2020年11月03日

もしもこの世界が劇場なら 月組 「ピガール狂騒曲」


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シェイクスピア喜劇の最高傑作と言われる「十二夜」の世界を、ベル・エポック(輝かしき時代)と謳われた古き良き時代のパリ・ピガールに置き換え、ミュージック・ホール ムーラン・ルージュを舞台に、その創設者で支配人の シャルル・ジドレール、作家のウィリー、画家のロートレックなど実在の人物をからませ、華やかなレビューシーンも織り交ぜて描いた明るく楽しい祝祭劇。

これ、何回でも観たくなるやつです。


宝塚歌劇 月組公演 
ミュージカル 「ピガール狂騒曲」 ~シェイクスピア原作「十二夜」より~
作・演出: 原田諒
作曲・編曲: 玉麻良一
振付: 羽山紀代美  麻咲梨乃  AYAKO  百花沙里  
装置: 松井るみ   衣装: 有村淳


出演(松本悠里さん以外)、観劇日時は「WELCOME TO TAKARAZUKA」と同じ (こちら
千秋楽ライブ中継レポはこちら
 

1900年 万国博覧会が開催された年のパリ。モンマルトルの丘の麓の歓楽街ピガールが物語の舞台。
母を亡くしたジャンヌ(珠城りょう)が借金取りのギャング一味から逃れるため髪を切り男装してジャックと名乗り、ミュージック・ホール ムーラン・ルージュに仕事を探しに来ます。支配人のシャルル(月城かなと)は経営不振を打開するため新作レビューを打ち、人気作家ウィリー(鳳月杏)の妻ガブリエル(美園さくら)を主役に据えようと考えており、ジャックにガブリエルの出演承諾を得ることができたら秘書として雇うと告げます。ウィリーのゴーストライターに嫌気がさし離婚を申し出たガブリエルは交渉に来たジャックにひと目ぼれし・・・。


ジャンヌが男装して女性であることを隠してムーラン・ルージュで働く
ジャンヌには瓜二つの兄がいる(双子ではなくて腹違いだけど)
という2点が「十二夜」からのプロットですが、思った以上に「ちゃんと十二夜」でした。
そして、主役とはいえこの男装する女性=ヒロインに、現在の5組トップの中でも最も男らしくてたくましい珠城りょうさんをもってくるというのが何と言ってもすごい(笑)。

♪もしもこの世界が劇場なら 人は誰もが道化役者 
という主題歌の歌詞が「この世は舞台 男も女も役者にすぎない」というシェイクスピアの言葉を思い起させます。シャルルが「恋はまことに影法師、いくら追っても逃げて行く・・・」とシェイクスピアの言葉を引用したりもして、原田先生のシェイクスピアへのリスペクトを感じます。

ムーラン・ルージュの主であるシャルルを通じて、舞台への愛を込めているところもとても好き。
バックステージものにもなっていて、華やかなレビューシーンはもとより、レッスン風景や化粧前なども描かれ、舞台好きの心をくすぐります。
レビューの場面で、舞台奥が鏡になって客席の私たちが映し出される演出は蜷川幸雄さんのシェイクスピア劇を思い出しました。

ジャンヌと兄のヴィクトールを演じ分けた珠城さんはもちろん、シャルル、ウィリー、ロートレックという3人のイケおじをはじめ、個性豊かで芝居巧者の月組の面々がイキイキと物語の中を闊歩して、やりすぎず程よく散りばめられるアドリブはとても楽しく、キャッチーな楽曲、センスよい衣装、素敵な舞台装置、そして多幸感に満ちたハッピーエンディングと何回観ても楽しくて幸せな気分になる舞台。
つまり、私はこの作品が大好き、ということです。 
唯一惜しむらくは、ガブリエル以外に娘役にこれといった役がないことかなぁ。


続きがあります
posted by スキップ at 22:35| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする