元宝塚歌劇団 月組副組長の夏月都さん。
昨年10月に退団されて以来、最初に選んだ舞台のお仕事が「朗読劇」というのが、いかにもお芝居好き、読書好きのなっちゃんらしい。
「かねてより興味があって、いつか挑戦してみたい分野」だったそうです。
同期の早花まこさんと2人の語り、そして橋沼黎さんのピアノ演奏だけで紡ぎ出される深淵な世界。
聴き応えたっぷりでした。
朗読劇 「手紙」
脚本・演出:仲野好重
出演:夏月 都 早花まこ
ピアノ演奏:橋沼 黎
2023年2月3日(金) 7:00pm アルカイックホール・ミニ 8列下手
(上演時間:2時間/休憩 20分)
第一部 「椅子」 (抄本:江戸川乱歩「人間椅子」より)
挿入曲:運命 死の舞踏 人生のメリーゴーランド リベルタンゴ
第二部 「分際」
挿入曲:オブリヴィオン ノクターン 月光 愛の夢
主よ、みもとに Amazing Grace
という二部構成。
第一部は夏月さん、早花さんともに小紋のお着物で、お二人が朗読する後方には大きな革張りの椅子が置かれていました。
休憩中にその椅子は取り払われ、舞台下手にあったグランドピアノも上手に移されて、お二人は黒いドレスで登場されました。
第一部 「椅子」
祖母の一周忌法要のため実家に帰省したナツ(夏月都)とマイ(早花まこ)の姉妹は、母からお蔵にある祖母の遺品の花瓶を持ってくるように言われ、幼い頃によく遊んだ蔵に入ります。二人はそこで、祖母が好んで使っていた小さなテーブルを見つけ、その引き出しの中に、原稿用紙に書かれた分厚い手紙を発見します。ナツは声に出してその手紙を読み始め・・・。
入口でいただいたパンフレットを読まないまま始まったのですが、祖母宛の手紙をナツが読み進める中で、「椅子の中に人間が入る空間をつくり・・・」というくだりで、「これ『人間椅子』じゃない!江戸川乱歩の」と気づきました。
ただ、そういうアウトラインだけは知っていましたが、実際に読んだことはなく、結末も知りませんでしたので、どんどん引き込まれて聴きました。
最後のオチ(というのか?)には、「あー、そういうこと」となりました・・・が、2通目の手紙に書かれた結末(先に送った私の”創作”はどうでしたか?批評してください、というもの)が事実なのか、それとも1通目にあった、椅子の中に入った「私」が自分に座って著作を書く夫人(ナツとマイの祖母)に恋焦がれたという話の方が真実なのかが曖昧というか、その判断は聴き手に委ねられているという印象でした。このあたり、原作ではどのようなニュアンスなのか、読んでみたいです。
朗読のお二人がはけた後、最後にピアノの橋沼黎さんが下手のピアノの前から上手袖へはける時、舞台上の大きな椅子をちらりと見て通るという、意味深な演出がありました。
続きがあります