
「水木しげる先生の、ある一つの原作の舞台化でも、評伝でもありません。大切にしたいのは、水木先生の人生観、世界や不思議との関わり方です。膨大な作品群から、登場人物や言葉、エピソードをお借りして、一つの物語に編み上げます。私というフィルターを通して出てくるものが、果たして水木作品と言えるのか。根拠は霊感でしかありませんが、オリジナルストーリーでありながら、水木しげる原作としか言えない演劇作品が目指すところです」
とフライヤーノートの前川さん。
「ゲゲゲの先生へ」
原案: 水木しげる
脚本・演出: 前川知大
美術: 堀尾幸男 照明: 原田保
音楽: かみむら周平
出演: 佐々木蔵之介 松雪泰子 水田航生 水上京香 手塚とおる
池谷のぶえ 浜田信也 盛隆二 森下創 大窪人衛 白石加代子
2018年11月3日(土) 1:00pm 森ノ宮ピロティホール C列センター
(上演時間: 2時間)
舞台は平成60年の日本。
出生率が極度に低下し、妊婦は政府の管理下に置かれ、生まれた子どもも取り上げられてしまいます。管理された都市部から逃れて過疎の村のあばら屋にやってきた忠(水田航生)と妊娠中の恋人 要(水上京香)は、この家に住む根津(佐々木蔵之介)と出会います。この家に30年住んでいるという根津は、少年時代の辛苦から魂を半分失い、花子(松雪泰子)、おばば(白石加代子)、豆蔵(森下創)に拾われて半妖怪となったのでした。その頃都市では、突如出現した謎の怪物によって混乱していました・・・。
「ゲゲゲの鬼太郎」をテレビで観たことはあっても、原作を読んだことはなくて、水木しげるさんの他の作品も読んだことのない不肖スキップ(ちなみに朝ドラ「ゲゲゲの女房」も見ていませんでした)。オリジナルストーリーとはいえ、どの部分に水木作品が採り入れられているとか反映されているとか、正直なところよくわかりませんでした。
全体の感触としては、イキウメの、人と人外のものがシームレスに行き交う世界観はそのままに、よりファンタジー寄りにした作品という印象。
科学や理性では計り知れない存在を見る目がやさしく、ちょっぴりユーモラスでもあって、観終わって温かい気持ちになる楽しい舞台でした。
いつものイキウメ=前川作品の、真実を突きつける、現代を切り込むようなテーマ性はさほど感じられないものの、出てくる妖怪たちは現代社会への風刺をまとっていて、このあたりは私が「ゲゲゲの鬼太郎」からイメージする水木ワールドであり、前川作品とも共通する世界観です。
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