2019年02月02日

愛していると言えない切ないラブストーリー 「眠らぬ月の下僕」


nemuranu.jpg玉造小劇店つながりで、昨年観てレビューをアップできていなかった舞台の感想をひとつ。

「眠らぬ月の下僕」
わかぎゑふさんの満州シリーズ第三弾。
15人で120役演じる壮大な戦後史で、戦争に翻弄された人々の悲劇で、愛してると言えない切ないラブストーリー。ラストのうえだひろしさんと八代進一さんのシーン 素敵だったな。 #ねむ月 posted at 16:51:51

↑ これ、観劇後の私のツイートです。
わかぎゑふさんの満州シリーズはどれも好きですが、この作品もとてもよかったです。


玉造小劇店配給芝居vol.23 「眠らぬ月の下僕」
脚本・演出: わかぎゑふ
出演: 野田晋市  うえだひろし  桂憲一  八代進一  小椋あずき  
鈴木健介  浅野彰一  美津乃あわ   長橋遼也  松井千尋  
東久保拓巳  吉實祥田太  影山僚太  コング桑田  わかぎゑふ

2018年7月1日(日) 1:00pm 近鉄アート館 Bブロック1列センター
(上演時間: 2時間)



枚方の農家の三男坊として生まれた喜久雄の天命に導かれた叙事詩的な物語。
昭和17年 14歳の時、人数合わせのため村の満蒙開拓団の一員として満州に渡り、終戦直後のソ連軍侵攻、シベリア抑留、モンゴル、ウズベキスタン、ドイツ・・・東にある日本に帰りたいのに逆に西へ西へと流され、時代に翻弄され運命に呑み込まれながら激動の時代を生き抜く喜久雄。最後にたどり着いたのは・・・。


「眠らぬ月の下僕」という素敵なタイトルは、東にあるはずの母国 日本に帰りたいのに西にしか行けない運命を象徴するために、月の出ている方に向かうという意味合いでつけたのだそうです。

物語は時にとても重く非情で、また時には明るく軽やか。
2時間の中で自分自身も長い歳月や距離を旅したような漂泊感がありました。


続きがあります
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2019年01月28日

明治・大正・昭和・平成 鈴木家の 「お正月」


oshougatu.jpgわかぎゑふさんが、1995年、関東大震災を逃れて関西にお嫁に来て71年後に阪神大震災にあった老婦人の記事にヒントを得て書いたという作品。
これまで何度か上演されていて、今回15年ぶりにリニューアルして再演だそうです。


玉造小劇店配給芝居vol.24 「お正月」
脚本・演出: わかぎゑふ
出演: コング桑田  野田晋市  うえだひろし  
長橋遼也  松井千尋  有馬自由  桂憲一  
浅野彰一  茂山宗彦・茂山逸平(日替わり出演)  
江戸川じゅん兵  山像かおり  水町レイコ  
美津乃あわ  小椋あずき  内山絢貴  
是常祐美  増井友紀子  わかぎゑふ

2019年1月14日(月) 2:00pm ABCホール XA列(1列目)センター
(上演時間: 2時間)



関西に住むある家族の、明治初期から、大正、昭和、平成と100年以上にわたる、時間と世代をつなぐ物語。
それが折々のお正月風景の中で描かれます。

江戸から明治に変わったばかりのころ。
鈴木家の長男 万太郎が一人で守る家のお正月に弟の千次郎が訪ねて来るところから始まります。
この鈴木家の仏壇があるひと間で終始物語は展開します。
次の場面では万太郎は結婚して育子という妻がいます。男家庭で育った育子はお料理が苦手でお節料理の高野豆腐ものどを通らないくらいまずいものでしたが、万太郎はそれを言えず「おいしい」と言ってしまい、以来、これが鈴木家の味となっていきます。

ここから、万太郎・育子夫妻と3人の娘たち
3人の中の次女 月子と夫と2人の息子たち
月子の長男 慎太郎と関東から嫁いできた妻 ハル
慎太郎・ハル夫妻の3人の息子たち 慎一 慎助 慎吾
この3人それぞれの家族と子どもたち

という五世代くらいが描かれていて、そこに配偶者や家族が出てきますので総勢30人くらいでしょうか。

役者さんたち 男性はスーツ、女性は和服で、時に拵えをする訳でもなく、子どもや青年や老年期を瞬時に演じ分けてすばらしい。
説明台詞とか、「今は○○年」「○年後」といった表示は一切なく、前の場面からどれくらい年月が流れたのか、今がどういう時代、どういう状況なのかを家族の会話だけで私たち観客に理解させるわかぎゑふさんの脚本がこれまたすばらしい。


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2019年01月25日

爽快幕末群像劇 「SHIRANAMI」


image2 (4).jpg「歌舞伎演目『弁天娘女男白浪』で有名な原作『青砥稿花紅彩画』が原案。幕末の動乱を駆け抜けた五人の盗っ人たちの生き様を描いた『白浪五人男』を題材にした、全く新しい音楽活劇」なのですと。

「音楽活劇」というワードには苦手意識漂うのですが、早乙女太一=弁天小僧菊之助 なんて、もう観る!としか言いようがないですよね(誰に同意を求めている?)


