2019年11月03日

悲劇の連鎖 「オイディプス」


oedipus.jpgオイディプスはスーツにネクタイ
イオカステはドレスにハイヒール
そしてテーバイは、疫病に襲われ危機に瀕する近未来都市。


シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.7
「オイディプス」
原作: ソポクレス
翻案・演出: マシュー・ダンスター
翻訳: 木内宏昌
美術・衣裳: ジョン・ボウサー
振付: シャーロット・ブルーム
照明: 勝柴次朗   音楽: かみむら周平 
出演: 市川海老蔵  黒木瞳  森山未來  高橋和也  中村京蔵  
谷村美月  柳本雅寛  湯浅永麻  平原慎太郎  笈田ヨシ ほか

2019年10月19日(土) 1:00pm シアターコクーン 中2階 ML列
(上演時間: 1時間50分)



「父を殺し、母を娶るであろう」という恐ろしい予言から逃れるため、放浪の旅に出た古代ギリシャ・コリントスの王子オイディプス(市川海老蔵)が旅先のテーバイで英雄となり、先王ライオスの妃イオカステ(黒木瞳)を妻に迎え国王の地位につきます。やがて蔓延する疫病から国を救うため、神託に従い、先王殺害の犯人捜しを始めますが・・・。


客電が落ちると大きな警戒音と赤い回転灯の光の中、大きな扉から現れる白い防護服とガスマスクの人々。
これが日本での初演出作となるというイギリスの演出家 マシュー・ダンスターが紡ぎ出すギリシャ悲劇の世界は、人名や地名はそのままに、現代とも近未来とも取れる空間で展開します。
疫病に襲われて生あるもの皆が危機に瀕する都市テーバイを、気候変動や自然災害に苦しむ私たちの日常に直結する場として描き出しているのだとか。そこには核の脅威も含まれているのかもしれません。

「ギリシャ悲劇」「歌舞伎」「ダンス」のコラボレーション。
これまで何作か観てきた「オイディプス」とあまりにも雰囲気が違っていて最初は少しとまどったのですが、基本的にストーリーには忠実でよく知っている物語。それがこれまで観たことのない演出でこんなふうに斬新になるのはかなり刺激的でおもしろかったです。


「近未来」と書きましたが、私たちが今生きている世界と重なることが多々。
傲慢な権力者であるオイディプス、「次」を狙っている弟のクレオン、そして、まるで流浪の難民を思わせるテーバイの市民たち。

この市民たち=コロスがこの作品の特徴でもありとても重要な役割を担っていて、リーダー役の森山未來くんを筆頭に、平原慎太郎さん、柳本雅寛さんといったダンサーが繰り出すしなやかで美しく、身体性の高い動きで、テーバイの人々の不安や恐怖を言葉よりも雄弁に物語っていて、あのダンスシーンだけでもずっと観ていたいほど。


スーツが似合う市川海老蔵さんは、自信満々で傲慢でともすれば無神経な男ともとれる造形で、それが却って後半の真実に追い詰められて権力も妻も失い、絶望の中、自らの目を潰すオイディプスの悲劇性を高めていました。
前半、鼻もちならなさすぎて、「先王を殺した男を何としても見つけるのだ」とオイディプスが言うたびに「それ、あんたやで」と心の中でツッコんでしまいました(笑)。
台詞の滑舌は歌舞伎の時と変わらないかな~と思うところがありましたが、やはり華のある役者っぷりです。
会場中が固唾をのんで見守る中、血まみれの白い衣装を長く引きずって舞台を横切る姿は壮絶な美しさ。

イオカステの黒木瞳さんはよくも悪くも映像と変わらない印象。
宝塚ご出身ですし、実際舞台も観たことあるのですが、やはり映像の女優さんというイメージ。
イオカステの自殺シーンがかなりリアルで、外国の演出家だなぁと思いました。

森山未來くんのリーダー。
市民のリーダーなのですが、孤高の存在であまり感情を持っていないような風情。
もちろんテーバイの窮状を憂えているし、オイディプスにそのことを進言したり従ったりもするけれどもどこか醒めている感じ。
神と市民たちとの仲介役のようにも見えて、半神半人といった存在なのかな?
身体表現は相変わらずしなやかで強くて繊細で見惚れます。
ほんとずっと観ていたい(大事なことだから2回言いました)。

この3人以外のキャストをあまり知らずに観たのですが、預言者テイレシアスにピタリとハマった中村京蔵さん、重い秘密を長年抱えて生きてきた老羊飼いの笈田ヨシさんがさすがの存在感でした。


盲となって彷徨い出て行くオイディプスを2人の娘が追うラスト。
後先かまわず走り出した妹のアンティゴネを、年上な分だけ自制が働いたいイスメネが「アンティゴネー!」と呼ぶ声が悲痛に響きます。

このアンティゴネが去年 蒼井優さんで観た「アンチゴーヌ」じゃないかと気づき、悲劇の連鎖に暗澹たる気持ちとなりました。



「DISCOVER WORLD THEATRE vol.7」とフライヤーに書いてあるのを発見して「そんなシリーズがあるんだ。Vol.1から6までは何だろう」と調べてみたら、「『シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズ』として2016年秋からスタート」した企画ということで、2015年5月の「地獄のオルフェウス」(vol.0)から始まって、8作品全部観ていたというね・・・全部大阪で観たから気づかなかったのよ←

discoverworld.JPG



今回はこれ観ようと思い立ったのが遅く、一般発売にチャレンジした上にケチってA席にしたのですが、コクーンの中2階、ほぼ見切れることもなく舞台は結構近くて上々でございました。


未來くんのダンスは大好きだけどたっくさん台詞があるお芝居も観たいなぁ、TVではなく の地獄度 (total 2027 vs 2031 )

posted by スキップ at 22:48
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