2019年11月22日

お前の弱い部分は俺が持っていてやる 「渦が森団地の眠れない子たち」


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蓬莱竜太さんが、藤原竜也さんと鈴木亮平さんにあて書きして書き下ろした作品。
ともに38歳の二人が小学生を演じると話題沸騰でした。


Sky presents「渦が森団地の眠れない子たち」
作・演出 :  蓬莱竜太
音楽 :  国広和毅
美術 :  松井るみ
出演: 藤原竜也  鈴木亮平  奥貫薫  木場勝己  
岩瀬亮  蒲野紳之助  辰巳智秋  林大貴  宮崎敏行  
青山美郷  伊東沙保  太田緑ロランス  田原靖子  傳田うに
2019年10月30日(水) 1:00pm 森ノ宮ピロティホール K列下手
(上演時間: 2時間35分/休憩15分)



物語: 空想癖がある小学生 田口圭一郎(鈴木亮平)は、震災で家を失い、母の景子(奥貫薫)、妹の月子(青山美郷)とともに渦が森団地に引っ越してきました。その初日、電飾自転車に乗り、エアガンを背負ったガキ大将「キング」こと佐山鉄志(藤原竜也)と出会います。鉄志の母は景子の双子の姉で何故か疎遠になっている美佐枝(奥貫薫二役)とわかり、圭一郎は鉄志と「血縁の誓い」をかわして親友になる約束をします・・・。


心に傷を抱え、行ったことも見たこともない世界を想像しては、自分のノートに絵を描いている圭一郎。
外では虚勢を張りながら、とても繊細で傷つきやすく、家族の愛情に飢えている鉄志。

この2人を軸に、周りの小学生たちも含めたやり取りをコミカルに描きながら、ささいなことから均衡が崩れていく子供の世界。


子供たちだけの閉じた集団の中での息苦しさ。
暴力やいじめ、嘘や嫉妬。
誰にも言わないはずだった秘密の暴露。
簡単に覆る、いじめる側といじめられる側。
そしてその背景に見え隠れする愛情のねじれ、ネグレクト、母親同士(姉妹)の確執、さらには震災後の社会の閉塞感。

二人の母親はもちろん、読者モデルをやっているアイドル同級生 ダイアナ(太田緑ロレンス)や、町内会長のアベさん(木場勝己)といった、鉄志や圭一郎との関わりで描かれる人たちにもそれぞれドラマがあって、かなりな重層的に物語は展開します。
重い事象がこれでもかというくらいにふりかかってきて、観ているのがなかなかキツい。
鉄志にも圭一郎にも唯一リベラルな立場のように見えた圭一郎の妹 月子(きっこと呼ばれている)の交通事故で、ますます暗澹たる気持ちになる二幕ですが、苦く切ない別れの中に希望を感じさせるラストが用意されていました。


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2019年11月16日

この世から戦が消える日に 「Q:A Night At The Kabuki」


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Love of my life – you’ve hurt me
You’ve broken my heart and now you leave me~

フレディ・マーキュリーが歌う “LOVE OF MY LIFE”の甘く切ないメロディが流れる中
名もない戦士として屍の中に身を埋めるロミオ
ジュリエットへの愛を胸に抱いて

あれ?ワタシ 泣いてる?
・・・訳もなく涙があふれるという思いを久しぶりに味わったラストシーン。


NODA・MAP 第23回公演
「Q:A Night At The Kabuki」
Inspired by A Night At The Opera
作・演出: 野田秀樹 
音楽: QUEEN
美術: 堀尾幸男
照明: 服部基
衣装: ひびのこずえ
美粧 柘植伊佐夫
サウンドデザイン 原摩利彦
出演: 松たか子  上川隆也  広瀬すず  志尊淳  橋本さとし  
小松和重  伊勢佳世 羽野晶紀  野田秀樹  竹中直人 ほか

2019年10月20日(日) 6:00pm 新歌舞伎座 1階8列下手/
10月23日(水) 2:00pm 1階3列センター
(上演時間: 3時間/休憩 15分)



野田秀樹さんがQUEENのアルバム「オペラ座の夜」からインスピレーションを得た作品。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」よりも2年前、「『オペラ座の夜』の演劇性を本当に<演劇>として広げられないものか、それをクイーンが好きな日本の劇作家、演出家ヒデキにお願いできないか」というQUEEN側から直接のオファーが始まりだったそうです。


