2019年03月21日

自分の葉っぱが全部抜け落ちてしまったような気がしたんだ 「Le Père 父」


lepere.jpg2012年にパリで初演されて以来、世界30ヵ国以上で上演されてきた作品の日本初演。
演出はフランスオリジナル版を手掛けたラディスラス・ショラーさん。日本初演出です。


東京芸術劇場 兵庫県立芸術文化センター共同製作
「Le Père 父」
作: フロリアン・ゼレール 
演出: ラディスラス・ショラー
出演: 橋爪功  若村麻由美  壮一帆  
太田緑ランス  吉見一豊  今井朋彦

2019年3月17日(日) 2:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 
1階M列センター  (上演時間: 1時間50分)



パリのアパルトマンにひとりで暮らす老齢のアンドレ(橋爪功)と、その父を案じる娘のアンヌ(若村麻由美)の物語。
そこにアンヌのパートナー ピエール(今井朋彦)やヘルパーのローラ(太田緑ロランス)などもからんで・・・。


最初にアンドレとアンヌのやり取りがあって、二場目。
ピエール(この場は吉見一豊)がアンドレに「もうアンヌが帰ってくるから」と告げて、「ただいま」と現れたアンヌが若村麻由美さんではなく、壮一帆さんであることにざわめく客席。
その後も場面転換のたびに登場人物が入れ替わったり、部屋の様子が変化したり、どことなくサスペンスの様相。

アンドレがアンヌだと思って話していたのは誰なのか
それは昨日のことなのか遠い昔の記憶なのか
ここはアンドレのアパルトマンなのかアンヌの家なのか
・・・そこで気づきました。
これ、アンドレの視点で描いているんだ、と。

認知症を描いた映画やドラマは数々ありますが、介護する家族や周囲から見た姿を描くものばかりで、この視点は新鮮でした。


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2019年03月17日

あの子も恋し この子も恋し~ 「唐版 風の又三郎」


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私が初めて観た唐十郎さんの作品は「ビニールの城」だと記憶しています。
石橋 蓮司さん、緑魔子さんの劇団第七病棟の舞台。若かりし青春時代、思えばずいぶん背伸びをしていたものです。

このブログで感想を書いている唐十郎作品は、
「下谷万年町物語」 (2012)
「盲導犬」 (2013)
「唐版 滝の白糸」 (2013)
の3作。演出はいずれも蜷川幸雄さんです。

好きか嫌いかに分けると嫌いではない。
でもとにかく難解で苦手感アリアリというのが唐作品に対する私のイメージ。
ですから、柚希礼音さんの次の舞台としてこの作品が発表された時、「なんでまたこれに?」という思いが強く、当初は1回でおなかいっぱいと千穐楽のチケットしか取っていませんでした。が、大阪公演開幕直前になって思い直してチケットを追加。
結果的に私の想像を超えておもしろく感動も涙もする舞台で、演出変更前後の2バージョン観られたことも幸いでした。

1974(昭和49)年 唐十郎さんが状況劇場のために書き下ろした作品。
私はもちろん今回初見です。
1回目は事前情報はできるだけ入れず白紙の状態で観て、2回目は私には珍しくプログラムを熟読してからの参戦です。


Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019 
「唐版 風の又三郎」
作: 唐十郎
演出: 金守珍
美術・衣装: 宇野亞喜良
出演: 窪田正孝  柚希礼音  北村有起哉  丸山智己  江口のりこ  
石井愃一  山崎銀之丞  金守珍  六平直政  風間杜夫 ほか

2019年3月10日(日) 6:00pm  森ノ宮ピロティホール C列(3列目)上手/
3月13日(水) 7:00pm  C列(2列目)センター
(上演時間: 2時間55分/休憩 10分・15分)


大千穐楽のレポはこちら


儚く美しく切ないピュアラブストーリー。
私にはそう映りました。

二人が出逢ったのは強い北風吹く、代々木月光町の帝国探偵社(テイタン)前。
精神病院から抜け出してきた織部(窪田正孝)は、少年の格好をしたエリカ(柚希礼音)に「君はもしかしたら、風の又三郎さんじゃありませんか?」と声をかけます。
「君はだあれ?」
「僕は・・・読者です!」

