2018年12月15日

♪ぼ~くの~ 叫びを~ きいて~くれ~ 雪組 「ファントム」


phantom2018.jpgガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」をもとに1991年に初演されたミュージカル。
宝塚では、2004年 宙組 和央ようか・花 まりコンビで初演されてい以来再演を重ね、今回が4回目の上演ですが、私は2011年花組が初見でした。
その前に大沢たかおさん主演版も観ていたのですが、どちらもさほど好きという訳ではありませんでした。
でも今回・・・。


宝塚歌劇雪組公演
三井住友VISAカード ミュージカル
「ファントム」
原作: Gaston Leroux
脚本: Arthur Kopit
作詞・作曲: Maury Yeston
潤色・演出: 中村一徳  
翻訳: 青鹿宏二
出演: 望海風斗  真彩希帆  彩風咲奈  彩凪翔  朝美絢  舞咲りん  
奏乃はると  煌羽レオ  永久輝せあ  綾凰華  彩みちる  縣千 ほか

2018年11月15日(木) 11:00am 宝塚大劇場 2階3列上手/
11月22日(木) 1:00pm 1階22列センター/
12月13日(木) 11:00am 1階10列下手
(上演時間: 3時間/休憩30分)



新演出ということで、冒頭の映像からとても凝っていました。
オーバーチュアに乗ってパリの街が昼から夜への更けていき、月が出て、その月がファントムの仮面の形になって、無数のろうそくの灯りと水が幻想的なオペラ座の地下へ導かれて・・・とまるで映像作品のよう。

一点、映像という点では、あの大きなシャンデリアが落ちてくるシーンで周りにナナメの雷光みたいなのがたくさん映し出されるのはちょっとうるさかったな。せっかくのシャンデリア落下がかえって際立たない感じで残念でした。


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いや~、歌がうまいってすばらしいな、とこれほど感じた公演はありません。
望海風斗&真彩希帆という「歌うまコンビ」でこの作品をやると発表された時からみんなが期待していた通り、いやそれ以上のものを見せてくれました。
1回目観た直後からいろんな曲が脳内リフレインして、「あれ?この曲なんだったかな?」と考えるとすべて「ファントム」の曲だったという、私にしては珍しい感覚でした。このミュージカルの楽曲の美しさすばらしさも今回初めてちゃんと感じた気がします。


真彩希帆さんがインタビューで、「ミュージカルは歌とセリフが分かれていて好きじゃないという声も聞きますが、その差を埋めるにはどうするか。セリフのように歌う、声の統一性ですよね」と語っていて、この「セリフのように歌う、声の統一性」という言葉にとても共感。真彩さんは歌唱力が際立っているけれど、歌うまさんにありがちな、美声でうまい歌を聴かせる、というのではなくて、クリスティーヌの感情を通して歌っているので台詞と歌の乖離がない。それはもちろん望海風斗さんのエリックも同様で、この二人で「ファントム」が観られて本当によかったです。
真彩さん、ビストロの場面もすばらしかったな。

最初に小さな声で♪メロディ メロディ と歌う時とエリックの声が聞こえた後の歌いあげとの落差に、キャリエールやまわりの団員たちと同じ気持ちで驚いて賞賛の拍手を贈りました。


過去2回観た中でこの物語をあまり好きと思えなかった最大の原因は、「あなたの顔を見せて」と自ら言っておきながら、エリックが仮面をはずした途端、叫び声をあげて逃げ去るクリスティーヌにありました。「何なんそれ?あんたが見せてってゆーたんやんっ(怒)!」という感じ。
今回、その「何なん」感が全く払拭された訳ではありませんが、驚いて逃げてしまった後のクリスティーヌの後悔やエリックへの謝罪の意がかなり感じられて、咄嗟に逃げてしまった気持ちに少し寄り添えた気がしました。
真彩さんがおっしゃっていたように、「クリスティーヌはエリックの顔に恐怖したのではなく、彼の背負ってきたものを知り、それを母親のように背負ってあげられないことに恐怖した」とまでは思い至らなかったけれど。

この「顔を見せて」の場面
♪決して恐れないで真実から 私の愛に振り向いて 今 素顔を見せて さあ
とクリスティーヌが天使の声で歌いあげる My True Love もすばらしいのですが、これを聴いている時の望海エリックの繊細な演技に心打たれました。

最初に「顔を見せて」と言われた時、ピクッとして「それはダメだ」と彼女から離れるエリック。
そして、クリスティーヌが歌う「My true Love」を聴いているうちに、「この顔を受け容れられるはずがない・・いや、もしかして彼女なら受け容れてくれるだろうか」と否定と不安と戸惑い、そして希望が入り混じった感情が交錯しているのを全身で表現していて、手で押さえた仮面の下の表情が見えるよう。
クリスティーヌが「さあ さあ」と最後に歌いあげると泣きじゃくりながら膝から崩れ落ちるエリック。
そして意を決したように彼女の前に立って仮面を外すのでした。

クリスティーヌが逃げ去ってしまった後、自分自身を責めるようにオロオロして泣くエリック。
握った途端はがれ落ちた緑のカーテンを抱きしめて慟哭するエリック。
それは彼がクリスティーヌを喜ばせようとつくった森が崩れ去ったことを表していて、その切なさと厳しさにもう泣くしかない。
この後、「彼女は悪くない」「僕の方こそ彼女を怖がらせてしまって申し訳なかった」とキャリエールに告げるエリックにまた涙。
「彼女は僕を愛してると思ったんだ」(これ、自分がクリスティーヌに愛されていると思ったということではなくて、クリスティーヌが自分のことを愛していると錯覚していたと彼女をかばっているのですね。
そして、「一瞬でも愛してもらえたなら。それも悪くないな。そんな一瞬なら生きるに値する」とエリック。

ここからのキャリエールとの場面は3回観て3回ともほぼ号泣。
「お前も見たいんだろ?僕の顔」というエリックに「もう見たことがあるよ」と、この上なく慈愛に満ちた声で応えるキャリエール。
まるで子どもの頃に戻ったように、少年のような口調で甘えんぼの表情で話すエリック。
ここからの You Are My Own と、最後の抱擁はほんと、何度観ても何度聴いても涙ナミダ。
「エリック お前は愛おしい息子だ」と名乗った後に、息子に最初にしてやれることが銃で撃つことだなんて。

彩風咲奈さんのキャリエールもとてもよかったです。
いつもの溌剌としたカッコよさを封印して渋い大人の男。エリックを包み込むような温かさを見せて。歌もすごくがんばっていてYou Are My Ownも望海さんに歌い負けていませんでした。
そして、支配人を首になるショボくれたおやじでも隠せない脚の長さハンパない。

シャンドン伯爵と新支配人 アラン・ショレは彩凪翔さんと朝美絢さんの役替り。
最初に観た日のショレが朝美絢さんがいつものクールビューティとは全く別人でインパクト大。シャンドン伯爵では美貌も冴え渡っていました。
彩凪翔さんもどちらも悪くなかったですが、朝美さんに気合負けしてた感じ?
彩凪さんはフィナーレ銀橋の歌手でしたが、あの歌ももうひとがんばりしていただきたい。

雪組のピカピカのホープ 永久輝せあさんは団員のセルジョと若き日のキャリエール
セルジョで純白の軍服を着て「カルメン」をセンターで踊る時はもちろん目立っているのですが、たとえばビストロなどその他大勢にまぎれている場面でもひとこちゃんだけスポット当たっているみたいにすごく目につきます。これがスターの華というやつかしら。
同じ団員の煌羽レオさん、綾凰華も目立っていました。

カルロッタは舞咲りんさん。
雪組で「ファントム」と発表された時からカルロッタは舞咲さんだと言われていたキャスティングです。
歌うま娘役さんの役どころで、実際舞咲さんも歌うまなのですが、それを封印して、エリックが「あの声を毎日聴くなんて耐えられない」というふうにキーキーした声で歌っていてすばらしかったです。ちょっとコメディに寄り過ぎかなとも思いましたがエキセントリックな性格もよく出ていました。

今回、従者が6人のダンサーチームになったのも演出の変更点。
沙月愛奈・笙乃茅桜・鳳華はるな・諏訪さき・眞ノ宮るい・縣千という男役4人娘役2人という構成。
皆さんダンス上手くて、時にはエリックの感情を表現するコロスのような役割でもあり、以前に比べてかなりクローズアップされた印象でした。


ラスト。
エリックの仮面をはずし、その素顔にそっとくちづけするクリスティーヌ。
多分それは、クリスティーヌが最初にエリックの顔を見た時、「背負いきれない」と感じた彼の人生も受け容れてくちづけしたのだと思います。
だからエリックは、安堵と幸せな表情を浮かべて息絶えたのでしょう。
このエリックの幸福感があるので、切なく辛い物語なのにそれほど後味が悪くないのも今回発見でした。

この公演で退団する陽向春輝さん。
99期と若く期待されている中での退団はいかにも早すぎるという印象ですが、フィナーレでは梨花ますみさんと2人の銀橋渡りもあって、ひなたファンの友人はとても喜んでいました。


それにしても、あれだけ美声響かせて千秋楽までピクリともしない望海さん真彩さんのノドすばらしい。
望海さん、クリスティーヌのお姫様抱っことデュエダンのリフトを公演途中でやめていた期間もあったようですが、前楽に観た時はどちらもちゃんとやっていました。東京公演は1月から2月の寒い時期。お二人も、雪組の皆さんもお体に気をつけてがんばっていただきたいです。


パレード:
エトワール 愛すみれ
綾凰華・縣千
永久輝せあ
朝美絢
彩凪翔
彩風咲奈
真彩希帆
望海風斗
(かなりシンプルだわね)



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公演カクテル飲まなかった代わりに公演デザート2種コンプリート(友人とシェア)
「仮面を纏ったチョコレートムース」と「メロディ」です。

そして、私にしては珍しく公演グッズも買いました。
バッグチャーム
ブルーとダークグレーのファーがおしゃれだし、ファントムの仮面のチャームとグローブホルダーもついているというスグレモノ。
公演の初期の頃に買ったのですがすぐに完売してもう買えないらしい。




すばらしい公演でしたがチケ難ぶりも凄まじかったな のごくらく地獄度 (total 1991 vs 1993 )



posted by スキップ at 23:10| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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