モチーフは「ロミオとジュリエット」。

最初からこのモチーフが明らかにされているので、たとえば「逆鱗」の人間魚雷、「エッグ」の731部隊のように、観ているうちに主題が現れて愕然とする、といったことはないなぁと思いながら観ていたのですが、そこは野田さん。
私たちが知っている「ロミオとジュリエット」の物語は一幕で完結して、二幕はその二人が生き残っていての「その後」の物語。

「オペラ座の夜」がまずあって、「ロミオとジュリエット」と源氏平家の争いとを重ね、さらにシェイクスピアの他の戯曲を散りばめ、歌舞伎、近松、民族闘争や近現代の戦争までを融合させて一つの物語として昇華させるなんてとんでもないワザで、それでいてちゃんと切ないラブストーリー。野田さんの筆致が冴えわたります。

本当に野田さんは天才。
2012年に中村勘三郎さんが亡くなった時、串田和美さんは「芝居の神様の子ども」という追悼文を寄せていらっしゃいましたが、野田秀樹さんも間違いなく「演劇の神様に選ばれた子ども」だと思います。


432,000秒(5日間)の恋に疾走するロミオとジュリエット。
源氏の領袖 源義仲の娘 源の愁里愛(じゅりえ)に広瀬すずさん
平家の平清盛の嫡男 平の瑯壬生(ろうみお)を志尊淳さん
そして、2人のその後の姿となる「それからの愁里愛」「それからの瑯壬生」を松たか子さんと上川隆也さんが演じて、この2人がこの恋の結末を死という悲劇で終わらせないよう運命の先回りをしようという展開。

ティボルトがマーキューシオを殺し、そのティボルトをロミオが殺して・・・という報復の連鎖が描かれる「ロミオとジュリエット」ですが、平清盛が源義朝を討ち、義朝の遺児である頼朝、義経が平家を滅ぼすという源氏と平家の争いは、まぎれもなく報復の連鎖だと改めて感じました。

「この世から戦(いくさ)が消える日に」また会えると約束したはずの愁里愛と瑯壬生。
「この世から戦(いくさ)が消える日に」と何度もつぶやく愁里愛。
でも二人にその日は来なかった。
それはとりもなおさず、この世界から戦争がなくなる日がまだ来ていないという野田さんのメッセージと受け止めました。



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本人確認が厳格だったこの公演。
確認終了後にいただける日替りのカードはポスターやパンフレットからのデザイン。
渡辺敏秋さんのイラストです。


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2019年11月06日

1298回! 「ラ・マンチャの男」


lamancha2019.jpgたとえ 脚は萎えても
瞳高く凝らして
遥か遠き空へ
我は歩み続けん

道は極め難く
腕は疲れ果つとも
遠き星をめざして
我は歩み続けん

「見果てぬ夢」の歌詞が白鸚さんと重なります。

1969年の初演から50年。
この公演で通算1300回を迎えた白鸚さんのライフワークのひとつ。


日本初演50周年記念公演
ミュージカル 「ラ・マンチャの男」
脚本: デール・ワッサーマン
作詞: ジョオ・ダリオン
音楽: ミッチ・リー
訳: 森岩雄  高田蓉子   訳詞: 福井峻
音楽監督・指揮: 塩田明弘
演出:松本白鸚
出演: 松本白鸚  瀬奈じゅん  駒田 一  松原凜子  石鍋多加史  
荒井洸子  祖父江進  大塚雅夫  白木美貴子  宮川浩  上條恒彦

2019年10月19日(土) 5:00pm 帝国劇場 1階H列下手
(上演時間: 2時間5分)



「ラ・マンチャの男」を前回観たのは2012年8月19日。
白鸚さん70歳のお誕生日で上演1200回公演でした。
あれから7年。
時を重ね精進を続けて今も変わらずキホーテとして舞台に息づいていらっしゃる姿に感涙

今シーズンで白鸚さんのラ・マンチャが1300回となることが発表されていて、早くからこの日に観ようと決めてチケットもお願いしていたのですが、台風19号の影響で2公演が中止になったため、1298回目となりました。
セレモニーでご一緒にお祝いできなかったのは残念でしたが、舞台はそんな些末なことを吹き飛ばすくらい熱かったです。