音楽活劇 「SHIRANAMI」
脚本・演出:  G2
ショー演出: 市川訓由
音楽監督: 佐藤史朗
美術: 松井るみ
映像: 田中伸二  土橋慶
出演: 早乙女太一  龍真咲  伊礼彼方  喜矢武豊  松尾貴史  
鈴木壮麻  加納幸和  小澤廉  入来茉里    小林大介  谷山知宏  
谷水力  安田桃太郎  有川マコト ほか

2019年1月12日(土) 5時30分pm 新国立劇場中劇場 1階6列上手
(上演時間: 2時間40分/休憩 15分)



物語の舞台は尊皇攘夷に揺れる幕末。
古くから天皇家に仕えていた八瀬童子の菊霧(早乙女太一)は、徳川家茂(小澤廉)に嫁ぐこととなった皇女和宮(入来茉里 )のお守役として江戸に下り、弁天小僧菊之助と名を変えて「ある密書を手に入れる」という密命を受けていました。同じ頃、奉公所の同心・南郷力丸(伊礼彼方)は、ある事情で姿を消した許嫁 小夜(龍真咲)の行方を追いながら、幕府を守るために密書を探していました。一方、武家屋敷ばかりを狙う泥棒・日本駄右衛門(松尾貴史)が江戸の町を騒がせていましたが、ひょんなことから家茂の御庭番の忠信利平(喜矢武豊)と相まみえることになります。それぞれの忠義、思いを抱えていた五人が、やがて「この国を盗もうとしている」連中の企みを阻止するために力を合わせることに・・・。


弁天小僧の早乙女太一くんと、小夜が男装して赤星十三郎を名乗る龍真咲さん以外はそれぞれ役名が「弁天娘女男白浪」のままですが、お話はもちろん別物。松尾さん@日本駄右衛門なんて、め組の辰五郎親分でねずみ小僧だったりするし。
いろいろとツッコミどころはありつつも、物語はきちんとできていて、ちゃんと「五人男」で5人がそれぞれの大義に生きる爽快な幕末群像劇に仕上がっていました。


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2019年01月21日

大切なのは INGA 「日本の歴史」


rekishi.jpgアイネヌジーエー INGA
アイエヌジーエー INGA
原因の因に結果の果
歴史は因果のくり返し
因果で歴史は動いてく
大切なのは INGA

この歌詞とメロディが、今も頭の中でリフレイン。


シス・カンパニー公演 「日本の歴史」
作・演出: 三谷幸喜
音楽: 荻野清子
出演: 中井貴一  香取慎吾  新納慎也  川平慈英  
シルビア・グラブ  宮澤エマ  秋元才加
演奏: 荻野清子  阿部寛  稲増優乙  萱谷亮一
2019年1月9日(水) 1:30pm シアター・ドラマシティ 10列下手
(上演時間: 2時間40分/ 休憩 15分)



「“卑弥呼の時代から太平洋戦争までの1,700年にわたる物語を、ミュージカルで描く!”という壮大かつ大胆な発想で生み出された作品」というフレコミでしたが、始まりは、20世紀初頭、シアトルからテキサスに土地を買って移住してきた一家の話。

何もない土地に、亡き夫の夢であった牧場をつくり一家の大黒柱となって働く母(シルビア・グラブ)と二人の子どもたち(新納慎也・宮澤エマ)。
このシュミット家の年月を経る一代記と、文字通り「日本の歴史」が並行に描かれます。
一見、何の関わりもなさそうな二つの世界・・・と思いきや、シュミット家に起こる様々なことが日本の歴史上の事件とシンクロしていることにある時気づいてハッとなりました。

全く別の時代、異なる世界で人々は似たような境遇に陥り、同じように悩みます。
♪あなたが悩んでいることは いつか誰かが悩んでいた悩み
と両方の場面でくり返し歌われるのです。

そんなふうに時空を隔てて行き来した二つの世界が交錯するラスト。
太平洋戦争の戦場で、日本兵と互いに銃を向けあって対峙するシュミット家のジュニア(シュミット家の長女パットと小作人の長男ノエルとの子ども)。
ああ、ここで、こんな形で、と思わずにはいられない。
三谷幸喜さん、やはりタダモノではないと改めて感じました。


