2018年10月14日

襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話


pontochokoraiyawa.jpgいつも歌舞伎座ギャラリーで開催されている歌舞伎夜話。
行きたいなと思いながらも平日の夜に東京なんて無理じゃんと残念な思いをしていました。

その 


特別版が 


京都で



そりゃ行くってものです。

チケット発売は9月20日。
遠征中でホテルをレイトチェックアウトしてまで(笑)張り切って取りました。


襲名道中膝栗毛 先斗町高麗夜話
出演: 松本幸四郎  尾上菊之丞
進行: 戸部和久
2018年10月11日(木) 6:30-8:20PM 先斗町歌舞練場 1階い列(1列目)上手


歌舞伎美人のレポはこちら


幕が上がると緋毛氈が敷かれた床机が二台。
上手に菊之丞さん、下手に戸部さんが着席。
戸部さんから呼び込まれて、幸四郎さんは花道から登場です。
幸四郎さん、菊之丞さんとも素敵な和装でした。

幸四郎さんと菊之丞さんのなれそめ(?)から始まって、お二人でやってこられた舞踊、魑魅魍魎的や麻布十番、不二才などの傾奇おどり、趣向の華、ラスベガス公演、氷艶などを振り返るお話から、お二人の鼓演奏、最後に十一月南座顔見世興行の演目について、という構成でした。普段あまり聞けない公演のお話や裏話が楽しく、幸四郎さんのリラックスした笑顔が印象的でした。



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いかにもカラーコピーしました、な手作り感満載のパンフ(一応、門外不出だとか)
こちらに掲載された写真がパネルになって舞台に登場しました。


■ 出会いは鼓

お囃子のお師匠がご一緒だった二人。
菊之丞さんのご自宅への出稽古に幸四郎さんもいらしていたと言われて 「???」 と全く記憶にない幸四郎さん。
幸: 私は去年まで染五郎と名乗っていた者ですが・・・?
菊: ええ。だいぶ痩せていらっしゃったけど。

幸四郎さんはとにかく「勧進帳」の鼓が大好きで「鼓の稽古はムキになって通っていた」そうです。
「おさらい会荒らしみたいに出てましたよね」と菊之丞さん。


■ 傾奇おどり 

真中に置かれた写真パネルを見ながら振り返るのですが、最初の写真は「三社祭」
菊之丞さん19歳。幸四郎さんは3つ上なので22歳です。何ともいえないコミカルな雰囲気の二人のポーズに客席から笑いが。

二人で一緒に何かやりたいと傾奇おどりが誕生して、「魑魅魍魎的」 「麻布十番ん」 「不二才」へと。
幸四郎さんが曲を考え、振りもつけるそうですが、自分では体を動かさずに振りを考えて、「こんなふうにできればいいな、僕はできないけど」と菊之丞さんに渡すそうです。

「見たことないからつくる、がつくる時の原動力」という幸四郎さん。
「でも伝えることをしないと伝わらない。気持ちだけじゃ伝わらないことを学んだ」と。
菊之丞さんは、 「幸四郎さんが何言ってるかわからないとみんな僕に聞いてくるんですよ。だけど僕もわからない」と菊之丞さん。
「幸四郎さんの意図を推察して、当時から忖度していました」と言うと、幸四郎さんも「そう、忖度の走り」と息もぴったり(笑)。

松竹座「麻布十番ん」の上演日が菊之丞さんの誕生日で・・と幸四郎さんがおっしゃると、菊之丞さんが、ドルガバのパンツ
とシャツもらいましたと仲よしエピソードも織り込みつつ。

■ 趣向の華

幸四郎さんは第2回目から参加。
「主宰というイメージでしたが、意外ですね」と戸部さん。

「趣向の華に出ていたのと出ていないとでは20年後に差が出る」と幸四郎さん。
「趣向の華を観ていたのと観ていないのとでは、20年後に差が出る」とも。
あ~、よかった、観ていて

「趣向の華」 鷹之資くんと金太郎くんの連獅子
前年、愛ちゃん(富十郎さんのお嬢さんの愛子ちゃん)が出て天王寺屋のおじさまが観に来てくださって、大ちゃん(鷹之資くん)連獅子やったら喜ぶよ、と次の年にやろうと企画したのに亡くなられて・・・でも大ちゃんは出ると言ってくれて、二人が踊る後ろで僕たち3人(藤間勘十郎さん、幸四郎さん、菊之丞さん)泣きながら演奏して、終わってから「おじさまもきっと観に来てくれたよね。僕たちいいことしたよね」と自画自賛したあったかエピソードに泣き笑いです。

今の(歌舞伎界の)20代はひとかたまりで何かできるはず。「ヒジョーに人数多いのにヒジョーにやらない」と不本意そうな幸四郎さん。
「みんな個々に勉強会とか自主公演とかがんばってますから」とフォローする菊之丞さん。

終わりの日は残るけど始まりはあまり印象に残らない。亡くなった人も命日は覚えているけど誕生日となると・・・という話から、染五郎くんが初代鴈治郎さんと誕生日が同じで、藤十郎さんにそのことをお話したら「そら知らんかったわ」とおっしゃったとか(若干口まねw)。