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2019年03月15日

無垢なでくのぼう 「イーハトーボの劇列車」


gekiressha.jpg1980年に初演された井上ひさしさんの代表作ともいえる作品。
22歳(大正7年/1918)から35歳までの宮沢賢治の4回の上京を、花巻から上野へ向かう列車の中と東京での光景を切り取って見せる構成で、現世からあちらの世界へ行く列車を待つ人々(農民)が演じる劇中劇という設定です。

2013年に鵜山仁さん演出、井上芳雄さん主演で観ました(感想はこちら)。
長塚圭史さんの演出だとどうなるのかなと楽しみにしていました。
松田龍平くんの舞台を観るの「メカロックオペラ R2C2」(2009)以来、なんと10年ぶり。
あの時はサイボーグの役だったし、人間を演じる龍平くんもこれまた楽しみ。


こまつ座第126回公演 「イーハトーボの劇列車」
作: 井上ひさし
演出: 長塚圭史
音楽: 宇野誠一郎  阿部海太郎
出演: 松田龍平  山西惇  岡部たかし  村岡希美  土屋佑壱  松岡依都美  
天野はな  紅甘  小日向星一  福田転球  中村まこと  宇梶剛士

2019年3月9日(土) 5:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 
1階C列下手  (上演時間: 3時間30分/休憩 15分)



木造の学校の教室を思わせる舞台装置。
昔、小学校で使われたような木製の椅子が何客がランダムに置かれています。舞台奥一面が木の枠の窓になっていて、緑が生い茂り、明るい陽射しが射しこんでいます。少しトーンを落とした室内との対比が鮮やかです。
やがて、「わたくしたちはホテルのりっぱな料理店へ行かないでも、きれいにすきとおった風をたべることができます。コカコーラの自動販売機なぞなくても、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます」と「注文の多い料理店」の序文をモチーフにした言葉を役者さんたちが語り継ぎ始めて、一気に「イーハトーボ」の世界へ。

舞台上手と下手にそれぞれ一列に役者さんが並ぶ冒頭は、同じ長塚さん演出の「浮標」を思い出しました。
椅子を役者さんたちが動かして、それが汽車の座席になったり、賢治の妹とし子が入院している病院のベッドになったり、シュッシュッという汽車の走る音を役者さんの声で表現したり、リリカルでファンタジーな雰囲気のこの物語の世界をシャープな目線で切り取ったりと、長塚さんらしいと思える演出が随所に見られるものの、全体的な感触としてはオーソドックスな演出で物語の世界観そのままという印象。
それだけ戯曲のチカラが強いとも思えますし、長塚さんの井上さんへの尊敬も感じます。

ただ、主役の宮沢賢治の印象は二つの演出でかなり違っていて、
鵜山仁さん演出版の井上芳雄さん演じる賢治は、育ちもよく性格も頭もよくて人からも好かれる人物。
そんな彼が自分の理想と思い通りにならない現実との板挟みで苦悩する姿が切なかったという記憶があります。
対して今回、松田龍平さんの賢治は、純粋だけど頑固で思い込みが激しく人からもあまり理解されず、生活力もない人間として描かれています。


続きがあります
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2019年03月13日

「唐版 風の又三郎」 大千穐楽


image1.jpg「唐版 風の又三郎」 本日 大千穐楽の幕が無事に下りました。
この「無事に」という言葉がこれほど大切に思えた公演もありません。
カーテンコールは4回かな、5回だったかな。


シアターコクーン・オンレパートリー2019 
「唐版 風の又三郎」 大千穐楽
2019年3月13日(水) 7:00pm 
森ノ宮ピロティホール C列(2列目)センター
(上演時間: 2時間55分/休憩 10分・15分)



カーテンコール。
金守珍さんが「それでは明日の演劇界を担う二人からご挨拶を」と紹介して、まず柚希礼音さんがご挨拶。
さらに金さんから「唐十郎の言葉を磨いて磨いて磨きあげた窪田正孝!」と紹介された窪田正孝くんが車椅子から立ち上がり(窪田くんはカーテンコールの間、毎回必ず立ち上がって、それをいつも柚希さんが手をつないで支えていた)、怪我をしてしまったことも含めて(私事ですが怪我をさせてもらって・・・と言って、舞台上からも客席からもちょっと笑いが)、観客やカンパニーに感謝の意を伝えながら涙声になると、それを隣で聴いていた柚希さんの目もみるみる真っ赤に・・・それを観ている客席の私たちも涙ナミダ。

