2015年09月14日

イマジネーションに委ねられた恐怖 「ウーマン・イン・ブラック」

wib.jpg英国発ゴシック・ホラーの決定版と言われている作品。
1987年に初演されて以来、世界40余国で上演されているそうです。
日本でも、1992年の初演から再演を重ね、7年ぶり7度目の上演ということですが、私は今回が初見でした。
「すごく怖い」という評判だけは聞いていて・・・。


パルコ・プロデュース公演
ウ-マン・イン・ブラック <黒い服の女>
原作: スーザン・ヒル
脚色: スティーブン・マラトレット
演出: ロビン・ハ-フォ-ド
翻訳: 小田島恒志
出演: 岡田将生  勝村政信

2015年9月9日(水) 7:00pm 森ノ宮ピロティホール C列センター


中年の弁護士 キップス(勝村政信)は若い頃の怪奇な体験にさいなまれ、家族に打ち明けて呪縛から解放されたいと考えています。手助けに雇った若い俳優(岡田)は過去の出来事を芝居にしようと提案。俳優が若き日の「ヤング・キップス」を演じ、現在のオールド・キップスが、キップス以外の周りの人々を演じていきます・・・。


ひたひたと迫り来るような“黒いドレスの女”の気配。
突然響き渡る女の叫び声。
誰もいない部屋で揺れるロッキングチェアの音。

怖い
なるほど怖い
・・・のかな?

あの「開かずの間」のようなドアの前にヤング・キップスが立った時、突然響き渡る女性の叫び声には、客席からも悲鳴のような恐怖の声があがっていました。
私も声こそ出ませんでしたが、「目!!!!」となったのは事実。
でもそれは突然の大きな声に「驚いた」のであって、「怖かった」のではなかったのではないかな、と思います。
たとえばあれが銃声であったとしても同じように感じたのではないかと。
突然ドアが開いた時しかり、ロッキングチェアの揺れる音しかり。
あの結末も、途中から何となく想像がつきます。
ま、私自身があまり幽霊とか怖がる方ではない、ということにも起因しているかもしれませんが。この物語の本当の怖さは、その現象やキップスの体験そのものではなく、それを引き起こしたのが人間の憎悪や他人の幸せへの嫉妬という感情である点。
しかもその(息子を亡くしたジェネットの)憎悪が、当事者ばかりでなく、何の関係もない人間にまで無差別に向けられるという点です。
「呪われるのは、あなたかもしれない」とポスターのコピーが表している通り。


それでも、この舞台の面白さは「恐怖」より、むしろその演劇的手法にあるのではないかと思うのです。

冒頭、まだ芝居に慣れていないキップスに俳優が効果音を聴かせて、ロンドンの街の雑踏をまるで目に見えるようだと感動する様子を見て、私たち観客も同じように納得するところからもう始まっていて、彼らの恐怖を追体験し共有するようなるのだと思いました。

演劇の世界でもプロジェクションマッピングなどが普通に使われるようになった今、視覚的に恐怖をつくり出すのはそれほど難しいことではないと思います。
この舞台ではその手法を採らず、あえて初演時のまま(多分)、人の声や、不気味に響く音、暗闇と光、といったマニュアルなもので「恐怖」を描出しています。
そこには、観客のイマジネーションを信頼して、その力に委ね、観客も共に舞台をつくるという演出家の目線が感じられて、とても好感。
観客はその期待に応えて(笑)、目一杯想像力を働かせ、恐怖を膨らませていきます。
まさに演劇の醍醐味です。


キップスの勝村さんは、いかにも気が弱そうな中年男で、最初は声も小さくて棒読みだったのが、だんだん物語と演技に入り込んで、いろんな人物を声色はもちろん仕草まで細かく演じ分ける様がお見事でした。そしてどんな人物を演じていても、さっとキップスに戻るところも。

岡田将生くんは、初舞台だった「皆既食」のエキセントリックなランボー役もとてもよかったのですが、今回も二度目の舞台とは思えないくらい。大胆さと繊細さを併せ持つ雰囲気で、声もよく通るし立ち姿も綺麗。

そうそう、2人が犬のスパイダーをやり取りする場面。駆け寄って行くスパイダーの姿が目に見えるようで、楽しかったな。
お2人とも映像の世界での活躍も目立ちますが、舞台も忘れずにいていただきたいです。



「カーテンコールはしないで下さい」とフライヤーに書いてあったけれど、ちゃんとカーテンコールはあって、客席に向かって一礼した後、横を向いて互いに相手に向かって照れ笑いしながらお辞儀し合う2人が可愛かったです。



にしてもあと味は悪いドラマです のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1433 わーい(嬉しい顔) vs 1433 ふらふら)
posted by スキップ at 23:25
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