2020年10月28日

朗読劇の枠を超越した舞台 「ハロルドとモード」


haroldandmaude.jpg黒柳徹子さんがかねてよりモード役を熱望していたという作品。朗読劇という形での上演です。
1971年に公開されたアメリカ映画「ハロルドとモード/少年は虹を渡る」をもとにした作品で、映画と同じくコリン・ヒギンズの脚本。これまでにも何度か舞台化されているということですが、私のアンテナには全く引っかかれず、もちろん映画も観たことがなくて初見でした。


「ハロルドとモード」
作: コリン・ヒギンズ
上演台本・演出: G2
音楽: 荻野清子  美術: 伊藤雅子  照明:沢田祐二 
衣装: 十川ヒロコ  黒柳徹子衣装:大 野美智子
出演: 黒柳徹子  生田斗真  趣里  浜田信也  相島一之  秋本奈緒美
演奏: 荻野清子

2020年10月15日(木) 2:00pm シアター・ドラマシティ 5列センター
(上演時間: 1時間40分)



物語: 狂言自殺を繰り返す愛に飢えた19歳の少年 ハロルド(生田斗真)は、ある日、他人のお葬式に参列した教会で、モード(黒柳徹子)という破天荒な79歳の女性と出会います。何度か偶然の出会いを重ねるうち、ハロルドはモードから生きることの楽しさを学び、次第にそのパワフルな生き方に惹かれていきます。周囲の人々が二人の交際に反対する中、ハロルドは、モードの80歳の誕生日パーティーを開き、プロポーズしようと・・・。


「朗読劇の枠を越え、ビジュアル演出や生の音楽演奏などを駆使し、上質のエンターティンメントに仕上げます」というG2さんの言葉どおり、朗読劇というよりまるでワンシチュエーションの演劇を観るような感覚でした。

荻野清子さんの奏でるピアノの生演奏とともに幕が開くと、舞台には横一列に長いテーブルと椅子が6脚。
一つずつデザインが違う椅子の横には、メイクして衣装に身を包み、きちんと拵えをした6人の役者さんたちが立っています。
もうこの時点でわぁ~♪となってワクワク。


センターの2人-ハロルドとモード-を残して、他の役者さんは袖にはけて、出番の時に出てきて椅子に座るというスタイル。
ハロルドのママが秋本奈緒美さん、ママが連れてくるハロルドのお見合い相手(3人役替り)を趣里さん、軍人の叔父さんを相島一之さん、ハロルドの主治医を浜田信也さんという布陣。ハロルトとモード以外は場面に応じて何役か兼ね、その役ごとに衣装も変えていらっしゃいました。

朗読劇なので皆さん台本を机上に置いて読むスタイルなのですが、もちろん台詞は入っているものと思われ、身振り手振りを交え、時には相手に視線を向けての演技です。
セットチェンジや場面転換がなくても、ちゃんとシーンが変わったことが伝わって、周りの景色が見えるよう。
役者さんたちの台詞のリズムに寄り添うようなピアノ演奏の間合いも絶妙でした。

哀しく切ない結末で泣いてしまったのだけれど、不思議と温かい気持ちにもなる作品。
ハロルドがモードに託された鍵の束をちゃんと受け継いで、自由な心で前を向いて生きる未来を信じられるせいかな。


自由で剛胆で生きることを楽しんでいるチャーミングなモードが黒柳徹子さんと重なります。
知り合ったばかりのハロルドを他人の車に乗せて突っ走るモード。
写真が入っていない写真立てを自宅に飾るモード。
「どんなに愛する人でもその記憶は長い年月の中でぼやけて行くでしょ。でも写真は生々しいままなのがイヤなの」と。
この写真のことやビザのくだりなどで、決して平坦な人生ではなかったことが忍ばれますが(ナチスの収容所に入っていた過去があるらしい by 映画版)、そんなことはおくびにも出さず、思いのままに今を生きる姿には、ハロルドでなくても惹かれるでしょう。

昨今のTVで拝見するとおり、滑舌に若干不安はありますが、とてもかわいくてパワフルな徹子さんのモードでした。


80歳の誕生日に自ら死を選ぶモードですが、それはハロルドと出会う前から決めていたことなのか、ハロルドに出会ってこそのことなのか、私には答えが出せずにいました。
最初に教会のお葬式で出会った時、モードは「今日の人は80歳ね。ちょうどいい。75歳だと早いし、85歳だと生きすぎる」と言っていて、それは自分も80歳で死ぬつもりだという伏線だったのかなとも思ったり。
観劇後に映画のストーリーを調べたら、「モードが自分の人生になくてはならない存在であると確信したハロルドは、デートの後に彼女に求婚する。2人は年齢差をものともせず、その夜に結ばれた。ところが、人生に満足したというモードは若いハロルドのためを思って、80歳の誕生日の日に服毒自殺を遂げた」という記述があって、「!」となった訳です(このあたり、今回の朗読劇には描かれていなかったと思う)。その答えは映画の中にあるのかもしれません。


生田斗真くんは、ちゃんと19歳に見えるところがまずすごい。
フリルのついたレースのシャツにベストに蝶ネクタイとか似合いすぎ。
母親の気を引きたくて狂言自殺を繰り返すハロルドの孤独感や繊細さとアンバランスな行動を説得力ある演技で牽引。
モードと出会って、惹かれて、それまで無気力だった目がキラキラ輝いて、表情までどんどんやさしく愛おしくなっていくハロルドが印象的でした。
ギターを弾き語りするシーンがあって、歌声が聴けたのもうれしくて、「さすがジャニーズ、ギター持つ姿もキマってる」と思ったのですが、聞けば最初からギター弾けた訳ではなくて今作に出演するにあたって練習したのだとか。そういうとこ!

愛情深いのか無関心なのか過保護なのかほったらかしなのか、な美人ママ 秋本奈緒美さん、ハロルドのお見合い相手を三人三様演じ分けた趣里さん、何役もこなした上に素敵なハーモニカ演奏も聴かせてくれた相島一之さん、侵略者でも未来から来た人でも超能力者でもなく、お医者さんとか警察官とかフツーの人間が新鮮だった浜田信也さん・・・よいカンパニーでした。


この日は大千秋楽(といっても大阪公演2日間だったけれども)。
徹子さんや斗真くんが互いに向かって両手をキラキラさせて健闘を称え、皆さん笑顔でオールスタンディングとなった客席の拍手に応えるカーテンコール。
観る方も幸せだったし、演じる方もきっと充実感いっぱいだったのだろうなと思える舞台でした。


冒頭のフライヤーの画像をネット上で見かけた時、「え~、こんなの持ってないし見たこともない~💦」と思ったのですが、観劇当日劇場で1人1枚ずつ配布。近ごろこんなパターン多いですね。しばらく劇場に行く機会なくてフライヤーも集められなかったから。




朗読劇でも舞台転換なくても少人数でも いい芝居はイイ のごくらく度 (total 2171 vs 2169 )


posted by スキップ at 18:09
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