2025年03月23日

三月大歌舞伎 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」 昼の部


2025kanadehon1.jpg


松竹創業130周年記念で3月、9月、10月に歌舞伎の三大名作をそれぞれ通しで上演する第一弾。
歌舞伎座で三大名作を一挙上演するのは松竹百年にあたる1995年以来30年ぶりだそうです。

ということは、次に上演されるのは30年後として、多分私はこの世にいないと思われ、「三作とも絶対観る!」と鼻息荒かったのですが、諸般の事情で上京が難しいという中、やはりあきらめ切れず、完売のチケットも捕獲することができて(そのあたりの事情はこちら)、無事に通しで観ることができました。
A・B 両方観たいのはヤマヤマなれど、「Aプロ四段目ありき」の不肖スキップ、Aプログラムの通しとなりました。


松竹創業百三十周年
三月大歌舞伎
通し狂言 「仮名手本忠臣蔵」
 昼の部 Aプロ

大序   鶴ヶ岡社頭兜改めの場(上演時間: 47分)
三段目  足利館門前進物の場
     松の間刃傷の場   (上演時間: 46分)
四段目  扇ヶ谷塩冶判官切腹の場 
     表門城明渡しの場  (上演時間: 1時間32分
浄瑠璃  道行旅路の花聟   (上演時間:40分)
     (幕間/5分・35分・15分)

出演:片岡仁左衛門  尾上松緑  中村勘九郎  尾上松也
片岡松之助  嵐橘三郎  片岡孝太郎  中村扇雀
坂東彦三郎  中村松江  市川男女蔵  中村亀鶴
中村橋之助  中村歌之助  澤村宗之助  中村吉之丞
中村莟玉  片岡亀蔵  中村錦之助  中村梅玉
中村隼人  坂東巳之助  中村七之助 ほか

2025年3月15日(土) 11:00am 歌舞伎座 1階3列センター



2025kanadehon2.jpg



開演10分前に幕前に口上人形が登場。
「そうだ、これこれ」と思いました。
役名と演じる役者さんの名前を読み上げるたびに客席から拍手。「えっへん えーっへん」や首を回したりの仕草に笑い声も。
最後「大星由良之助 かったおかにざえもん かーったおかにざえもん」にこの日一番割れんばかりの拍手が起こりました。

そして、いつもの5倍ぐらいの遅さでゆっくりゆっくり開いていく定式幕。
徐々に現れる役者さんたちはまだ目を閉じていて、お役に生命が宿るのを待っているよう。
「そうだ、これこれ」再びの不肖スキップ。


大序「鶴ヶ岡社頭兜改めの場」では松緑さんの高師直が憎々しい中にも愛嬌があって、若狭之助(松也)が挨拶するのをプイと横を向いて無視したり、顔世(孝太郎)にぞっこんの様子に客席からも笑いが。
表情少な目で冷静な判官(勘九郎)といかにも血気盛んな若狭之助との対比も鮮やかでした。

筋書見ながらご覧になっていた隣席のお嬢さんが「黄色い服着てる人が勘九郎さん?」とおっしゃっていてちょっと笑ってしまいました。
うん、合ってる。服ではないが。


「足利館門前進物の場」はコミカルな鷺坂伴内(松之助)はお約束。
どこまでも冷静で低姿勢な加古川本蔵(橘三郎)ですが、ここは通し狂言とはいえ二段目の「松切りの段」が省かれているので、初見の人(あまりいらっしゃらないかもしれませんが)には少しわかりにくいかなと思いました。
・・・などと冷静に観ていられたのはここまで。

舞台が回って松の廊下が現れると胸がキューッとなります。
判官が師直に詰められるあたりで涙ポロポロ。

清廉にして気品高く、武士としての矜持を忘れない勘九郎さん判官。
忠臣蔵は判官(浅野内匠頭)の”短慮”を指摘されることもありますが、怒りに燃え、一旦は堪え、哀しく遠い目をして多分塩冶の家や家臣たちのことを思い、それでもなお我慢ならなかったことがよくわかります。
逃げていく師直に投げつけるあの刀。
本当に「せめてあとひと太刀」が叶えられていたらと心から思います。

そしてよいお香の香りが漂う四段目。
すべてを受け容れて粛々と切腹の準備を進める判官。
その中で「力弥 由良之助はまだか」「力弥 由良之助はまだか」と繰り返し尋ねる判官。
「いまだ・・・」とうなだれる力弥。

