2018年12月09日

スマホは本に代われない・・・と信じたい 「華氏451度」


451.jpgレイ・ブラッドベリが1953年に発表した「華氏451度」。
ジョージ・オーウェルの「1984年」(1949年刊行)とともにディストピア小説の両輪とも言われる作品ですが、今年、その2本が相次いで舞台化されたのは何とも意味ある符号のように思えます。
つくり手である演劇人の危機感の表れ、現代社会への警鐘なのでしょうか。


「華氏451度」
原作 :レイ・ブラッドベリ
上演台本: 長塚圭史 
演出: 白井晃 
音楽: 種子田郷
舞台美術: 木津潤平  照明: 大石真一郎
映像:宮永亮、栗山聡之
出演: 吉沢悠  美波  堀部圭亮  粟野史浩  
土井ケイト  草村礼子  吹越満

2018年11月4日(日) 12:00pm 兵庫県立芸術文化センター 
阪急中ホール 1階D列(最前列)センター
(上演時間: 2時間)



「華氏451度」とは紙(書物)が燃える温度(摂氏だと233度)。
物語の舞台は徹底した思想管理体制のもと、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会で書物を読むことも所持することも禁じられた近未。
本を所持する人を摘発し、書物を燃やす「ファイアマン」として模範的なモンターグ(吉沢悠)は、大人びた少女クラリス(美波)との交流や、蔵書を摘発しに行った家の老女(草村礼子)との出会いを通じて、これまでの生き方に疑問を感じ始めます。モンターグは仕事の現場から隠れて持ち出した数々の本を読み始め、社会への疑問が高まっていきますが、妻ミルドレット(美波2役)から告発され、上司ベイティー隊長(吹越満)から追及を受けて追われる身となります・・・。


舞台三方を取り囲むように、天井までぎっしりと本で埋め尽くされた巨大な書棚にまず圧倒されます。
ここにプロジェクションマッピングで本の背表紙やTVの液晶画面などが映し出されます。
ファイアマンたちは書棚から無造作に本を抜き出し、火炎放射機で燃やします。床に散乱に積もっていく白い書物・・・。
ラストのすべてを包み込むような大きな満月。神秘的な鹿の姿も印象的でした。
舞台美術の木津潤平さんは存じ上げない方だと思って調べたら、建築家の方なのだとか。


モンターグの家には液晶モニターが数台あり、そこに映し出される「友達」の言うことを聞くのがコミュニケーションであり友情とされていて、そのことに何の疑問も持たないミルドレット。
「情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会」-ブラッドベリの原作は、書物を焼却してしまうことによる思考管理体制より、大衆自身が書物を捨て、テレビやラジオへと、安易に受け入れやすく理解しやすい方へ流れていく社会への警鐘が主題のよう(奇しくもこの作品が発表された1953年は日本でテレビ放送がスタートした年でもあります)。

それはそのまま、現代社会の、私たちのネットやスマホ依存に繋がっています。
そしてそれは、誰から強制された訳でもなく、私たち自身が選んでいること。
国家や政府から本を読むことが禁じられることはないけれど、私たち自身が読書への扉を閉じてしまっているのではないのか・・・そんなブラッドベリのメッセージが聞こえてくるよう。


モンターグの吉沢悠さん。
自分の仕事に疑問など持つことなく暮らしていた普通の人がひたむきに本当の生き方を取り戻そうとする姿を好演。
実はですね。舞台観るまで吉沢悠さんを吉沢亮くんだと思い込んでおりまして・・・大変失礼いたしました。
吉沢悠さん、昔テレビドラマでよくお見かけした印象ありますが、このところご無沙汰じゃない?舞台主演するような人だったっけ?(←さらに失礼)と調べたら、
「遠い夏のゴッホ」(2013年)に出演されていました。

ミルドレットとクラリスという対照的な二役を演じ分け、ラストにはキュートな鹿にもなる美波さん。
蔵書とともに焼かれることを毅然と選ぶ老女の草村礼子さんの品よく凛とした雰囲気も素敵でした。

そして吹越満さん。
前半でモンターグの変心をいち早く見抜く上司、後半ではモンターグに進むべき道を示す人物と、モンターグにとって影と光のような二人の人物を鮮やかに演じ分け。難解な長台詞多かったけれどさすがの滑舌と説得力。やっぱり吹越さんの声好きだ~。


カーテンコール3回目。
吹越さんが吉沢悠さんに何やらボソボソつぶやいてると思ったら、「今日は大千穐楽で白井さんも別の稽古場から駆けつけてくれています」と吉沢さんに紹介されて、演出の白井晃さん 一番後ろのPA席から登場されました。




そして「1984」の感想まだ書いていないことを思い出す夜 の地獄度 (total 1989 vs 1990 )



posted by スキップ at 23:04| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください