2015年10月27日

さよなら ありがとう  忘れない  歌舞伎NEXT 「阿弖流為」 -これが最後編-


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新橋演舞場で2回、松竹座で5回観た「阿弖流為」のレポも今回が最後です。
松竹座は公演期間15日間でしたので、その間に5回ということは3日に1回観た計算(笑)。
夢の中にいるような「阿弖流為」祭りだったな、本当に。


松竹創業120周年   歌舞伎NEXT 「阿弖流為」
作: 中島かずき 
演出: いのうえひでのり 
美術: 堀尾幸男  照明: 原田保  衣装: 堂本教子 
音楽: 岡崎司   振付: 尾上菊之丞 
アクション監督: 川原正嗣   立師: 中村いてう 
出演:  市川染五郎  中村勘九郎  中村七之助  坂東新悟  大谷廣太郎  中村鶴松  市村橘太郎  澤村宗之助  片岡亀蔵  市村萬次郎  坂東彌十郎 ほか

2015年10月17日(土) 4:30pm 松竹座 1階2列センター



大千穐楽カーテンコールのレポはこちら



千穐楽って役者さんたちは打ち上げも終わっていますし、芝居的には緩くなりがちな傾向がありますが、この日の「阿弖流為」は、役者さん一人ひとりが気合の入った演技でそれぞれの場面を大切に丁寧に演じ、客席も一場面一場面を愛おしむように見守る、とてもよい千穐楽でした。

全部で7回観た中で、10月12日 夜の部が my best だったということに変わりはありませんが、こと荒覇吐については、この千穐楽が一番凄まじかったです。
このまま続けていけば、七之助さん、本当に荒ぶる神になってしまうのではないかと思ったほど。


■ プロデューサー市川染五郎

演舞場の感想にも書いたのですが、プロデューサーとしての染五郎さんの卓越した能力なしにはこの舞台はあり得なかったのではないかと思います。
「まんが 日本の歴史」に出てきた「阿弖流為の死に田村麻呂が涙した」という一節から、この阿弖流為を主人公にした物語を、という着想がまずすばらしい。(高校生にもなって、まんが?というのはこの際おいておくとしてわーい(嬉しい顔)その染五郎さんの発想に共感して「アテルイ」というすばらしい舞台作品にしてくれた中島かずきさん、いのうえひでのりさんももちろんすばらしい訳ですが。
今回歌舞伎化にあたって、「これを一緒にやるなら勘九郎くん、七之助くん以外ない」と考えたキャスティング力に、自ら出演交渉するプロデューサーぶり。

「阿弖流為」という作品は、主役の阿弖流為のカッコよさは元より、田村麻呂、立烏帽子/荒覇吐、鈴鹿、蛮甲、阿毛斗、稀継、御霊御前・・・みんなに見せ場があって、それがこの作品をより深いものにしていると思います。
優れた脚本、演出のお陰というのはもちろんですが、そこには作品全体を見通して、登場人物一人ひとりを活かすことができる染五郎さんならではのバランス感覚が働いているように思います。
歌舞伎座でやった「陰陽師」の時にも感じたのですが、自分のプロデュースだし、主役だし、といっても決して「俺が、俺が」という感じではないのです。
それでありながらセルフプロデュース力にも長けているので、自分を一番カッコよく見せる術も十分知りつくしていて・・・実際カッコイイ(笑)。

そんな染五郎さんが、周りを巻き込んでいろんなことができる立場、年齢になったこと、とてもうれしいしファンとして誇らしくも思っています。


■ 歌舞伎役者ONLY

「歌舞伎NEXT」として、たとえばコクーン歌舞伎やスーパー歌舞伎Ⅱと決定的に違うのは、この舞台の出演者はすべて歌舞伎役者さんのみだということです。
染五郎さんの「歌舞伎」への思い入れを感じます。

そして、それぞれの役を生きた歌舞伎役者さんたち(含・熊子)がまたすばらしかったよね。
激しい立廻りは元より、ゆったりとした歌舞伎の基本の殺陣、だんまりもあれば見得もする、飛び六方で引っ込みも・・・と歌舞伎としての見どころも満載。
まさに染五郎さんが意図した「混ぜる」舞台でした。


■ 装置、照明

最後なのでこれまであまり書いて来なかった装置や照明について少し。

装置は細部まで拘ったつくり(美術: 堀尾幸男さん)でしたが、基本は書き割りで伝統的な歌舞伎の手法。
これが、いのうえさんお得意の廻り舞台をつかった演出でどんどん舞台転換して、幕前や暗転がほとんどないくらいスピーディ。
このあたりも「混ぜる」精神が息づいていました。
しっかし、かなり傾斜や段差がついた舞台で、よくあんなところであんな高速立廻りを、とワクワクもドキドキもさせていただきました。

原田保さんの照明の美しさは新感線や蜷川幸雄さんの作品、もちろん歌舞伎でも数々観てきましたが、今回も本当に美しかったです。
しかもドラマチック。

御霊御前が随鏡を妖術(?)で亡き者にする場面のあの床に映し出される照明なんて、2階、3階席からでないとわからないようなところまでとても凝っていました。、
・・・この時の萬次郎さん御霊御前の指の形がまたすっごく気合入っていて美しく、「あの指の先から絶対妖しいチカラ出てる」と思いましたね。
舞台を照らすライトが客席の前方列にもあたって、上から見ていると客席の人たちまで舞台に溶け込んでいきそうで、自分がそこに座ると光に包まれて舞台世界の中にいるような不思議な感覚を味わうこともできました。


■ 蛮甲

千穐楽の日ネタについては、カーテンコールのレポに書いてしまったので、ひとつだけ。
胆沢の牢屋の場面。

蛮甲 「あれ?牢屋なのに鍵がかかってる」
阿弖 「牢屋だ・か・ら・だ」

わーい(嬉しい顔)

この物語は、阿弖流為と田村麻呂という、蝦夷と大和の二人の男の魂の結びつきと抗えぬ運命の物語ではありましたが、同じ蝦夷として蛮甲を置いたことで、阿弖流為の生き様がより一層際立ったところがあると思います。

この牢屋での二人のやり取りを観ていて、蛮甲が「阿弖流為と俺はかつては親友だった」と言ったことが決して口から出まかせなどではなく、かつては仲間として友として、心を通じ合わせていたことが垣間見えたような気がしました。
同じ蝦夷としてともに育ち、族長の息子で剣の達人で人望もある阿弖流為を屈折した思いで見ていたであろう若かりし蛮甲が浮かんでくるようで、切なくもなりました。
阿弖流為とはまた別の意味で宿命を背負っているような亀蔵さんの蛮甲、本当に適役だったと思います。


ああ、また長々と書きそうになってきました(笑)。


7回全部が宝物のような時間でした。
毎回とても集中して観て、心震わせ、たくさん涙を流しました。
こんなに夢中になって繰り返し観た舞台は、ワタシ的には「朧の森に棲む鬼」以来です。
(柚希礼音さんのさよなら公演は除く)
「阿弖流為」に出会えてよかった。この「阿弖流為」という舞台にかかわってくださったすべての人に、心からの感謝と精一杯の拍手を贈りたい。

多分「またね」はない舞台。
ありがとう。さようなら。忘れません。
いつまでも観ていたかったです、できることなら。



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松竹座2階ロビーにつき出した仮花道の「鳥屋」
松竹座にまた仮花道が現れるのはいつのことでしょう。



7/5 演舞場初日カーテンコールはこちら
7/5 初日の感想はこちら
7/25 2回目の感想はこちら
10/4 大阪1回目の感想はこちら
10/10 大阪2回目の感想はこちら
10/12 大阪3回目の感想はこちら
10/16 大阪4回目の感想はこちら



<番外編>

歌舞伎NEXT 次回作は、先日のいのうえひでのりさんのトークや、染五郎さんの「次にやるなら悪役」発言などから、すでに「朧」に決まっているのではないかしら、という気配。多分この3人で。

「アテルイ」に負けず劣らず大好きな作品なので望むところではありますが、3年後だか4年後だかの自分のお楽しみのために、主要キャストの配役予想(というか妄想)をあげておきたいと思います。


歌舞伎NEXT 「朧の森に棲む鬼」 配役予想 左はオリジナルキャスト

ライ       市川染五郎       市川染五郎
キンタ      阿部サダヲ       中村勘九郎
ツナ       秋山菜津子       中村七之助
シュテン     真木よう子       坂東新悟 or 中村壱太郎
シキブ      高田聖子        中村梅枝 or 上村吉弥
ウラベ      粟根まこと       澤村宗之助
サダミツ     小須田雅人      片岡亀蔵
イチノオオキミ  田山涼成       坂東彌十郎
マダレ      古田新太        尾上松緑 or 中村橋之助


七之助さんにはツナよりシュテンの方がお似合いの気もしますが、
3人主役とするとやっぱりツナかな。
シキブにぴったりの人がなかなか見当たらなくて、苦肉の策です。
あとマダレ。
正直のところ松緑さんではいささか不満だけど(笑)、
橋之助さんもこのころは芝翫さんになっていらっしゃるから無理かなぁ。
さらに絶対無理とは思いますが、猿之助さんが出ていただけるなら
シキブかマダレでお願いしたい。


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posted by スキップ at 23:57
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