
ラスト ひとり歌うルディ。
「!」
「これ、“I Shall Be Released” じゃない!ボブ・ディランの!」
「あー、映画のタイトル、この曲の歌詞(Any day now, any day now I shall be released)から来てるのか!」と気づく(遅い💦)。
2012年に公開されたアメリカ映画「チョコレートドーナツ」(原題: ANY DAY NOW)
1970年代のアメリカの「障がいを持ち、母親に育児放棄された子どもと、家族のように過ごすゲイ」という実話をもとにしたこの映画の、世界初舞台化です。
映画は未見。
「ゲイのカップル」「ダウン症の子ども」というキーワードだけを知った上での観劇でした。
PARCO THEATER OPENING SERIES
「チョコレートドーナツ」」 ANY DAY NOW
Based on the motion pictures “Any Day Now”
原作: Travis Fine/George Arther Bloom
翻案・脚本: 谷賢一 訳詞: 及川眠子
演出: 宮本亞門
音楽監督: 横山英規 美術: 乗峯雅寛
照明: 佐藤啓 振付: 大村俊介(SHUN)
出演: 東山紀之 谷原章介 堀部圭亮 八十田勇一 妃海風 まりゑ
高橋永/丹下開登(ダブルキャスト) モロ師岡 高畑淳子 ほか
2021年1月22日(金) 1:00pm シアター・ドラマシティ 3列下手
(上演時間: 2時間20分/休憩 20分)
物語の舞台は1979年のアメリカ カリフォルニア。
シンガーを夢見ながらショーパブで働くドラァグクイーンのルディ(東山紀之)は客として店に来た、ゲイであることを隠して生きる地方検事のポール(谷原章介)と恋に落ちます。ルディのアパートの隣室に住む、ネグレクトを受けているらしいダウン症の少年マルコ(高橋永)の母親が逮捕され、マルコを施設に入れたくないルディはマルコを引き取り、“いとこ”同士と偽ってポールの家で共に暮らし始めました。まるで本当の両親のようにマルコを愛し、大切に育てた二人でしたが、ゲイのカップルであることを周囲に知られ、二人の関係を偽ったことが原因でマルコは家庭局に連れて行かれてしまいます。絶望の中、「今こそ世界を変える時」と、差別と偏見で奪われたマルコを取り戻すために二人は裁判に挑みます・・・。
40年以上前の話とはいえ、性的マイノリティや障がい者への偏見や差別は、あのアメリカですらこんなにも・・・と思わずにはいられませんでした。多分それは時を経て、国を変えても変わらない「今の現実」でもあると感じるのです。
ハッピーエンドとチョコレートドーナツが大好きなマルコ。
共に暮らし始めたころの三人が本当に幸せそうで楽しそうで・・・映像作品を観ているような演出が印象的でした・・・このシーンが幸せそうであればあるほど、2幕の法廷シーンの緊迫感と背筋がヒヤリとするような冷たさが一層増幅される感じ。
マルコが誰と一緒にいるのが幸せか、というのは明らかなのに、現実の厳しさはそれを許さず、“ゲイのカップル”への偏見は根強く、理で覆われた法の壁は厚く冷たい。
続きがあります