2021年09月01日

ちょっとビターな大人のファンタジー 「ウェンディ&ピーターパン」


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「ジョナサン・マンビィが『ピーターパン』を演出」と聞いて「ほぅ?」と思いました。
これまで観たマンビィ氏の演出作品といえば、「るつぼ」(2016年)も「民衆の敵」(2018年)も、苦しくなるくらい重い内容の社会派ドラマという印象が強かったから。
佐藤健くんと石原さとみちゃんの「ロミオ&ジュリエット」(2012年)もありましたが。懐かしい。

ジェームス・マシュー・バリー原作の「ピーターパン」をイギリスの若手作家 エラ・ヒクソンがウェンディの視点から翻案して、2013年にジョナサン・マンビィの演出により英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで初演した作品。今回が日本初演です。


DISCOVER WORLD THEATRE vol.11
「ウェンディ&ピーターパン」
作: エラ・ヒクソン(J.M.バリー原作より翻案)   翻訳: 目黒条
演出: ジョナサン・マンビィ
美術・衣裳: コリン・リッチモンド
音楽: かみむら周平   照明: 勝柴次朗
音響:井上正弘   映像:上田大樹
振付:黒田育世  広崎うらん
出演: 黒木華  中島裕翔  平埜生成  前原滉  富田望生  
山崎紘菜  下川恭平  玉置孝匡  石田ひかり  堤真一 ほか

2021年8月20日(金) 1:00pm オーチャードホール 1階2列(最前列)センター
(上演時間: 2時間50分/休憩 20分)



物語の舞台は1908年のロンドン。
ダーリング家は、ウェンディ(黒木華)と弟たち・・・ジョン(平埜生成)、マイケル(前原滉)、そして体の弱いトム(下川恭平)が子供部屋で戦争ごっこをして楽しく遊び、両親のダーリング夫妻(堤真一、石田ひかり)が温かく見守る幸せな家族でした。ところがトムが高熱を出し、皆が寝静まった夜に子供部屋の窓からピーター(中島裕翔)がやってきてトムを連れ去ってしまいます。
それから1年後、夫妻の仲もギスギスしたダーリング家の子供部屋に再びピーターパンが現れます。ウェンディはジョンとマイケルを叩き起こし、トムを探すためにピーターとともにネバーランドへと旅立つのでした・・・。


物語の流れはよく知られた「ピーターパン」そのもので、無邪気で楽しいことが大好きな少年、だけど子供だからこその身勝手さや残酷さも持っている、というピーターのイメージもそのまま。
ですが、以前観たブロードウェイミュージカル「ピーターパン」(ホリプロのアレです)が、子どもが観ても楽しいファミリーミュージカルだったのに対して、こちらはいささかビター。
「大人楽しめる」というより、「大人楽しめる」舞台という印象です。
ちなみに、ワタクシ、この作品、ずっとミュージカルだと勘違いしておりまして(会場もオーチャードホールだし)、観ている途中で「あ、ストプレ?!」と気づいた次第であります💦


最も強く印象に残ったのは、「女性の自立」という視点。
最初の子供部屋のシーンで弟たちの戦争ごっこにウェンデイが「私も入れて」というと「ダメ!女は戦争ごっこに入れないんだ」と拒否されるところに始まって、随所に当時の女性の立場を描写する言動があります。
そんな中、ウェンディが、ミセス・ダーリングが、そしてティンクがタイガー・リリーが、女の子は、女性は、こうあるべきという世界から飛び出し、もがきながらも自分を縛りつけていたものから解き放たれて前へ踏み出していく姿が描かれています。
「女の子だって負けないわ」と、ウェンディが反発するティンクを説得し、とタイガー・リリーと3人で力を合わせて海賊たちに立ち向かうシーンの鮮やかさ。
ラストのミセス・ダーリングが自分の仕事を見つけてきたと家族に語る場面もこの作品のテーマを象徴しているよう。

ただ、ラストは、何年も経って迎えに来たピーターに「ずっと待ってたけどもう大人になってしまったから一緒に行けない。飛び方も忘れたわ」とウェンディが告げるブロードウェイミュージカル版の切なさが好きでした。


続きがあります
posted by スキップ at 22:59| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする