
ジョージ・オーウェルの「1984年」(1949年刊行)とともにディストピア小説の両輪とも言われる作品ですが、今年、その2本が相次いで舞台化されたのは何とも意味ある符号のように思えます。
つくり手である演劇人の危機感の表れ、現代社会への警鐘なのでしょうか。
「華氏451度」
原作 :レイ・ブラッドベリ
上演台本: 長塚圭史
演出: 白井晃
音楽: 種子田郷
舞台美術: 木津潤平 照明: 大石真一郎
映像:宮永亮、栗山聡之
出演: 吉沢悠 美波 堀部圭亮 粟野史浩
土井ケイト 草村礼子 吹越満
2018年11月4日(日) 12:00pm 兵庫県立芸術文化センター
阪急中ホール 1階D列(最前列)センター
(上演時間: 2時間)
「華氏451度」とは紙(書物)が燃える温度(摂氏だと233度)。
物語の舞台は徹底した思想管理体制のもと、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会で書物を読むことも所持することも禁じられた近未。
本を所持する人を摘発し、書物を燃やす「ファイアマン」として模範的なモンターグ(吉沢悠)は、大人びた少女クラリス(美波)との交流や、蔵書を摘発しに行った家の老女(草村礼子)との出会いを通じて、これまでの生き方に疑問を感じ始めます。モンターグは仕事の現場から隠れて持ち出した数々の本を読み始め、社会への疑問が高まっていきますが、妻ミルドレット(美波2役)から告発され、上司ベイティー隊長(吹越満)から追及を受けて追われる身となります・・・。
舞台三方を取り囲むように、天井までぎっしりと本で埋め尽くされた巨大な書棚にまず圧倒されます。
ここにプロジェクションマッピングで本の背表紙やTVの液晶画面などが映し出されます。
ファイアマンたちは書棚から無造作に本を抜き出し、火炎放射機で燃やします。床に散乱に積もっていく白い書物・・・。
ラストのすべてを包み込むような大きな満月。神秘的な鹿の姿も印象的でした。
舞台美術の木津潤平さんは存じ上げない方だと思って調べたら、建築家の方なのだとか。
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