もはやこれまで、と判官が九寸五分を腹に突き立てたまさにその刹那、まず「ダダダッ」と足音が聞こえ、鳥屋から転がり出るように現れる由良之助。
由良之助の姿を見てふっと力を抜いて安心したような表情を見せる判官。
判官から九寸五分を託された由良之助の地の底から響き出るような「いーさーいー」を聴いたら、この人、命を賭してでも仇討ちしない訳など決してないと思えます。
由良之助だけに無念と怒りの表情を見せる判官。
それを目で魂で受け止める由良之助。

息絶えた判官が握りしめた九寸五分を、慈しむように両手で包み、指を1本1本解いて受け取る由良之助。
本当に大切なものを包み込むように判官の着衣を整え、裃を掛ける由良之助。
言葉はなく、表情の、仕草の一つひとつに主君への想いの深さが滲み出ていて、しっかり観たいのに涙で目が曇り・・・。

一転して評定の場では、血気にはやる藩士たちを向こうにまわして「恨むべきはただ一人」と一歩もひかぬ毅然とした由良之助。
藩士たちが去った後、形見の九寸五分についた判官の血を舐めて、空を睨み、凄まじい形相で仇討ちを誓う由良之助。
平伏し明け渡した館とそこに宿る判官の魂に別れを告げ、幕外に一人残る由良之助。
三味線の調べだけが奏でられる中、ひと言も発さず万感の思いと覚悟を持って孤高なまでの雰囲気を醸し出して花道を引っ込む由良之助。


「道行旅路の花聟」
四段目で散々泣いた後 隼人さん勘平・七之助さんおかるの道行が夢のように美しくて、富士山が見え、桜や菜の花が咲く周りの風景も綺麗で、なのにこの2人に待ち受ける未来を思ってまた泣くなどしました。
鷺坂伴内の巳之助さんがさすがの踊り巧者ぶりを発揮。ひょうきんな佇まいの中でトンボ切ったり、客席からやんやの喝采を浴びていました。



2025kanadehon4.jpg 2025kanadehon3.jpg 



夜の部へつづく →



posted by スキップ at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする

2025年03月16日

急に決めて急に行ってきました東京


20250315tky.jpg


昨日は東京へ・・・というか歌舞伎座へ行ってきました。

三月大歌舞伎 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」。
「仮名手本忠臣蔵」が歌舞伎座で通し上演されるのは2013年以来12年ぶり。
となると、私が生きている間・・・は言い過ぎとしても、元気で歌舞伎座へ通える間に次の通し上演を観ることは叶わないかもしれませんので、発表された時からぜひ観たいと思っていました。

が、
上京するのはかなり厳しい諸般の事情が・・・。
加えて、当初出演者に名を連ねていた松本幸四郎さんが出演されたないことがわかってテンションやや下がり気味に。

がしかし、
このブログにも何度か書いたことがありますが、2008年10月 平成中村座で観た 勘三郎さん判官、仁左衛門さん由良之助の四段目(こちら)が my best 四段目の不肖スキップ。
仁左衛門さん由良之助と勘九郎さん判官のAプログラム四段目を今観ておかなければこの先一生後悔すると思い至り、そこからチケット探し始めたのでした。

ほぼ完売のAプロ昼の部で、数少ない行けるであろう日の一等席が戻りで手に入ったのは、そんなに頻繁にサイトをチェックする訳ではない私にとって奇蹟のようでした。
これはもう神様が行くことを許してくださったのだなと勝手に解釈して(^^ゞ、夜の部は某チケットサイトでお譲りいただいて、3日前くらいに何とか行ける手配となったのでした。


画像は帰りの東京駅八重洲口でタクシー降りた時に撮ったもの。
折から降り始めた雨に洗われて夜のライトに浮かぶ緑が綺麗でした。



歌舞伎のチケ取り苦労したの久しぶりだったけれど新幹線も結構な混み具合・・・何事もギリギリはいかんね の地獄度 (total 2494 vs 2496 )




posted by スキップ at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | travel | 更新情報をチェックする

2025年03月14日

中村米吉トークショー in 京都


yonekichitalk1.jpg


三月花形歌舞伎終演後は中村米吉さんのトークショーへ。
かねてから参加してみたいと思っていたのですが、やっとタイミングがあって叶いました。
今回で11回目。関西では2022年3月以来、3年ぶり2回目の開催だそうです。


中村米吉トークショー in 京都
2025年3月9日(日) 7:30-9:00pm
鮒鶴鴨川リゾート


yonekichitalk5.jpg


会場は南座から歩いて10分足らずの鴨川沿いにある鮒鶴鴨川リゾート。
初めて伺いましたが、1870年に創業して国登録有形文化財にも指定される元老舗料亭旅館をリノベートしたとても雰囲気のある建物でした。


yonekichitalk4.JPG


7時30分きっかりに米吉くん登場。
ブルーグレーのスーツに今回の花形歌舞伎の米吉くんのテーマカラーである黄色系のネクタイ(奥様のお見立てだとか)。
昼夜2回公演でお疲れにもかかわらず、座ると後ろのテーブルの人が見えないからとずっと立ってお話してくださいました。


