雪組のもう一方の別箱は朝美絢さん主演のミュージカル・フォレルスケット。
18世紀 デンマークに実在した医師 ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセの物語です。
”フォレルスケット”ってあまり聞き慣れない言葉だなぁと思っていたら、「誰かを好きになった時に感じるとても幸せなあの感じ」というノルウェイ語で、北欧独特の他言語ではひと言で言い表せない感情を表現した繊細な言葉なのだそうです。
宝塚歌劇 雪組公演
ミュージカル・フォレルスケット 「海辺のストルーエンセ」
作・演出:指田珠子
作曲・編曲:青木朝子 多田里紗
振付:KAZUMI-BOY AYAKO 港ゆりか 擬闘:栗原直樹
装置:國包洋子 衣装:加藤真美
出演:朝美 絢 奏乃はると 真那春人 愛すみれ 白峰ゆり
妃華ゆきの 叶ゆうり 諏訪さき 縣 千 日和春磨
一禾あお 壮海はるま 音彩 唯 ほか
2023年3月1日(水) 11:30 シアター・ドラマシティ 22列下手/
3月2日(木) 11:00 16列センター
(上演時間:2時間30分/休憩 25分)
18世紀中ごろ、デンマーク領ドイツの小さな街アルトナで、啓蒙思想に傾倒し保守的な医療現場を改革しようと奮闘していたの町医者ヨハン・ストルーエンセ(朝美絢)は、ある日、デンマーク王宮を追い出されたものの、再び王に仕える足がかりを探している元侍従長ブランド(諏訪さき)と元側近のランツァウ伯爵(真那春人)から、王の病を治してほしいと持ちかけられます。酒に溺れ、享楽に浸り、時として暴力も振るう若き王クリスチャン7世(縣千)、無能な王を放任し国政を牛耳るベルンストッフ(奏乃はると)をはじめとする宮廷官僚達、我が息子を王位に就かせようとするクリスチャンの継母ユリアーネ(愛すみれ)とその一派、そしてイギリスから嫁いで異国に慣れず、王と不仲の王妃カロリーネ(音彩唯)と、宮廷は「病」に満ちていました。治療の成果を出し、国王の信頼も得て国政の中枢へと昇りつめていくヨハンですが、次第に孤独な王妃に心惹かれていき・・・。

夜明け前のような深く蒼い海辺の景色と波の音で始まる舞台。
宮廷もので衣装は華やか。音楽はフレンチミュージカルっぽくて、「ロミオとジュリエット」の舞踏会のダンスを思わせるシーンも。
冒頭はヨハン、クリスチャン、カロリーネが出会う前のそれぞれの物語が描かれます。
換気やタオルを毎回替えるといった、今では当たり前とされることにこだわって勤務先の病院をクビになり、美貌と賢さを武器に貴族相手の診療で評判を取っているヨハン。
放蕩の限りを尽くした挙句亡くなった父王と、わが子を王にと目論む継母のもとで、幼少時から愛情を知らず、家臣に厳しく躾けれて育ったクリスチャン。
イギリス王の妹として明るく何不自由なく育ち、いつか女王になったら軍隊に入ると屈託なく笑うカロリーネ。
子ども時代のクリスチャンは見ていてとても痛々しいのですが、あんな子ども時代を過ごしたらそりゃ暴君にも育つよなぁと納得できるのに対して、まるで別人のように笑顔の欠片も見せず心を閉ざしたカロリーネの今はもっと痛々しい。
そんなカロリーネだから、自由な心を持つヨハンに最初は反発しても、やがて心惹かれていくのは当然の成り行きのように思えます。
続きがあります