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2019年01月09日

どうすれば変えられる この世界を 「マリー・アントワネット」


MA.jpg  MA2.jpg

フライヤーの表裏。マリーの表情も微妙に違うのね。


2006年初演のミュージカル。
アナウンスでも必ず入るほど「新演出版」が強調されていますが、初演を観ていませんのでどのあたりが新演出なのかはわからず。
遠藤周作さんの小説が原作だということも今回初めて知りました。

でも、クンツェ&リーヴァイの作品だということは知っていたの(←)。
私が観劇した日、シルヴェスター・リーヴァイさんが客席通路を後方から歩いていらして、写真で見るとおりの人だったのでちょっと笑ってしまいました。オケピまで行って指揮の塩田先生と何やらお話され、座席に戻る時に客席から拍手が巻き起こると両手を振って応えていらっしゃいました。カワイイ♪


ミュージカル 「マリー・アントワネット」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン
翻訳・訳詞: 竜真知子
音楽監督: 甲斐正人
美術: 松井るみ
指揮: 塩田明弘
出演: 花總まり  昆夏美  古川雄大  吉原光夫  古川雄大  
佐藤隆紀  駒田一  彩吹真央  坂元健児  彩乃かなみ ほか

2019年1月6日(日) 1:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階8列(5列目)下手
(上演時間: 3時間/休憩 25分)



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何役かダブルキャストになっていますが、ワタシ的にはこの組合せ一択。
笹本玲奈さんも好きですが、初見なのでアントワネットは絶対花總まりさんで観たかったし、ソニンさんのマルグリットは何となく想像つくのでここは昆夏美さんでしょう。
そして、ルイ16世はぜひとも佐藤隆紀さんで。


ストーリーはほぼ史実に基づいていますが、貧しい生まれで地面を這いつくばるように生き、王族や貴族を憎むマルグリット・アルノーという架空の少女を登場させて、二人の「MA」と対比させる形。
冒頭、フェルゼン伯爵がアントワネット処刑の報せを受け、彼女の生涯と二人の出会いを歌で回想しますが、物語に入ってからは、ルイ16世とアントワネットの周りはオルレアン公のように王座を狙う者、国王夫妻を利用しようとする者、貴族を憎む民衆たちの気運の高まりなど、かなり厳しい状況に入ってからが描かれ、一幕の中心は有名な「首飾り事件」、そして二幕は革命の勃発から夫妻の処刑までという展開。


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2019年01月02日

世界一強い人間は、なにがあっても一人で立っている人間なんだ 「民衆の敵」


minshunoteki.jpg昨年の観劇納めとなった作品。
ジョナサン・マンビx堤真一といえば、「るつぼ」(2016年)が記憶に新しいところですが、原作者は違っても、主人公が本人に非がないにもかかわらず、理不尽な状況に追い込まれるというのは同じ・・・堤さん、こういう運命なのか。

真実と正義を叫ぶ者が、町経済的利益を優先する政治家やそれに迎合する大衆から社会的に「抹殺」されるというテーマもさることながら、民衆の使い方がシビれる演出で、とても見応えありました。


シアターコクーン・オンレパートリー2018 「民衆の敵」
作: ヘンリック・イプセン
翻訳: 広田敦郎
演出: ジョナサン・マンビィ
美術・衣装: ポール・ウィルス
照明: 勝紫次朗  
音楽: かむむら周平
振付: 黒田育世
出演: 堤真一  安蘭けい  谷原章介  大西礼芳  
赤楚衛二  外山誠二  大鷹明良 木場勝己  段田安則 ほか

2018年12月29日(土) 12:30pm 森ノ宮ピロティホール C列(2列目)センター
(上演時間: 2時間15分)



物語の舞台は19世紀後半のノルウェイの田舎町。
温泉の発見に湧くこの町で、意志のトマス・ストックマン(堤真一)は妻の父モルテン・ヒール(外山誠二)が経営する工場などからの廃液で水質が汚染されていることを発見し、兄である市長のペテル(段田安則)にレポートと改善策を提案しますが、ペテルは工事にかかる莫大な費用を理由に汚染を隠ぺいしようとします。当初はトマスと一緒に真実を告発すると意気込んでいた新聞の編集者 ホヴスタ(谷原章介)たちも手のひらを返したように市長側へと立場を変えます。トマスは市民に真実を伝えようと集会を開きますが、その場で「民衆の敵」と決めつけられ、孤立を深めていきます・・・。


パイプが取り巻き、手前(客席側にはたくさんの石ころが敷き詰められたように転がっている舞台。
老若男女 23人の民衆がズラリと並んで鋭角的なダンスのような振りをするところから物語は始まります。
民衆はこの後随所に現れて、舞台転換の役目も果たせば、新聞を読みながら1列に並んで通行したり、書類に没頭するトマスを覗き込んだり、そして集会には文字通り「民衆」として参加します。
この民衆の使い方がとても効果的かつスタイリッシュな演出で見惚れました。


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