相変わらず機関銃のように繰り出すご本人のトークがおもしろいのはもちろん、司会の方との間が絶妙で声をあげて爆笑することしばしば。
司会の女性は米吉くんの事務所社長兼マネジャーの方なのだと教えていただきました。
とにかく二人のやり取りが楽しかったです。

前日の3月8日が32歳のお誕生日たった米吉くん。
最初に打合せたとおり、司会者さんの合図に合わせてサプライズで会場みんなで♪ハッピーバースデイを歌って、バースデイケーキのプレゼント。
ここで写真撮影OKのお声がかかって「どうぞお近くでお撮りください」ということでみんなワラワラとケーキを持つ米吉くんのまわりに集まって、まるで新郎新婦のケーキ入刀を撮る披露宴のよう(≧▽≦)
帰りに確認したところ SNS投稿もOKということでした。


続きがあります
posted by スキップ at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする

2025年03月13日

三月花形歌舞伎 桜プログラム


2025hanagata1.jpg


毎年楽しみにしている南座の三月花形歌舞伎。
諸般の事情でスケジュール厳しく💦、今年は桜プログラムだけの観劇となりましたが、若い人たちが挑む古典歌舞伎、楽しく拝見しました。


松竹創業百三十周年
三月花形歌舞伎 桜プログラム
2025年3月9日(日) 3:30pm 南座 2階1列上手




2025hanagata10.jpg




乍憚手引き口上(はばかりながらてびきこうじょう)
出演:中村福之助
(上演時間: 10分)


回替りの口上、この日は中村福之助くん。
すぐ次の演目に出るからと口上する4人の中でただ1人拵えをしての登場です。
襟周りから肩に大きな紋を染め抜いた“首抜き”という着物をお召しで、この衣裳についてのその豆知識も。
この紋は着ている役者さんの家の紋で、だから人によって違うこと。
また、たとえば「お祭り」などの演目では地の白色は真ん中に立つ主役の人だけが真っ白で、まわりの人たちは少しずつねずみ色がかってくるのだとか。知らなかったわぁ。

この後上演される演目の解説の後、みなみーなが登場しての撮影タイム。
最後に「はい!この瞬間に皆さん電源を切ってください」とおっしゃって、「電源切ってくださいねっ。上演中になったら口上やった僕が怒られますから」と繰り返しながら花道を去って行かれました。

2025hanagata4.jpg 2025hanagata5.JPG



伊勢音頭恋寝刃
 油屋店先
 同 奥庭
監修:片岡仁左衛門
出演:中村虎之介  中村米吉  中村福之助  上村吉太朗  片岡千太郎  
市川青虎  中村寿治郎  市川猿弥  中村壱太郎 ほか
(上演時間: 1時間20分)


伊勢 古市の遊郭・油屋で実際に起きた事件を題材にした物語。
伊勢神宮の神職である御師の福岡貢(虎之介)は、かつての主筋にあたる今田万次郎(吉太朗)のためにお家の重宝である名刀「青江下坂」を取り返し、万次郎に渡すため古市の遊女屋油屋を訪れますが、万次郎と行き違いとなり、家来筋で料理人の喜助(福之助)に刀を預けます。一方、貢と恋仲の油屋遊女お紺(米吉)は、貢のために折紙(鑑定書)を手に入れようと、敵方を油断させるためわざと貢に偽りの愛想尽かしをします。さらに意地悪な仲居の万野(壱太郎)にまで罵倒された貢は、怒りのあまり次々と人を斬り・・・。


何度観てもあまり後味のよい演目とは言えません。
貢ってば本当にワキが甘いし、いろいろと気づかなさすぎだし、万野はともかく(←)お鹿ちゃんまで殺されるの本当に不憫で理不尽。
しかもあんなに人を殺しておいて、最後「めでたしめでたし」みたいな感じになるのもいかがなものか、と思います。
この日は親子観劇デイ?だったのか、小学生くらいのお子達と保護者の方というペアが客席に多数いらして、開演前にはお父様がお嬢さんにイヤホンガイドのつけ方教えていらしたり微笑ましかったのだけど、貢のあの血の惨劇をちびっこたちに見せていいのかと心配になりました。