■ ラスベガスから氷艶へ
ラスベガス、氷艶とも初めてのことだらけで大変だったそうですが、ラスベガスで一番の思い出は「下見に行った時、帰りの飛行機に乗り遅れたこと」
「あんなに怒られたのは小学校以来」という菊之助さん。空港の係員の人に7回もアナウンスしたと言われ、「Sit down!!」と言われたらしい。(これ、話していいのかな?おっしゃっていましたが)

「『麻布十番ん』」のカーテンコールで「ラスベガスに行きます!」と言ったことが10何年経って現実になりました」と幸四郎さん。

「氷艶」の氷上での六方はやるかやらないか、お稽古最後の日まで悩んでいたそうです。
「現場に行ってもがき苦しみました」と。
「高橋さんも荒川さんもスケーターの方は皆さんストイックで、振りをつけると何時間も鏡の前で振りをやっていらした」そうです。


■ 鼓 「松の翁」

お二人で鼓を演奏されることは告知されていましたが、戸部さんが、「お二人が知り合われたきっかけでもあるし、折角の機会なので鼓を・・・」とおっしゃると、「え!そんな急に言われても・・」「え〜、いや南座の襲名が控えてるから、順序ってものが・・・(モゴモゴニヤニヤ」」
菊之丞さん「このくだり必要あります?(笑)」という小芝居があった後、一旦幕が下りて準備が整ってから鼓演奏の運び。

長唄の「松の翁」を幸四郎さんがタテ鼓、菊之丞さんがワキ鼓で長唄と地方さんは先斗町の芸妓さん。山台に乗っての演奏でした。
お二人はそれまで着ていらした羽織を脱がれていました。
幸四郎さんの鼓も、菊之丞さんとご一緒に演奏されるのを聴かせていただくのも初めてではありませんが、先斗町歌舞練場で、後ろに芸妓さんを従えて緋毛氈の山台に乗って、というのは独特の雰囲気で、見惚れ聴きほれました。
まっすぐ前を見据えて鼓を打つ幸四郎さんのカッコいいこと色っぽいこと。

演奏終了後、「自己採点は?」という戸部さんの質問に、「65点くらいですかね」と菊之丞さん。
幸四郎さんは「64点」 (後だしじゃんけんか!)
でも、「それはともかく、楽しい!」と満面の笑顔でした。


■ 勧進帳

「明らかに演奏終わってちょっとすっきりした感じですね?」と戸部さんにツッコまれたお二人。
話題は十一月南座顔見世興行 襲名披露演目へ。

弁慶をやるために45年がんばってきたとおっしゃる幸四郎さん。
4年前、幸四郎さんが初めて弁慶を勤められた時、菊之丞さんは何が何でも初演の初日を観に行くと決めていらしたそうです(これ、私も同じです。絶対初日に行く!と決めていました)。その日の空気は襲名初日とも違う緊張感が客席に溢れていたとおっしゃっていましたが、ほんと、その通りだったな。そして終わった後は涙流す人続出で・・・。
「待ち望んだ時がやって来た。見る前から身震いしたのを覚えています」と菊之丞さん
「僕は会ってないんですよ」と幸四郎さん
「ええ、会わずに帰りました」と菊之丞さん
会わなくても心が通じ合う、目に見えない二人の強い絆を垣間見せていただいた気がするお言葉でした。

この初役の時、鳥屋で遠慮して隅に控えていたところ、義経役の吉右衛門さんが鳥屋の真ん中、拵えができる主役の場所に座るようにと、「これは弁慶の芝居なんだから、そんなとこにいちゃだめだ」と諭されたというお話も以前聴いたことがありますが、何度聴いても胸が熱くなります。
「それで舞台に出たら父の富樫がいて、太刀持で息子がいて、叔父がいて・・・いやもう罰ゲームですよね。こんな幸せなことはないっていう罰ゲーム」という罰ゲーム発言も何度聴いても楽しい。

十一月南座の「勧進帳」は親子三代の共演。これは史上初めてのこと。
「一月の義経はお客様にお見せできるものではなかったと染五郎さんがおっしゃっていましたが・・」と戸部さんが言うと、
「そういうことは言うものじゃないです。舞台の結果でお見せすべきこと」とピシリとおっしゃっていて、芸の師としての厳しさが伺えた気がしました。

南座では4回目にして初めて滝流しつきで弁慶を演じられる幸四郎さん。
「父にお願いしました。今教わっておかないとできないし、教えられないから」
今年一月歌舞伎座から七月松竹座へと驚くべき変貌を遂げた幸四郎さんの弁慶。
十一月 南座の千穐楽がちょうど100回目の弁慶となるそうです。
「教わったことをすべて出し切ってできるようにやりたい」という弁慶。楽しみです。


■ 連獅子

幸四郎さんは12歳の時に初めて仔獅子をやったので、染五郎くんも同じ年くらいにできるような身体にしたかったそうです。
染五郎くんも連獅子には特別な思いがあるのか、稽古の時「目の色が違う」とおっしゃっていました。

「連獅子はて親子で踊る云々ではなく、踊り比べだと思っています」
「毛振りも最初から最後まで全く同じに振るものと考えています。速さが変わらないということではなく」
「連獅子を踊る時は精神状態が不安定。負けられないと思う」
次々と語られる幸四郎さんからも「連獅子」への思い入れがたっぷり。この親にしてこの子あり、ということでしょうか。

「菊之丞さんの毛振りは、曲に合わせたリズムで振り、振る回数も決まっています。細かいんですよ、振付が」と幸四郎さん。
「『連獅子』を親子でやるのは最高でしょうね」と菊之丞さん。
「こんなにうれしいことはないです。でもそれを役に乗せるものではないと思っています。ずっとそれをを言っているのは自分に言い聞かせているところもあります」と幸四郎さん。

十一月南座の連獅子は幸四郎さんが初めて連獅子を踊った時 白鸚さんが着た衣装を幸四郎さんが、幸四郎さんが着た衣装を染五郎くんが着るそうです。初演以来保存されていたものだとか。いつもの連獅子の衣装とは少し色合いが違うんですけどね」と幸四郎さん

「お二人で連獅子はいかがですか?」と無茶ぶりの戸部さん。
「二人でですか?」と声を合わせて笑う幸四郎さんと菊之丞さん。
「それなら勢獅子はどうですか。以前できなかったので」と菊之丞さん。
「三社祭」の翌年、「勢獅子」の予定だったのが、菊之丞さんが体調を崩して入院されたため実現しなかったのだそうです。


■ 襲名のその先へ

今後どんなことをやるかといろいろ構想(妄想?)があるらしい幸四郎さん。
「日常生活の一部でないと文化とは言えない。演劇は好きな人中でまわっている。日常生活の一部というとテレビだと思うんです。だから映像との何かができないかな、と」
「他にもイヤホンガイドとの連動とか、幕間に歌舞伎座ギャラリーで話聴かないと次の幕がわからないとか」

イヤホンガイドの連動については以前国立劇場で「四谷怪談」やった時にイヤホンガイドにノイズ入れよう!と盛り上がったことがあるそうです。実現寸前でNGとなってしまって、提灯がいくつか点いたり消えたりする演出になった、とちょっぴり残念そうな幸四郎さんでした。

襲名披露興行後について、「準備してるものもいくつかある」と幸四郎さん。
さて、何が飛び出してくるのでしょう。楽しみだー。


■ 南座

最後は南座のゆるキャラ みなみーなが登場。
「ぐでたまってヤツ?」と幸四郎さん。
「みなみーなは今回の改修工事にあたって発掘されたんですよ。ひょっとしたら400年前からこの姿なのかも」と。
その後には、「いやこれちょっとつくり込み過ぎなんですよ。つくり込み過ぎてぬいぐるみにできないんだって」

南座で歌舞伎に出演されるのは何と17年ぶりという幸四郎さん。
「京都に来るたびに南座が改修中で明かりが落ちてるのがくやしくて、毎回写真撮ってました」と。
先斗町歌舞練場の舞台に立ったこともうれしかったご様子で、「歌舞練場の舞台に立たせてもらって」と何度かおっしゃっていました。



午後8時終了予定でしたが、20分ほどオーバーして終了。
菊之丞さんのツッコミが絶妙なこともあってか、終始ご機嫌で口も滑らかだった幸四郎さん。
襲名興行以外のお話もたくさん聞かせていただいて、幸四郎さんが本当に歌舞伎が好きなんだということも改めて実感して、とても楽しい先斗町夜話でした。



そして3日間かけて書いたレポがとてつもなく長い のごくらく地獄度 (total 1970 vs 1975 )


posted by スキップ at 20:36| Comment(2) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもにもまして素晴らしいレポありがとうございます‼ やっぱり幸四郎さんとなるとチカラと愛情が何割増しかになるみたい。
ほんと多才でいらして、夢を夢で終わらせない行動力には感服します。
私もskipさまのこれまでのレビューに、ぜひ弁慶を見なくては!の思いが募り、南座(夜の部のみ)に行くことにしました。大阪に泊まりますが、でも平日なんですよ。またいずれ、心置きなく美味しいもの&舞台の話をしたいです。それまで元気に目いっばい楽しみましょうね。
Posted by きびだんご at 2018年10月25日 11:08
♪きびだんごさま

長々ととりとめのないレポをお読みいただきありがとうございます。

なんですかねー、幸四郎さんのお話だと記憶にとどめておきたい意識
が働くのか、メモ取らなくても次々よみがえってきて(^^;

もちろん他の役者さんのご贔屓の方も同じお気持ちだと思いますが、
幸四郎さんと同じ時代に生きて、幸四郎さんが「しでかす」ことの
目撃者となれる幸せを感じています。


南座いらっしゃるのですね。
「勧進帳」きびだんごさまのご感想をうかがうのが楽しみです。

平日でも大丈夫なのですが、顔見世は終演時間も遅いですものね。
また機会を改めてぜひご一緒させてくださいませ。
Posted by スキップ at 2018年10月26日 10:11
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