2015年12月15日

大阪平成中村座 夜の部 「盲目物語」

nakamurazay.jpgもう12月も半ばだというのにまだ平成中村座のことかって感じですが、11月に観た舞台でこれだけまだ感想をアップしていませんでしたので・・・すでに記憶も薄れがちではありますが。

夜の部は千穐楽1回きりだったのですが、仕事のため「俊寛」には間に合わず、「盲目物語」のみの観劇となりました。

「盲目物語」は2012年9月の松竹座での勘九郎襲名披露興行で、勘三郎さんと玉三郎さんで上演されるはずだった演目。
勘三郎さんが休演となってしまって、差し替えられた「女暫」とともに今回の平成中村座の演目に上がるあたり、中村座の皆さんの勘三郎さんへの強い思いが感じられます。


大坂の陣400年記念 
大阪平成中村座 夜の部 「盲目物語」
作: 谷崎潤一郎
脚本・演出: 宇野信夫
演出: 今井豊茂
出演: 中村勘九郎  中村橋之助  中村七之助  坂東新悟  片岡亀蔵  
坂東彌十郎  中村扇雀 ほか

2015年11月26日(木) 6:20pm 大阪平成中村座 桜席 右側1列


木下藤吉郎が、嫌われても嫌われてもお市の方をあきらめきれず、ついには柴田勝家を攻めることで、お市の方を永久に失ってしまい、その代わりに娘のお茶々を側室にしたという史実の陰で、同じようにお市の方を慕いぬいておちぶれていった按摩の弥市の存在が平行して描かれます。

昭和30年に十七世 中村勘三郎の弥市と藤吉郎、六世歌右衛門のお市の方で初演された作品で、十八代目勘三郎さんの当たり役でもありますが、残念ながらご存命中に観ておらず、谷崎潤一郎の原作も読んだことがないので今回初見。

自慢じゃないけど戦国時代好きとしてはこのあたりの歴史には詳しくて、浅井長政の小谷城も柴田勝家の北の庄城もすぐ言えるもんねーと観ながら、でも弥市という按摩の存在は知らなかったなぁ、と思ったら、谷崎潤一郎の創作だったのですね。同じようにお市の方を思いながら、信長亡き後、権力者として上り詰めていく藤吉郎と物乞いにまで落ちぶれてしまう弥市。
この二役を一人の役者が演じることで、表裏一体のような印象を持ちました。

お市の方に忌み嫌われているのをものともせず、面と向かって帰れ帰れと繰り返し言われても、表情ひとつ変えず微動だにしないでじっとお市を見つめ続ける藤吉郎。
その態度にお市が少し怯えたと見て取るや、「本日はこれにて」と明るく切り変えるあたり、粘着質的な空恐ろしさとともに、やがて天下人となる器の大きさも感じました。
この場の勘九郎さん藤吉郎はまばたき一つせず、穏やかな顔なのに凄味すら感じました。
ずいぶん前に浅草歌舞伎で「傾城反魂香」をやった時、見張りを命じられた勘九郎さん(当時勘太郎くん)又平が花道手前でまばたきひとつしないでぴくりとも動かず揚幕の方をじっと見ていたことを思い出しました。

一方の弥市。
焼け落ちる北の庄城からお茶々を連れ出す時、その手の感触が長年ひそかに恋い慕っていたお市に似ていることに気づいて、これからは自分をずっとそばに置いて欲しいと頼むところに同じように粘着質なものを感じました。
弥市がお市の方の手に触れるとすればそれは按摩をする時で、「療治を」と繰り返し訴えていた中に、お市へ激しい恋心があり、それを秘めながらお市の体に触れていたのだと思うとエロティックでもあり、いかにも谷崎らしい場面だなと思いました。
あんな雰囲気で迫られたら、そりゃ茶々でなくても恐れをなして逃げて行くというものです。

茶々を演じた七之助さんは、幼い姫君の時も可愛かったけれど、やはり淀君になってから、秀吉も手こずらせるような高飛車な女っぷりがお似合いと思いました。
いつか七之助さんのお市も観てみたいです。

そういえば、弥市が北ノ庄城から茶々を連れ出す場面。
まだ幕が開く前で(桜席以外の)客席からは見えないのに、、勘九郎さん弥市が七之助さん茶々をちゃんとおんぶして出て来てバッタリ倒れていました。


ラスト。
琵琶湖のほとり。
物乞いにおちぶれた弥市がひとり侘びしく三味線を奏でていると、紗幕の向こうに琴を弾くお市の方の姿が重なり、舞台奥が開いて夜の闇に大阪城が浮かび上がるという趣向。
美しくも哀しい連れ弾きでした。

ここでさらに、紗幕に浮かび上がる秀吉は勘三郎さんの映像。
客席のどよめきや拍手は一段と高まり、私もぶわっと涙が出てまんまと泣かされてしまいました。
・・が、お芝居の締めくくりの演出としてあれはどうかな、と少し思ったりも。
少なくとも私はお芝居の余韻より、「勘三郎さん、何でいないんだよ」という思いの方が強くなったのでした。


位置情報 千穐楽のためか、開演前には勘九郎さん、3人の子役ちゃんたちとお座敷に座って記念撮影してました。「もっとこっちにおいで」的に手招きして子役ちゃんをすぐそばに寄せたり、やさしいパパの顔だったな。


千穐楽カーテンコールのレポはこちら



思うとも その色人に知らすなよ 思わぬふりで忘するなよ の地獄度 ふらふら (total 1485 わーい(嬉しい顔) vs 1488 ふらふら)
posted by スキップ at 22:54
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