片岡仁左衛門さんの監修で虎之介くん貢は教えられたことをしっかりきっちりやっていて好感。
お顔立ちもあってかなり若い造形という印象でしたが、万野の嫌味をぎりぎりまで耐えた後のあのキレッぷりを思うとこれもアリかなと。
声もよく出ていて立役、女形どちらもできるし、これからも楽しみな花形役者さんです。

米吉くんのお紺はとにかく綺麗。
出てくるだけで場がパッと華やかになって目が惹きつけられます。
所作も綺麗で、虎之介くん貢が若いので少しお姉さんに見えましたが、ひたすら貢の助けになりたいと願ういじらしさが切ない。

お紺もできそうですが今回は万野にまわった壱太郎くん。
ご本人はニンではないと思っていらっしゃるようですが、いえいえどうして、さすがの安定感。
意地悪でイヤな女だけど為所のある役で私は好きです(元々悪役フェチでもあり)。
かつての秀太郎さんのように持ち役にしていただきたいところです。

福之助くんの喜助がしっかり”喜助”で感心。
所作にも口調にも忠義の気概が感じられてよき。
これまで観た福之助が演じた役の中で一番好きかもしれません。

そして
猿弥さんお鹿ちゃん出てきた瞬間爆笑してしまいました(これが一番楽しみだったので)。
が、愛嬌はあってもお化粧含めてわざとらしく笑いを取ることなく、存外おとなしめで真面目なお鹿ちゃんで、それがまた哀れを誘います。



2025hanagata6.JPG

幕間に所作板設置したりスッポン確認されていました



於染久松色讀販 お染の五役
出演:中村壱太郎  中村虎之介  中村米吉 ほか
(上演時間: 45分)


お染・久松の恋模様を舞踊仕立てで描く演目。
松プロ、桜プロともに中村壱太郎くんが五役を早替りで演じますが、演出が少し違っていて、桜プログラムは、お染・久松・お光・雷・
土手のお六の五役。松プロは雷がなくて鬼門の喜兵衛がIN。

早替りについては「ああ、ここで入れ替わったんだな」とわかりつつも、その早さ鮮やかさに驚いたり。
客席からは時折どよめきが起こっていました。
2階席の後ろの方には外国人の方がたくさんご覧になっていたのですが「さっき出てた人と同じ人ですよ」と教えたくなりました。
雷はあまりにつくり込み過ぎて、顔はお面?だし、違う人がやっていてもわからないなぁと思ったり
いずれにしても45分ほぼ出ずっぱりの壱太郎くん お疲れさまでした。

間狂言的な猿回し夫婦 虎之介くんと米吉くんがとてもやわらかな雰囲気でよいアクセントでした。


2025hanagata7.JPG

ランダムプレゼントの栞は壱太郎くんでした



2025hanagata8.JPG

4人と一緒に撮れるフォトスポットあったり



2025hanagata2.jpg



2025hanagata9.jpg

夜見る南座はいつも華やか



やっぱり松プロも観たかったな のごくらく地獄度 (total 2493 vs 2494 )


posted by スキップ at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする

2025年03月01日

すぐそこに待つ未来へ 「宝塚音楽学校 第111期生文化祭」


2025bunkasai1.jpg


本日は宝塚音楽学校 第111期生の卒業式が執り行われ、39名の新タカラジェンヌが誕生しました。
4月19日に星組公演で初舞台を踏む彼女たち。一足お先に卒業記念公演となる文化祭を観ることができました。
この舞台に笑顔で立つまでにどれほどの汗と涙を流したのだろうと、音楽学校文化祭を観るといつも思います。


宝塚音楽学校 第111期生文化祭
総合演出:三木章雄
出演:宝塚音楽学校 第111期生 39名

2025年2月22日(土) 4:00pm 宝塚バウホール 11列上手
(上演時間: 2時間40分/休憩 15分x2)



2025bunkasai4.jpg



第1部 日本舞踊・予科生コーラス・クラシックヴォーカル・ポピュラーヴォーカル
第2部 演劇「A MONOLOGUE Vol. Ⅴ」
第3部 ダンスコンサート

という例年と同じ3部成。
一つの部が終わるたびに、プログラムの出演者と生徒の顔写真とを照らし合わせる作業に忙しい・・・周りの皆さんほぼ同じ作業(^^ゞ

2年間の集大成ともいえる
舞台。
歌やダンス、それぞれ得意分野はあるにしても、若さとポテンシャル溢れる、そして今持てる力を精いっぱい発揮する舞台は観ていて胸熱でした。
以下は印象に残った場面や生徒さんのメモ。
(  )内は本日の卒業式後に発表された芸名(わからない人は後日追記予定)です。

2025bunkasai2.jpg 2025bunkasai5.jpg



続きがあります
posted by スキップ at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする