2015年08月29日

最後のダンスは俺のもの 最後のキスは・・・ 「エリザベート」

elisa2015.jpg19世紀ヨーロッパ・ハプスブルク帝国の落日と運命をともにした皇妃エリザベートの生涯を描いたウィーン発のミュージカル「エリザベート」。
2000年の東宝版初演から15年目を迎えた今年、演出、キャストを一新して、これまで代々宝塚歌劇団男役トップOGが演じてきたエリザベート役に、在団中に同役を演じた元娘役トップ2人(花總まり・蘭乃はな)を起用。
トート役には満を持して、という感じで登板した井上芳雄くんと、5年前に最年少でトートを演じて好評だった城田優くんが配されました。
期待値も大きく、6月11日から8月26日まで3ヵ月近くの公演チケットは早々に完売という人気ぶりでした。

初演からずっと高嶋政宏さんが一人で演じてきたルキーニをはじめ、主要な役はすべてダブルキャストが組まれていましたが、
今回私が観るにあたっての希望は次の2点。


1.シシィは花總まりさん一択。
2.トートは井上、城田両方観たい。しかも間を空けずに。



たったこれだけなのに、キャストスケジュールと自分の予定を合わせるのは至難のワザで、
しかも超チケ難。
7月に組んでいた予定を諸般の事情により一旦リリースしてチケットを再度取り直したということもあって、ラストギリギリになっちゃったけど希望に合うのは本当にワンチャンスでした。

ということで、2日続けて観た公演のキャストはこんなふう。


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剣幸さんのゾフィーが観られなかったのは残念ですが、上述の2点しかこだわらなかった割にはダブルキャストほぼコンプリートできて幸せなことでした。


ミュージカル 「エリザベート」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ 
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞: 小池修一郎
音楽監督: 甲斐正人
美術: 二村周作
衣装: 生澤美子

2015年8月23日(日) 1:30pm 帝国劇場 1階F列上手/
8月24日(月)  1:30pm 1階P列下手



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これ、劇場正面。
これだけでテンションあがるよね。宝塚歌劇、東宝ミュージカル、ウィーンオリジナル版とこれまでこの作品を観てきて、楽曲はどれも一緒に歌えるくらい好きで、すばらしいことは十分知っていましたが、改めて、音楽、衣装、美術、そしてドラマとすべてが揃った、とても洗練されたミュージカルという印象を受けました。
「レ・ミゼラブル」にしても「モーツァルト!」にしてもそうですが、さすがに何度も繰り返し上演されている作品はチカラがあります。
中でもこの「エリザベート」は、豪華な衣装に身を包んだ「王家」の、しかもその「崩壊」の悲劇を描いているあたり、私たち「庶民」が大好物の要素たっぷりの王道テーマだと思います。


今回特に感じたのは、「これはエリザベートの物語」であるということ。
オーストリア皇后 エリザベートがどのように生き、悩み苦しみ、そしてどうして最期にフランツではなくトートを選ぶに至ったかを描いた物語。
そんなエリザベートの心を投影したものとして存在するトート。
直近に観たのがトート主役の宝塚版だったことも影響しているかもしれませんが、タイトルロールがまさしくタイトルロールとして存在する舞台でした。

ドラマという面でこの作品がすばらしいのは、エリザベートをただ悲劇のヒロインとして祭り上げているのではないところ。
「パパみたいに自由に生きたい」と願っていた明るく活発な少女が、まるでシンデレラストーリーのように見染められて王家に嫁いで、厳しい姑やマザコンで優柔不断な夫と心が通じ合わず疲弊していくという同情的な面ばかりでなく、美しさを武器にしようとするあまりそれに磨きをかけることに没頭したり(民衆が1滴のミルクに困窮している時にミルク風呂に入るとか)、自分のことに精一杯でネグレクト?の末に、息子を見捨てて自殺させてしまう、といった彼女のネガティブな面もきちんと描かれています。そうならざるを得なかった背景も。
華やかに見える人生の真実は、苦く切ない。


そして、そんなふうに感じさせてくれた最も大きな要素は、花總まりさんのエリザベート。

実は私は、花總まりさんが宝塚の初演で演じた「エリザベート」を観ているのですが、一路真輝さんのトートばかりが印象に残っていて、花總さんのシシィは品のある綺麗な人だな、といったくらいの印象でした。
長い暗黒時代を経て(笑)、花總さんが私たちの前にまた現れたのは、2012年12月の「エリザベート スペシャルガラ・コンサート」

カーテンコールで、 「この公演は宝物です」と涙ながらに話す花總まりさんにこちらももらい泣きしたものです。
あの時の花總さんシシィが本当にステキで、ワタシ、「東宝版は元男役トップスターが代々エリザベートを演じていますが、ぜひとも花總さんのシシィで観てみたいと思いました」と書いています。
それが3年経って現実になるなんてね(あの時には多分もう決まっていたと思われますが)。

たとえば声量とか歌唱力とか、華やかな美しさとかいったものは、もっと上をいくミュージカル女優はいると思います。
演技という面でも、役が憑依しているような女優さんを何人も観てきました。
でも、花總まりさんほどエリザベートを体現できる女優を私は他に知りません。

気品ある美しい立ち姿や立ち居振る舞い、ドレスの着こなし、裾さばき、どこを切り取っても一枚の絵のよう。
生き生きとした生命力にあふれた少女時代から、皇妃としての自信と威厳を身につけた全盛期を経て、孤独と寂寥感に苛まれる晩年まで、3時間の間に本当に年をとっているんじゃないかと思うくらい、感情表現、声、表情、姿勢や歩き方まで、刻々と変化する自然で細やかな演技。
そして、それぞれの場面で、歌詞が一つひとつしっかり私たちの心に届く歌唱。

「パパは親戚づき合いがペストみたいに嫌いなんだ」と言われて「私も~」と全身で喜びを表現する可愛らしさ。
一幕終わりであの有名なドレスを着てまばゆいばかりの輝きを放ち、扇をパシッと広げて顔を隠すキメポーズの神々しいまでの気高さ。
ルドルフの死に自責の念に苛まれ、人生に疲れ果ててなお、「私たちは二隻のボート」とフランツから差しのべられた手を拒絶する孤独感。

そんなシシィが、ルキーニの刃に倒れた後、自分からトートにキスをします。
♪最後のダンスは俺のもの~ と歌ったのはトートですが、
最初で最後のキスはエリザベートが自ら選びとったキス。
嫁いだばかりのころ、「でも見失わない 私だけは」と歌ったままに、最後まで毅然として「自分の道は自分で選ぶ」を貫いたエリザベート。
その潔さに心震える思いでした。

花總さんが舞台に復帰してからの作品は、「モンテ・クリスト伯」「レディベス」「モーツァルト!」と観てきましたが、やはり今回のエリザベートが my best です。


という訳で長くなったので、「他のキャスト編」につづく
posted by スキップ at 20:54
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