
宙組にはこの人あり 桜木みなと。
バウホール初主演です。
宝塚歌劇宙組公演
バウ・プレイ 「相続人の肖像」
作・演出: 田渕大輔
出演: 桜木みなと 星風まどか 純矢ちとせ 蒼羽りく 松風輝 愛白もあ 春瀬央季/悠真 倫 ほか
2015年10月24日(土) 11:00am 宝塚バウホール 5列上手
20世紀初頭のイングランド。
伯爵家の跡取りであるチャーリー(桜木みなと)は、母の死後すぐに愛人を後妻に迎えた父ジョージに反発して家を出ていましたが、その父が亡くなり、居城であるバーリントン・ハウスを相続することになります。
ところが、ジョージの遺言は、邸以外の財産を譲るには「後妻のヴァネッサ(純矢ちとせ)と彼女の連れ子イザベル(星風まどか)とこの屋敷で一緒に暮らすこと」が条件でした。これを断固拒否したチャーリーは莫大な相続税を支払わなければならないため、祖母ロザムンド(悠真 倫)の言いつけに従い、持参金目当ての花嫁探しをすることになります・・・。
チャーリーとイザベルのラブストーリーなのですが、そこにイザベルを愛するハロルド(蒼羽りく)・・チャーリーの幼なじみでもある・・とその姉でずっとチャーリーのことを想っているベアトリス(愛白もあ)が絡んでいきます。
チャーリーはかつて自分がふっておきながら、ベアトリスがまだ独身と知って、花嫁探しのパーティに招きます。
ただ伯爵の家柄が欲しいためだけに結婚しようとする娘より、自分のことを想ってくれている女性の方がいいと考えたからです。
それは無理からぬことで、実際パーティで家柄目当ての花嫁候補に辟易したチャーリーはベアトリスとの婚約を決めます。愛してはいないけれど少なくとも嫌悪はしていないから。
でも、イザベルと心触れ合い、惹かれるようになって揺れるチャーリー。
これも無理からぬこと。
愛する気持ちは誰にも止められないから。
ベアトリスと婚約する前にイザベルが好きなことをちゃんと自覚すればよかったのだけど、恋はいつもそんなにうまく順番通りにはいきません。
「娘のことは愛してやれなくても、せめてそれを彼女に気づかせないでやってほしい」と静かにチャーリーに言うベアトリスの父エドワード(美月悠)。
チャーリーとベアトリスの場面。
チャーリーはエドワードに言われたとおりベアトリスを傷つけまいとしますが、何かを話そうとすればするほどチャーリーの心が自分にないことを感じ取るベアトリス。
「嵐が丘」のヒースクリフになぞって自分の思いを語るベアトリスが切なくて、思わず涙。
愛し合うものが正義
その愛の前では何ものも抗えない
とは言うものの、そのために何の落ち度もない人が傷つくのはやはりやり切れないです。
だからと言って、たとえチャーリーが自分の気持ちを偽ってベアトリスと結婚しても、二人とも後々不幸になるのは目に見えています。
ベアトリスにとってどんなに辛いことでも、結婚前に引き返すことができた方がよかったのかもしれません。
それでも私はベアトリス派。
だから、イザベルってどうよ?と思ってしまう訳です(笑)。
イザベルは、可愛いばかりでなく快活で芯が強く自分の意見をはっきり口にすることができる聡明な女性。
チャーリーとハロルドが彼女に惹かれるのも納得です。
でも、ハロルドのプロポーズをチャーリーに聞かせた上で、
「プロポーズを受けるべきだと思う?」とチャーリーに聞くなんて。
「なぜ僕にあいつのプロポーズを聞かせた?僕の心を乱すのはやめてくれ!」とチャーリー。
ほんとだワ。
それも、計算ずくではなく、邪心なくやってのけるところが、生まれ持った女子力というか、イザベル おそろしい子っ!
もう一つ。
かつて自分の母ヴァネッサとチャーリーの父ジョージが恋に落ちた話をした時に、「1曲ダンスを踊っただけでこの人特別な人だとわかるんだって」
と話しておいて、話しておいて(←憤りすぎて二度言った)、「ダンス教えてほしいの」って、どういう小悪魔?
しかも、意図してか無意識にかヴァネッサが初めてジョージと踊った時着ていたドレス着て。
イザベル、おそろしい子っ!
ついにみんなの前で自分の本当の心を晒すチャーリー。
「君たちを裏切ったこと、僕は一生後悔して生きていく。それでも、この愛を貫きたい」と。
チャーリーはイザベルと結ばれ、チャーリー家は財産も邸も安泰、ヴァネッサとチャーリー、ヴァネッサとロザムンドも和解してめでたしめでたし・・
なのだけど、ベアトリス・ハロルド姉弟は?
彼女たちにもこの先幸せな未来が待っているよう願わないではいられません。
ぶんすか怒ってる桜木みなとくんチャーリーも、ポジティブすぎるほど能天気だけど姉思いの蒼羽りくくんハロルドも、とても可愛い。
桜木みなとさんは端正なビジュアルに立ち姿も所作も美しくて、いかにも貴族のおぼっちゃまがよくお似合い。
歌も上手いなぁ。
キメ顔したりシリアスになったり、表情豊かな蒼羽りくさんもとても魅力的でした。
このところちょっと不遇かな?の蒼羽さん、当たり役ではないかしら。
ヒロインの星風まどかさんは、ベイビーフェイスが可愛くて、研2らしい幼さも散見されますが、お芝居も歌もしっかり。
トップ娘役候補の道を歩くのだろうなぁ。
いかにも家柄を重んじるイギリス貴族の威厳と風格を漂わせた悠真 倫さんのロザムンド。
歌もお芝居も高値安定、しかも綺麗で色っぽい純矢ちとせさんヴァネッサ。
温かくてユーモラスで気が効いて、こちらもいかにも映画にも出てきそうな典型的な英国執事の松風輝さんのフィリップ。
若いスターを上級生が脇でしっかり支える座組で物語に厚みを加えていました。
春瀬央季さんがダラム家の召使いたちのいつも中心にいて目立っていました。
なんだかチャラ男だったな(笑)。
カーテンコール。
「残すところあと3回となりました。その3回を精一杯楽しみたいと思います・・・どうですか?せーこさん」と純矢ちとせさんに振る桜木みなとくん。
「え~っ ワタシぃ~?」と笑いながら仕方なく前に出てくる純矢さんに「組長さんだから」と小さい声で。
「役が崩壊するから・・・」と言いながらやさしいご挨拶をする純矢さんカワイかったです。
バウ終演後、大劇場の花組公演を観たのですが、終演して出てくると、バウの出待ちでイベントやっていて、桜木みなとくん・七生眞希くんの同期漫才(?)に遭遇しました。
主に七生くんがしゃべっていましたが、2人ともステキ可愛いかった~♪
やっぱりベアトリス&ハロルドが不憫だわ の地獄度


