2021年01月30日

覚悟の団七 再び


3年ぶりとなる「コクーン歌舞伎」の上演が発表されました。

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』


勘九郎くんの団七と聞いて、一気にいろんな思いがあふれてきました。

私が初めて「夏祭浪花鑑」を観たのは2002年11月。
扇町公園で開催された、大阪で初めての平成中村座でした。
団七九郎兵衛を演じるのはもちろん中村勘三郎さん。
開け放たれた舞台奥から団七と徳兵衛が全速力で緑の公園のはるか彼方まで駆け出して行き、また舞台へと戻ってきた時の高揚感。

以来、何度も観た演目ですが、あの時のあの団七を忘れることは決してありません。


2011年3月。
博多座「桜壽博多座大歌舞伎」で上演予定だった「夏祭浪花鑑」ですが、勘三郎さんの休演によって、勘九郎(当時 勘太郎)くんが初役で代役を勤めることとなりました。
その記者会見で目に涙をためて、「命を削ってでもやる」と決意を口にした勘太郎くんを見て、こちらも涙。
初日に・・・と思いましたが、平日で無理ということで、何とか千穐楽に参上しました。

2011年3月といえば、東日本大震災が起こった月。
勘三郎さんの休演に自粛ムードが追い打ちをかけたこともあってか、客席は中村屋さんの公演として信じられないくらい空席が目立っていました。

その時の感想がこちら 「覚悟の団七」

父の代わりを勤め、団七九郎兵衛という役をやり抜く覚悟を持って臨んだ1ヵ月の公演。
千穐楽にも入魂のすばらしい団七を見せてくれた勘九郎くんでしたが、とても痩せていて一段と大人びた印象でした。
このひと月が彼にとっていかにハードでどれほどのプレッシャーと闘ってきたかを物語っているよう。

あの時以来、勘九郎くんが団七を演じることはありませんでした。


あれから10年。

ついにその時がやってきたのか・・・と。
きっとあの時以上の「覚悟」を持って、団七を演じることを決意したのだと思うと、幕が開くと一刻も早く駆けつけて、目一杯の拍手を贈りたい気持ちでいっぱいです。


「当たり前の日常は決して当たり前ではない」
「舞台が無事に上演できることは、当たり前ではなく奇跡のようなこと」
10年前にも感じたであろうことを改めて強く思う2021年。

勘九郎くんはどんな団七を見せてくれるでしょう。




コクーン歌舞伎が無事に上演されること、ちゃんとこの目で見届けられることを心から祈っています。


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2021年01月16日

An “Update” is coming soon 「図夢歌舞伎 弥次喜多」


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The end of the world and a new beginning.
An “Update” is coming soon.

世界の終わりと 新たな始まり
更新の日は近い


真っ黒の画面に映し出されるセンテンス。
「『狭き門より入れ』だー!」と思いました。


図夢歌舞伎 「弥次喜多」
原作: 前川知大 「狭き門より入れ」
監督・脚本・演出: 市川猿之助
構成: 杉原邦生
脚本: 戸部和久
監督: 藤森圭太郎
出演: 松本幸四郎  市川猿之助  市川中車  市川染五郎  市川團子  
市川猿弥  市川笑三郎  市川寿猿  市川弘太郎(声の出演)

2021年1月16日(土) 配信視聴
(上演時間: 1時間51分)



定式幕が開くと口上人形(声:市川弘太郎)が登場して、これまでの「東海道中膝栗毛」をザクッと振り返り、その後の弥次さん、喜多さんについて語ります。
歌舞伎座の裏方として働いていた2人ですが、要領よく上司にもおべっかを使って気に入られ出世した弥次さん(幸四郎)は、経営再建担当として喜多さん(猿之助)や他の人たちをリストラします。喜多さんは弥次さんのお父さんが経営する万屋(よろずや:今のコンビニエンスストア)「家族商店」で店長として働くようになります。江戸では謎のウイルスが流行して不況となり、歌舞伎座をクビになった弥次さんも実家のコンビニに帰ってきます。店には同じようにリストラされた時枝(中車)や不況で家が没落し荒んだ様子の梵太郎(染五郎)、政之助(團子)なども集まっています。弥次さんの友人で7年前に死んだはずの葉刈(猿弥)や謎の女 彼方岸子(笑三郎)が現れ・・・。


