役者さんの表情が見えにくかったのが些か残念でした。
市川右近のシラノ。べらんめぇ調のセリフまわしに最初は少しとまどいましたが、剣の腕や文才には自信を持ちながら容姿のコンプレックスから決して逃れられない屈折した感情を表情豊かに、喜びも哀感も漂わせて熱演。ロマンチストで快活で、男気に溢れた愛すべきシラノ像をつくり上げていました。「それは…俺の心意気だ」という最後のセリフ(戯曲では「羽根飾」と書いて “こころいき”とルビがふってあるらしいです)は万感の思いが込められていて、必聴!
美しく気高く、わがままで奔放で自分の思うままに行動していても嫌味のないロクサアヌの安寿ミラ。キザなド・ギッシュ伯爵で久しぶりに男役を見せてもらった加納幸和(もちろん色っぽい女役も)、パン屋さんだったり修道女だったり、つけ打ちさんまで務めて相変わらず芸達者で、よく通る良いお声の市川猿弥・・・「杏入りタルト製法の唄」なんて歌をソロで聞かせてもくれます・・・出演者は実力派揃いで早変わりもそれと感じさせないくらい自然でアンサンブルよく、アコーディオンとバイオリンの生演奏も効果的で、派手ではないれど、ほんとうによいお芝居を観せていただいたという印象です。




シラノはフランスで人気No.1のタイトル・ロールなのだそうなのごくらく度

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カテコで栗田さんが登場したなんて!栗田さん見たかったよー!(実は栗田ファン)
でも何か今回は右近さんのシラノに、とても心奪われてしまいました。愛すべき人物で、一途で…。
私もラストは涙がぼろぼろでした。
初ナマ栗田でした。パンフに載っているとおりの金髪でしたよ(笑)。
右近さんのシラノ、すばらしかったですね。
関西はこの兵芸1日のみ(2回公演)で、仕事帰りに西宮まで出向くのは
かなりキビシかったのですが、無理して観に行って本当によかったです。