
ベルトルト・ブレヒト作、クルト・ヴァイルの音楽で名作と名高い「三文オペラ」(1928年初演)をベースに、鄭義信さんが舞台をロンドンの貧民街から終戦後10年の大阪・砲兵工廠跡に置き換えて描く作品。
歌も台詞も、全編大阪弁で綴られる音楽劇です。
「てなもんや三文オペラ」
作・演出:鄭義信
原作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:クルト・ヴァイル 音楽監督:久米大作
美術:池田ともゆき 照明:増田隆芳 衣装:半田悦子
出演:生田斗真 ウエンツ瑛士 福田転球 福井晶一
平田敦子 駒木根隆介 根岸季衣 渡辺いっけい ほか
演奏:朴勝哲
2022年7月22日(金) 1:00pm 森ノ宮ピロティホール J列下手
(上演時間: 3時間5分/休憩 25分)
旧大阪砲兵工廠跡で鉄くずを掘り出して売り払うことを生業とする「アパッチ族」の頭領 マック・ザ・ナイフ(生田斗真)がポール(ウエンツ瑛士)と結婚式をあげるところから物語は始まります。
相手が男であろうとが女であろうが気にしないマックですが、乞食の友商事を経営するポールの両親・ビーチャム(渡辺いっけい)とシーリア(根岸季衣)は大反対。マックは警察に逮捕させようとするピーチャムの企みを知り、かつての恋人で娼婦のジェニー(福井晶一)の店に逃げますが、ジェニーに裏切られ、逮捕されてしまいます・・・。
有名な「三文オペラ」ですが、実は観たことがありません。
それでも「ソロモン・ソング」はじめクルト・ヴァイルの音楽は耳馴染みがあって、あのメロディに大阪弁が乗るのが不思議な感じでした。ただ、ソロ、コーラス問わず歌唱は全体的に歌詞が聴き取り難いのが残念だったかなー。
そんな中、福井晶一さんの歌だけが際立って別格感あって、歌詞も台詞もきっちり届く。ジェニーのいでたち含めてさすがの存在感でした。
終始ワイワイガヤガヤ、猥雑さ満載で笑い(というかギャグ?)も絶えず、警察に追い込まれてもとぼけた雰囲気で展開する物語がドラスティックに転換する二幕後半。
南方戦線での悲惨な体験と自分の犯した罪を吐露し、死刑を受け入れるマック。
絞首台に上がる直前、無謀な戦争を始めた者の責任を訴える長いモノローグ。
そして結構リアルに描かれる絞首刑。
・・・ここで終わるとかなり神経消耗するのですが、その後、1年後ぐらい?の、マックとの赤ちゃんの乳母車を押したルーシー(平田敦子)とポールのほっこりするシーンがあって、哀愁と温かさが滲む精霊流しの灯りに救われるような、エモーショナルなエンディングとなっていました。
後で調べたところ、このあたりは、女王陛下の恩赦でマックは助かる原作とは違う鄭義信さんのオリジナルなのだとか。
続きがあります