昨年6月に松本幸四郎さんが立ち上げた「図夢歌舞伎」第二弾。
2016年から昨年まで、4回にわたって毎年歌舞伎座 八月納涼歌舞伎で上演されてきた「東海道中膝栗毛」シリーズ最新作「弥次喜多」。市川猿之助さんが現代劇初出演となった「狭き門より入れ」(2009年)-懐かしい-を原作に、弥次喜多シリーズの世界観で再構成した作品ということで、これまでのシリーズとはかなりテイストの異なるものとなっていました。


思っていた以上に「狭き門より入れ」だった、というのが観終わった最初の感想。

江戸とこの世ならざる世界とが交錯しながら展開する物語。
冒頭に書いた「更新の日は近い」のビラもそうですし、「葉刈」「時枝」といった役名も、こぶとりじいさんのお話もまんま出てきました。

「世界は1/3の犠牲で成り立っている」
「人を傷つける善行と、誰も傷つけない悪事」
「世界が欲しがっているのは願いじゃなくて祈り」
といった作品のキーコンセプトとなるような台詞もそのまま使われていました。


続きがあります
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2021年01月13日

坂東玉三郎 初春特別舞踊公演


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松竹座「壽初春大歌舞伎」の中止が発表されて凹んでいたところへこの公演のニュース。

「玉さまがっ!お正月の松竹座にっ!来てくださるっ!!」というだけでとても尊くてありがたいのに、口上では、「このような状況下、おいでくださいまして本当に本当にありがとうございます」と何度もおっしゃっていて、お礼を申し上げるのはこちらの方ですと、もったいな過ぎて涙出ました。


坂東玉三郎 初春特別舞踊公演
出演: 坂東玉三郎
2021年1月11日(月) 2:00pm 松竹座 3階2列センター


一、お年賀 口上
(上演時間: 25分)


千鳥配席の松竹座。
花道も取り払われていました。花道がない松竹座、初めてではないかしら。


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ロビーに飾られていた「寿式三番叟」の羽子板。
これが唯一のお正月らしい装飾でした。


緞帳が上がると緋毛氈に一人正座する玉三郎さん。
「15日まではお正月のご挨拶をしてもよろしいようですので」と、「あけましておめでとうございます。この状況下にこの初春特別舞踊公演に、かくにぎにぎしくご来場くださいまして、まことにありがたく、改めて厚く厚く御礼申し上げます次第にございます」という口上から始まりました。

「松竹座が今の劇場となって24年。私は松竹座とは縁が深うございます」と玉三郎さん。
お正月の公演は6回目、舞踊公演は平成26、30年に続いて3回目だそうです。

そんな玉三郎さんが「お正月の松竹座のために」と考えてくださった打掛ご披露。
これがとても綺麗で、打掛にまつわるお話も楽しくて、とてもよかったです。

披露された打掛は五領

1.「助六」 揚巻
2.「吉田屋」 夕霧
3.「天守物語」 富姫
4.「天守物語」 富姫
5.「助六」 揚巻


続きがあります
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2020年12月28日

當る丑歳 「吉例顔見世興行」 東西合同大歌舞伎 第三部


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南座顔見世 第三部は日程を変えて別の日に。
夜見るまねきもまた格別です。
これが2020年観劇納めとなりました。


京の年中行事 當る丑歳 「吉例顔見世興行」 東西合同大歌舞伎 第三部 
2020年12月15日(火) 6:40pm 京都南座 1階4列センター


第一 末広がり
出演: 尾上右近  中村米吉
(上演時間: 20分)



女大名(米吉)が恋の思いを扇子に書いて伝えようと、太郎冠者(右近)に末広がりを買うように頼みますが、末広がりが何か知らない太郎冠者は、だまされて傘を買って帰り・・・。


これは以前狂言で観たなぁと思って調べたら、歌舞伎でも観ていました。2016年4月の明治座花形歌舞伎。勘九郎さんの太郎冠者でした。

今回の南座は、太郎冠者が万商人に騙されて傘を売りつけられる場面はカットされた短縮版で、傘を持った太郎冠者が酔っ払ってご機嫌で帰ってくるところから始まります。

最初に登場する米吉くん女大名、赤い中振袖が華やいでお人形のような美しさ。もう、見ているだけでうれしくなります。声もしっかり。
そして花道に登場する右近くん太郎冠者。酔っ払って頬をピンクに染めたお化粧がかわいい。プハ~ッと息を吐いたりして、ちょっと自分が飲んだくれた時のことを思い出しちゃった(^^ゞ