そんな涙を吹き飛ばしてくれたのは、最後の最後、ホリゾントの位置に出演者が横一列に並んで、真ん中の車椅子に座った窪田くんと柚希さんが笑顔で二度、三度とハイタッチ・・・と窪田くんが柚希さんに手をさしのばして、柚希さんも笑顔でそれを受けて、少ししゃがんでとてもやわらかなハグ。多幸感に満ち溢れたあの光景は一生目に焼き付けていたかった。


3月11日(月) ラストのエリカが飛行機の上から「織部~」と呼んで織部が上がっていくところ、足を痛めたらしく這いつくばるようにしてなかなか上がれない窪田くんに気づいた柚希さんが下りて来て、支えて一緒に上がったというツイートを読んでから今日の大楽まで、私の気持ちもジェットコースターのようでした。

ナマの舞台にはアクシデントがつきもので、これまでにも大きなところでは
「鋼鉄番長」(2010) 橋本じゅんさん降板→三宅弘城さん代役
「おのれナポレオン」(2013) 天海祐希さん降板→宮沢りえさん代役
がありましたし、
昨年の宝塚歌劇月組「エリザベート」の美弥るりかさん休演による代役も記憶に新しいところ。

これらが今回の「唐版 風の又三郎」の事案と全く違うのは、代役による上演で演出は変更されず、宝塚を除いては短期間ではあるものの数日間稽古のために休演をして再開したということ。
それに対して今回は、怪我をした窪田くんがそのまま同じ役で続投、しかも、開演時間は遅れたものの、公演に穴をあけることなくやり切ったということです。

聞くところによると、月曜日のマチネ終演後に金守珍さんが演出プランの手直しをして、火曜日(3/12)朝から出演者含めて車椅子を使った新しい演出でのリハーサルを重ねたらしい。
結果的に最初からこういう演出だったんじゃないか、とも、新演出のすばらしい又三郎になったとも言われる舞台をつくり上げることができたのは、窪田正孝くんご本人の強い意志と力量、金守珍さんの演出力、そして共演者、スタッフ一丸となった対応とフォローがあったからこそで、まさにプロの一流の仕事を見せていただいた思いです。


唐十郎さんの作品への苦手感が完全に払拭された訳ではないけれど、「風の又三郎」はこれまで観た「唐版」のどの作品よりも心に入ってきましたし、こんなアクシデントがなくても印象に残る好きな作品になったと思いますが、一層忘れらない舞台となりました。
まぁ、「好き」の中には多分に柚希フィルターを通している部分があるかもしれませんが。
そのあたりはまた改めて舞台の感想でレビューしたいと思います。


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窪田正孝という俳優がとても好きになりました のごくらく度 (total 2026 vs 2028 )

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2019年03月10日

ハルとの訣別 「ヘンリー五世」


henryv.jpg「ヘンリー四世」(2013)のハル王子とフォルスタッフのわちゃわちゃが映像で流れて、懐かしいなぁと思いながら観ていたら、まるでスクリーンから抜け出てきたようにフォルスタッフ(吉田鋼太郎)が客席通路から現れて、「ハルが国王になった!バンザイ!バンザ~イ!!」。通路側の席で、フォルスタッフが真横に立ってバンザイするものだから、私も思わず両手挙げたよね。

そして、王冠を戴いたハル王子改めヘンリー五世の隊列が舞台上を対角線に静かに進みます。
フォルスタッフに声をかけられたヘンリーが、「私はお前など知らない」と言い放つ、大好きなラストシーンの再現。
若くやんちゃなハル、国王となったヘンリー、どちらも演じるのは、松坂桃李くん。
この物語が「ヘンリー四世」と地続きであることが印象づけられました。

思えば「ヘンリー四世」の時、松坂桃李くんはまだ舞台デビュー2作目でした。
もし蜷川さんがご存命だったら、この「ヘンリー五世」を上演するにあたって、ヘンリーにはやっぱり桃李くんをキャスティングされたかなぁ・・・そんなことに思いを馳せたプロローグ。


彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾 「ヘンリー五世」
作: ウィリアム.シェイクスピア
翻訳: 松岡和子
演出: 吉田鋼太郎
美術: 秋山光洋
照明: 原田 保
出演: 松坂桃李  吉田鋼太郎  溝端淳平  横田栄司  中河内雅貴  
河内大和  間宮啓行  廣田高志  沢海陽子  悠木つかさ  宮崎夢子 ほか
演奏: 児島亮介  中原裕章

2019年3月7日(木) 6:30pm シアター・ドラマシティ 6列センター
(上演時間: 3時間5分/休憩 15分)



「ヘンリー四世」の感想はこちら


父ヘンリー四世の後を継いで即位したヘンリー五世(松坂桃李)がフランス皇太子ルイ(溝端淳平)率いる強大な兵力のフランス軍に対して圧倒的不利の中奇跡的勝利をおさめ、講和を結んでフランス王の娘キャサリン(宮崎夢子)と結婚するまでが描かれる物語。
百年戦争のほぼ半ばにあたり、史実ではヘンリー五世の即位が1413年、キャサリンとの結婚は1420年ですのでということですので、この7年間の物語です。


若く凛々しく勇敢で才知に溢れ、カリスマ性もあって臣下の者たちからも尊敬されるヘンリー五世。
「ヘンリー四世」が、放蕩の限りをつくしたハル王子がヘンリー五世の入口に立つまでを描いた物語なら、彼の中にまだ残っていたハルと完全に訣別して、名実ともに国王ヘンリー五世となっていく姿が描かれる「ヘンリー五世」。


続きがあります
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2019年03月03日

写真の向こうの真実 「チャイメリカ」


chimerica.jpg

物語の始まりと同じように、スクリーンに大きく映し出された4台の戦車とその前にぽつんと立つ一人の男性。
白いシャツを着た写真の「戦車男」に、実在の戦車男の後ろ姿が重なっていき、その姿を包み込むように静かに流れるベートーヴェンの第九 第三楽章。
その真実の厳しさと旋律のやさしさ、そして戦車男の切なさに涙がぶわっとあふれました。


世田谷パブリックシアター×パソナグループ
「CHIMERICA 」 (チャイメリカ)
作: ルーシー・カークウッド
演出: 栗山民也
翻訳: 小田島則子
美術: 二村周作 
照明: 服部 基 
音響: 井上正弘 
映像: 上田大樹
出演: 田中圭  満島真之介  倉科カナ  眞島秀和  
瀬戸さおり  池岡亮介  増子倭文江  大鷹明良 ほか

2019年3月2日(土) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 1階G列センター
(上演時間: 3時間10分/休憩 15分)



客電が落ち暗転の中、カシャッとシャッター音が響いて舞台の大スクリーンに映し出される1枚の写真。
隊列して進む4台の戦車。その前にぽつりと立つ、白いシャツを着て買物袋を持った一人の男性。
天安門事件を象徴する、「無名の反逆者」として有名になった写真です。
「え?天安門事件の話なの?」とその時気づく(←)・・・いつものことながら予習しないにもほどがある)。

ちなみに「チャイメリカ」は CHINA + AMERICA
「中国化した米国」を意味する造語だということはいくら何でも知っていましたよ(と言い訳しておきます)。


1989年6月4日。
19歳のアメリカ人カメラマン ジョー・スコフィールド(田中圭)はホテルの窓から「戦車男」の写真を撮影して一躍名をあげます。
それから23年後。2012年。
アメリカはオバマ大統領が再選を目指す大統領選挙の年。
北京を訪れたジョーは旧友のヂァン・リン(満島真之介)と再会し、「戦車男は生きていてニューヨークにいる」と聞き、同僚の記者 メル(石橋徹郎)とともにその行方を捜し始めます。一方、北京では大気汚染が深刻さを増し、それを告発しようとするヂァン・リンは次第に追い詰められていき・・・。


1989年と2012年
中国とアメリカ
北京とニューヨーク
時空を行き来しながらシームレスに展開する物語。


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