スペイン南部 ラ・マンチャの詩人セルバンテス(松本白鸚)は、教会への税金支払い拒否のかどで逮捕され、宗教裁判にかけられるために忠実な従者サンチョ・パンサ(駒田一)とともに雑居房に入れられます。男女入り乱れた雑居房で牢名主(上條恒彦)による「裁判」にかけられたセルバンテスは、自分の作品を見せるのがいちばんだと、囚人たちを役者にして、自作の小説「ドン・キホーテ」を上演する・・・というストーリー。

この作品を観るのは今回が3回目です。
感想は前2回で熱く語っていますのでそちらをご参照。

2009年5月
2012年8月
2012年8月19日 1200回カーテンコール


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2019年11月03日

悲劇の連鎖 「オイディプス」


oedipus.jpgオイディプスはスーツにネクタイ
イオカステはドレスにハイヒール
そしてテーバイは、疫病に襲われ危機に瀕する近未来都市。


シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.7
「オイディプス」
原作: ソポクレス
翻案・演出: マシュー・ダンスター
翻訳: 木内宏昌
美術・衣裳: ジョン・ボウサー
振付: シャーロット・ブルーム
照明: 勝柴次朗   音楽: かみむら周平 
出演: 市川海老蔵  黒木瞳  森山未來  高橋和也  中村京蔵  
谷村美月  柳本雅寛  湯浅永麻  平原慎太郎  笈田ヨシ ほか

2019年10月19日(土) 1:00pm シアターコクーン 中2階 ML列
(上演時間: 1時間50分)



「父を殺し、母を娶るであろう」という恐ろしい予言から逃れるため、放浪の旅に出た古代ギリシャ・コリントスの王子オイディプス(市川海老蔵)が旅先のテーバイで英雄となり、先王ライオスの妃イオカステ(黒木瞳)を妻に迎え国王の地位につきます。やがて蔓延する疫病から国を救うため、神託に従い、先王殺害の犯人捜しを始めますが・・・。


客電が落ちると大きな警戒音と赤い回転灯の光の中、大きな扉から現れる白い防護服とガスマスクの人々。
これが日本での初演出作となるというイギリスの演出家 マシュー・ダンスターが紡ぎ出すギリシャ悲劇の世界は、人名や地名はそのままに、現代とも近未来とも取れる空間で展開します。
疫病に襲われて生あるもの皆が危機に瀕する都市テーバイを、気候変動や自然災害に苦しむ私たちの日常に直結する場として描き出しているのだとか。そこには核の脅威も含まれているのかもしれません。

「ギリシャ悲劇」「歌舞伎」「ダンス」のコラボレーション。
これまで何作か観てきた「オイディプス」とあまりにも雰囲気が違っていて最初は少しとまどったのですが、基本的にストーリーには忠実でよく知っている物語。それがこれまで観たことのない演出でこんなふうに斬新になるのはかなり刺激的でおもしろかったです。


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2019年11月02日

加害者へと姿を変えた被害者 「死と乙女」


deathandthemaiden.JPG「未完成交響曲」とともにシューベルトの晩年(31歳で早世しているので“晩年”という言葉はしっくりこないけれど)の作品として学生時代、音楽鑑賞の時間に聴いた記憶がある「死と乙女」。
その弦楽四重奏曲をモチーフに、チリの劇作家アリエル・ドーフマンが、独裁政権下で自身が受けた弾圧の事実をふまえ、政権崩壊後の1990年に発表した戯曲。

かつての軍事独裁政権下で受けた拷問の記憶に苦しむ妻
民主的な新政権で重職を担う弁護士の夫
夫婦の前に現れた1人の男
息詰まるような台詞の応酬で、終始緊迫感に満ちた舞台でした。


シス・カンパニー公演 「死と乙女」
作: アリエル・ドーフマン
翻訳: 浦辺千鶴
演出: 小川絵梨子
美術: 松井るみ  照明: 原田保  衣装: 前田文子
出演: 宮沢りえ  堤真一  段田安則

2019年10月18日(金) 7:00pm サンケイホールブリーゼ 1階B列センター
(上演時間: 1時間35分)



物語: 独裁政権が崩壊し、民主政権に移行したばかりのある国。
かつて反政府側の運動家であった弁護士ジェラルド(堤真一)はある夜パンクで立ち往生し、通りかかった医師ロベルト(段田安則)の車に送られ、彼を家に招き入れます。
ジェラルドの妻ポーリーナ(宮沢りえ)は学生運動に身を投じていた頃、治安警察に拉致、監禁され激しい拷問と性的暴力を受けた過去に苦しんでいますが、ロベルトの声から、彼こそ15年前、シューベルトの「死と乙女」を流しながら目隠しをした自分を拷問、凌辱した男だと確信し、銃で脅して椅子に縛りつけ、「自白」を迫ります・・・。


銃を片手にロベルトに暴力的な言葉を浴びせ激しく迫るポーリーナ
拷問への関与をかたくなに否定し自分の潔白を必死に訴えるロベルト
2人の間で何とか事態を打開し、妻を翻意させようと苦闘するジェラルド
三者三様の思惑が交錯。
何が真実で、誰が狂気の淵にいるのか。
ひりひりするような緊迫感が続きます。

ポーリーナの主張が正しいのか、それは思い込みに過ぎず、ロベルトは無罪なのか
・・・真相は最後まで明確にされず、観る側の判断に委ねられます。
ストーリー展開そのものより、3人と葛藤や心理戦を目撃することが醍醐味の作品と言えるでしょうか。


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2019年10月25日

命より重い任務があんですか? 「最貧前線」


saihinzenzen4.jpg宮﨑駿さんが模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」に1980~90年代に不定期に連載した『宮﨑駿の雑想ノート』という連作絵物語&漫画の中の1作。その「雑想ノート」からは『紅の豚』も生まれたのだとか。
わずか5ページの小品という宮﨑駿さんのオリジナル作品を国内初の舞台化だそうです。


「最貧前線」 ~『宮﨑駿の雑想ノート』より~
原作: 宮﨑駿
脚本: 井上桂
演出: 一色隆司
美術: 松井るみ  音楽: 久米大作  
映像: 上田大樹  照明: 倉本泰史
出演: 内野聖陽  風間俊介  溝端淳平  佐藤誓  加藤啓  蕨野友也  
福山康平  浦上晟周  塩谷亮  前田旺志郎  ベンガル

2019年10月17日(木)6:30pm 兵庫県立芸術文化センター 
阪急中ホール 1階H列センター
(上演時間: 2時間40分/休憩15分)



物語は昭和19年から始まります。
太平洋戦争末期の日本。
軍艦をほとんど失くした日本海軍は、漁船を徴用し特別監視艇として、来襲するアメリカ軍の動静を探る任務を課していました。
徴用された小さな漁船 吉祥丸。
乗組員は、艇長(風間俊介)を始めとする海軍軍人5名と、もともと吉祥丸で漁をしていた船長(内野聖陽)を含めた漁師たち6名。
軍の規律を重んじる軍人たちと叩き上げの漁師たちはことごとく対立しますが、やがて軍人たちは漁師たちの知識や経験値、行動力に一目置くようになり、互いに信頼関係を芽生えさせていきます。しかし、戦況は厳しく、吉祥丸は海の最前線ともいうべき南方の海域に急遽派遣されることになります・・・。


「生きねばなんねぇ」とフライヤーに書かれています。
それは内野さん演じる船長の台詞なのですが、宮﨑駿さんのメッセージと聞こえました。

戦争で死ぬなどとは考えてもいないような漁師たちに対して、艦長以下の軍人たちはすでに死(と敗戦)を覚悟していて、お国のために死ぬことこそ生きる証と考えているように見えます。

これから南方の最前線へ行く、というところで一幕が終わって、戦況やいろいろな側面からどうしても辛い結末を予想してしまって、重い気持ちで二幕を迎えたのですが、そうはならない、安易に悲劇に走らないところがまずはすばらしい。
あのB29を迎え撃つ場面はそれこそ手に汗握って観る感覚でしたが、お守りを口に加え決死の形相の船長が敵機を蹴散らした時、そうだ、宮﨑駿さんはいつも、辛くてどうしようもない世の中にもわずかながら希望はあると、未来への希望を感じられる物語を描いてきた人だということを思い出しました。
生きることや命のとらえ方を改めて考えさせられる物語ですが、それは宮﨑駿さんの作品に共通したメッセージなのではないかな(全部拝見しているという訳ではありませんが)。

5ページの原作をどれくらい脚本で膨らませているのか定かではありませんが、どこか牧歌的な雰囲気とか、戦時下にあってもクスリと笑えたりする感じとかがいかにも宮﨑駿ワールドだなぁと。


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