太郎冠者が傘を買って来たことを知ってぶんすかする女大名が超キュート💛
肩衣の絵を自分で描いたとさらりとアピールしたり、唐傘の上で毬を転がしたり、太郎冠者もちゃめっ気たっぷり。体幹しっかりしつつ手足が軽くしなやかに動く右近の踊りはいつも見惚れます。
明るくおかしみもありながら品を失わない若い2人の舞踊、とても楽しかったです。

この演目に役者としてご出演の右近くん、次の「吉田屋」には清元の栄寿太夫として登場です。


続きがあります
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2020年12月27日

當る丑歳 「吉例顔見世興行」 東西合同大歌舞伎 第二部


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一部二部三部の間にたっぷり時間がある今年の顔見世。
第一部終演後は、たまたま観劇日が重なった友人とのんびりランチして再び南座に戻って第二部。

京の年中行事 當る丑歳 「吉例顔見世興行」 東西合同大歌舞伎 第二部 
2020年12月6日(日) 2:30pm 京都南座 3階1列上手


第一 寿二人猩々
出演: 中村隼人  片岡千之助  中村亀鶴
(上演時間: 20分)



猩々(隼人、千之助)は中国の伝説の酒好きの霊獣で、毎晩酒売り(亀鶴)のもとを訪ね、酒を飲み、踊って楽しく過ごします。そして、いくら汲んでも尽きない酒瓶を酒売りに与えて祝福するという明るく楽しい舞踊です。

体に赤い毛が生えた想像上の霊獣ということで、赤頭をつけて唐織の衣装をつけた猩々は二人とも見目麗しい。
踊りに固さはあるものの、教えられた通りきちんと真面目に踊っている感じが何とも初々しく、ラストの花道の舞は勢いもあって、そのまま走り去っていくあたり、若いパワーが溢れていました。
愛嬌や色気という点ではさすがに亀鶴さんに一日の長あり。
踊りにも台詞にも緩急あって、三人の中で存在感際立っていました。

  
続きがあります
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當る丑歳 「吉例顔見世興行」 東西合同大歌舞伎 第一部


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10月の松竹座が中止になった時、「今年は顔見世もできないんだろうな」と覚悟していました。
だから、2週間という短い期間で客席も半数以下とはいえ、「顔見世をやる」と発表があった時はとてもうれしかったです。
先日の「紀尾井町家話」でも幸四郎さんが「顔見世の開催は危ぶまれていた」といったことをおっしゃっていて、本当にギリギリの状況だったんだなと改めて思った次第です。

南座の前に立って、例年より数は少ないですが、今年もまねきが上がっているのを観て、何とも言えない気持ちになりました。


京の年中行事 當る丑歳 「吉例顔見世興行」 東西合同大歌舞伎 第一部 
2020年12月6日(日) 10:30am 京都南座 3階6列センター


第一 操り三番叟
出演: 三番叟 中村鷹之資  後見 澤村國矢
(上演時間: 20分)



竹馬もない今年の顔見世。
三部制で、各部とも「舞踊+お芝居」の組み合わせです。

幕開きはおめでたい三番叟から。
数ある三番叟ものの中でも「操り三番叟」は好きな演目の一つ。
鷹之資くんの三番叟に、後見は國矢さんと、歌舞伎座の本興行ではなかなか観られない新鮮な配役です。

踊り巧者の鷹之資くん、できるだろうとは思っていましたが、若々しい躍動かと安定感があって、きちんと振りを押えた楷書の踊り。観ていて気持ちのよい三番叟でした。

最初に箱から出された時、思ったほどぺしゃんこになっていなかったり、糸に操られてびょ~んと跳ねるバネのような動などやや
“人形み“に欠ける節はあるものの、広い舞台に一人で躍動して、見事に踊り切っていました。
鷹之資くんってお若いのに似合わず、そのどっしりした体型のせいか大きなお顔のためか(ほめています)、どこか老成した風情も醸し出していて、三下がりのしっとりとする雰囲気もよく出ていておもしろいなと思いました。
出過ぎることなく、でもやるべきことはきっちりと、の後見の國矢さんとの息もぴったり。

三番叟の振る鈴の音が大好きなワタクシ。
五穀豊穣や天下泰平を願うご祝儀の舞で今年1年の憂さをすっかり祓い浄められた気分です。


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