2021年10月13日

あなた以外に誰を男と呼べばええの 「近松心中物語」


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近松門左衛門の「冥途の飛脚」をベースにした秋元松代さんの名作「近松心中物語」。
蜷川幸雄さんの演出で1,000回以上も上演された作品ですが、何といっても太地喜和子さんの梅川が忘れられない鮮烈な印象。2018年にはいのうえひでのりさん演出でシス・カンパニー版が上演されました(梅川は宮沢りえさん →こちら)。


今回この戯曲に挑むのはKAAT芸術監督の長塚圭史さん。
KAATの今期のシーズンテーマを「冒(ぼう)」と掲げていることもあって、蜷川さんが約80人の出演者でつくられた作品を19人でやろうという冒険もされるのだとか。


KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
「近松心中物語」
作: 秋元松代
演出: 長塚圭史
音楽: スチャダラパー
美術: 石原敬   照明: 齋藤茂男   衣裳: 宮本宣子
振付: 平原慎太郎   所作指導: 花柳寿楽
出演: 田中哲司  松田龍平  笹本玲奈  石橋静河
綾田俊樹  朝海ひかる  山口雅義  石倉三郎 ほか

2021年10月10日(日) 1:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
1階D列(2列目)センター
(上演時間: 2時間20分)



劇場に入ると、客席に向かって傾斜のついた八百屋舞台以外は何もない空間。ホリゾント下手にぽつんと街灯のようなものがあかりを灯しています。
そこに遊行僧が現れて鉦を鳴らし、それがスチャダラパーのラップへと転調して、人々が三々五々登場して、九重太夫がゆったり歩いてきて・・・と見とれているうちに、いつの間にか上手下手に段差のついた壁面が複数できていて、そこが役者さんたちの出入り口にもなっています。
場面ごとに現れるシンプルな舞台装置は黒衣さんが動かす形。
ただ一つの例外は大詰めの雪の心中の場面。
両側の壁も取り払われて、雪景色の場面そのものが上からすっぽり降りてきます。まるで、死へと向かう二人を天上から迎えに来るよう。
そしてすべてが終わった後には冒頭と同じようにまたあの街灯がポツリと立っていて、遊行僧の鉦。
蜷川演出版で象徴的な猥雑さとは対極をなしたような長塚圭史さんの美意識極めれりといった演出でした。
ホリゾントからハの字型に左右に廓の戸口灯りを並べた光景も幻想的で綺麗だったな。


続きがあります
posted by スキップ at 23:40| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする